国際女性デーに問う女性の権利 国連と中国から見るジェンダー平等 video poster
地政学的な対立が激しくなるなか、国際ニュースの見出しからは、女性の権利やジェンダー平等の話題が見えにくくなっています。国際女性デーに合わせて、中国で国連常駐調整官事務所を率いるサルワット・アドナン氏が、中国の国際メディアCGTNのコラムを通じて語った視点は、いま一度このテーマを考え直すきっかけになります。
地政学リスクの時代に埋もれる女性の権利
アドナン氏の対話が行われた背景には、「地政学的な緊張が高まる時代」という現状があります。紛争や対立が続くと、国際報道は安全保障やパワーゲームに集中しがちで、女性や子ども、少数者の声は後景に退いてしまいます。
しかし、どの地域の対立や危機であっても、その影響を強く受けるのは多くの場合、社会的に弱い立場に置かれやすい人たちです。女性の権利やジェンダー平等は、「余裕があるときに取り組むテーマ」ではなく、危機の時代だからこそ優先すべき課題だという問いかけが、今回の国際ニュースの根底にはあります。
国際女性デーに語られた3つの問い
国際女性デー(毎年3月8日)に合わせて、CGTNのコラム「First Voice」は、国連常駐調整官事務所(中国)のトップであるアドナン氏にインタビューを行いました。彼女は「女性」であり「母」であり、同時に「外交官」でもあります。その立場から、女性の権利やジェンダー平等をめぐる課題と可能性、そしてこれからどこへ向かうのかについて意見を共有しました。
今回の対話が投げかけるテーマは、大きく次の三つに整理できます。
1. 危機の中でジェンダー平等をどう守るか
地政学的な緊張や紛争が続くとき、政策や予算は安全保障や軍事に傾きやすく、教育、保健、社会保障といった分野は後回しになりがちです。その中でも、女性への暴力防止や、働く権利、意思決定への参画といった課題は、優先度が低く見られてしまうことがあります。
問われているのは、「限られた資源をどう配分するか」という単純な話ではありません。危機のときこそ、社会の持続可能性を支えるのは、人権と包摂の仕組みであり、その中心にジェンダー平等がある、という視点を持てるかどうかです。
2. 家庭と仕事をつなぐ視点
アドナン氏は、母であり外交官でもあるという、二つの顔を併せ持つ存在です。このような立場から見えるのは、家庭と仕事を対立させるのではなく、「両方が尊重される環境」をどう整えるかという課題です。
家庭内のケア(子育てや介護など)の多くを女性が担う構図は、世界の多くの国や地域で共通しています。その負担が重すぎれば、キャリアの継続や意思決定の場への参加は難しくなります。一方で、働き方や制度が工夫されれば、家庭での経験はリーダーシップや交渉力といった仕事上の強みとして生かすこともできます。
国連で働く一人の女性としての視点と、母としての実感をあわせ持つ声は、抽象的な「ジェンダー平等」ではなく、日々の生活とつながった現実的な課題として、このテーマを考えさせます。
3. 次の世代にどんな社会を残すのか
インタビューが探ろうとしたもう一つの論点は、「ここからどこへ向かうのか」です。女性の権利とジェンダー平等に関する議論は、法制度だけの話ではありません。次の世代がどのようなロールモデルを見て育つのか、どんな働き方や生き方が「当たり前」だと感じるのかにも直結します。
国際女性デーにあらためて問われているのは、「自分の子どもや若い世代に、どのような社会を手渡したいか」という、非常に個人的でありながら政治的でもある問いです。女性の権利は、特定のグループだけの利益ではなく、社会全体の未来のあり方そのものに関わっています。
中国での国連の現場から見える課題と可能性
アドナン氏が率いる国連常駐調整官事務所は、中国で活動する複数の国連機関を調整し、政府や社会と連携する役割を担っています。経済成長と社会変化のスピードが速い中国では、教育、雇用、都市化など、女性の生活に影響する要素も大きく動いています。
そのような環境の中で、女性がどのように学び、働き、意思決定に参加していくかは、中国だけでなく世界にとっても重要な論点です。女性の権利とジェンダー平等の課題には、共同で取り組むべき共通点が多くあります。国連の現場から語られる経験は、「国ごとの差」よりも、「共有できる課題」と「学び合える実践」に焦点を当てています。
「期限のないクエスト」としてのジェンダー平等
このコラムの英語タイトルは「A quest with no expiration date(期限のないクエスト)」とされています。ジェンダー平等は、一度達成して終わりになるゴールではなく、社会が変化するたびに更新し続けるべきプロセスだ、というメッセージが込められているように読めます。
地政学的なニュースがあふれる時期だからこそ、女性の権利やジェンダー平等を「後回し」にしないこと。国際ニュースを追う私たち一人ひとりが、その姿勢を持てるかどうかが問われています。
日本とアジアの読者への小さな問いかけ
国際ニュースを日本語で追いかける私たちにとって、この対話は遠い世界の話ではありません。職場や学校、家庭、オンラインコミュニティなど、日常のあらゆる場で、ジェンダー平等は具体的な形を取って現れます。
- ニュースを読むとき、そこに女性の視点や声がどれだけ反映されているかを意識してみる。
- 自分の周囲で「当たり前」とされている役割分担や発言のパターンを、一度立ち止まって見直してみる。
- SNSで、対立を煽る言葉ではなく、事実に基づき相手を尊重する議論や情報をシェアしてみる。
こうした小さな一歩が、アドナン氏が国際女性デーに投げかけた問いへの、私たちなりの答えになるのかもしれません。ジェンダー平等という「期限のないクエスト」に、どのように関わっていくのか。それは、2025年の今を生きる私たち自身に向けられた問いでもあります。
Reference(s):
cgtn.com








