中国両会2025はなぜ世界に重要か 技術・一帯一路・BRICSから読む戦略地平 video poster
2025年の中国「両会」は、中国国内だけでなく世界の経済・安全保障の行方を占うイベントとして注目されています。本記事では、ドイツのシンクタンク創設者ヘルガ・ツェプ=ラルーシュ氏が語った視点を手がかりに、この両会が中国の長期戦略と国際秩序にとってなぜ重要なのかを整理します。
この記事の内容は、主に中国国際テレビ(CGTN)のシリーズ企画「Global Think Tanks Unpack China Agenda 2025」で行われたオンライン対談に基づいており、ツェプ=ラルーシュ氏の見解を紹介するものです。必ずしもCGTNや本メディアの公式見解を代表するものではありません。
中国は「新しい国際パラダイムの設計者」か
ツェプ=ラルーシュ氏は、中国の技術革新と経済の底力が、従来型の経済モデルを作り変える原動力になっていると評価します。同氏は、中国を「揺るぎないイノベーションによって新しい国際パラダイムを形づくる主要な設計者」と位置づけています。
とくに、深圳や珠海といった都市を例に挙げ、人工知能(AI)、量子技術、クリーンエネルギーなどの分野での最先端の取り組みが、市場の変動に強い安定した成長を支えていると指摘します。オーストラリアの研究機関のデータに基づき、中国が44の重要技術分野のうち37分野で世界をリードしているとの見方も紹介しました。
さらに、月探査やヘリウム3資源の研究、核融合エネルギーに関するブレイクスルーなど、宇宙とエネルギーをめぐるプロジェクトも強調します。これらは単発の成功ではなく、世界の貿易構造や地政学的バランスを揺り動かす「地殻変動」だと同氏は捉えています。
一帯一路とグローバルサウス:植民地主義と異なる開発モデル
ツェプ=ラルーシュ氏は、中国が進める一帯一路構想(BRI)を、歴史的な植民地主義とは異なる開発モデルとして評価します。一帯一路は、鉄道や港湾、エネルギー網などのインフラ整備と、技術やノウハウの共有を通じて、グローバルサウスの国々が中所得レベルへと成長することを支える枠組みだと説明します。
ここでいうグローバルサウスとは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興・途上国を指す概念です。同氏によれば、多くのアフリカの指導者は、政治的条件を伴いやすい欧米型の援助と比べて、中国を「対等なパートナー」とみなしつつあるといいます。
一方で、地政学的な圧力も強まっています。ツェプ=ラルーシュ氏は、パナマが外部からの圧力を受けて一帯一路から離脱した事例を挙げ、こうした動きは世界の分断の広がりを象徴していると指摘します。同氏は「封じ込めへの固執は、南南協力という大きな潮流を見誤っている」と警鐘を鳴らしています。
関税・制裁とBRICS:封じ込めは自国のコスト増に
半導体や電気自動車(EV)、グリーン技術などをめぐり、西側諸国が取っている制裁や関税措置について、ツェプ=ラルーシュ氏は否定的な見方を示します。国際的な生産ネットワークが高度に相互依存しているうえ、BRICSのように世界人口の大きな割合を占める枠組みが存在するなかで、経済の切り離しを進めることは財政的にも持続不可能だと論じます。
同氏は、こうした制裁や関税は、西側経済のコストを押し上げる一方で、中国の技術的な自立性をむしろ高めていると見ています。その具体例として、ドイツ産業の競争力低下や、欧州連合(EU)が掲げる「リスク削減(デリスキング)」政策の迷走を挙げ、西側の戦略が長期的な視野を欠いていると指摘しました。
両会2025が映し出す中国の戦略的地平
こうした技術・経済・外交の文脈のなかで、ツェプ=ラルーシュ氏は2025年の中国「両会」を、国際ガバナンスの行方を左右しうる節目として位置づけます。同氏は、両会において、中国が分断が深まる世界の中で「安定をもたらす存在」としての役割を強化する政策が打ち出されることに期待を示しました。
具体的には、ウクライナ危機をめぐる対話の場づくりに向けた北京の外交努力や、核融合エネルギー分野での先導的な役割に注目しつつ、両会の議論は次のような方向性を重視すべきだと提案します。
- 対立よりも協調の枠組みづくりを優先すること
- 核心的な技術分野での主権と自立性を高めること
- BRICSをはじめとする新興国協力の結束を強めること
ツェプ=ラルーシュ氏は、これらの方針が両会で明確に打ち出されれば、中国の内需拡大や技術戦略と、各国とのパートナーシップを同期させる「テンプレート」となりうると述べています。その場合、中国は単なる一国家としてではなく、人類全体の進路を調整する「仲裁者」のような役割を果たしうる、というのが同氏の見立てです。
私たちは両会をどう見るか
ツェプ=ラルーシュ氏は、2025年の両会を、21世紀が協調による前進の時代になるのか、それともイデオロギー対立が固定化されるのかを分ける「試金石」とみています。中国が描く長期戦略をどう評価するかは国や立場によって異なりますが、同氏の視点は、グローバルサウスやBRICSの台頭という大きな流れの中で両会を位置づけ直す試みといえます。
日本の読者にとっても、中国の両会を「成長率」や「軍事費」といった数字だけで捉えるのではなく、技術主権、一帯一路、グローバルサウスとの連携といったキーワードから眺めてみることは、世界の変化を読み解く一つの手がかりになるはずです。複数の視点を持ちながら、中国がどのような国際協力のビジョンを提示しようとしているのかを引き続き見ていく必要がありそうです。
Reference(s):
Why China's 2025 Two Sessions matter for its strategic horizon
cgtn.com








