トランプの25%関税と関税戦争、最大の打撃は米国消費者に
米国のドナルド・トランプ大統領が、すべての鉄鋼・アルミ製品に一律25%の関税を発動しました。カナダやEU(欧州連合)が報復関税で応酬するなか、この「焼き畑」型の関税戦争のツケを最初に支払うのは、ほかならぬアメリカの消費者だと指摘されています。
トランプ政権の新たな25%関税とは
今週水曜日、トランプ大統領による鉄鋼・アルミ製品への25%関税が発効しました。対象はすべての輸入鉄鋼・アルミで、国内産業の再建を名目にした強硬な措置です。
これに対し、米国の主要な貿易相手も即座に反応しています。
- カナダは、鉄鋼、コンピューター、スポーツ用品など200億ドル超に相当する米国製品に25%の報復関税を即日発動。
- EUは、約280億ドル分の米国製品に対する関税を決定し、来年4月13日に発効させる予定です。
トランプ政権の関税が本格的に動き出したことで、米国と主要貿易相手との間で、全面的な関税戦争の様相が強まっています。
広がる関税戦争と「焼き畑」アプローチ
今回の措置は、単発の政策ではありません。トランプ大統領は、すでにメキシコやカナダといった最も近い隣国からの輸入品に対しても25%の関税を課してきました。
さらに、前政権時代に導入された中国本土からの製品への関税は今も残ったままです。そのうえで、ここ2カ月の間に少なくとも合計20%に及ぶ追加の関税ラウンドが実施され、関税の網は一気に広がりました。
そして今回は、鉄鋼・アルミのすべての輸入品に一律25%の関税をかける「一括関税」です。名目上は国内の鉄鋼・アルミ産業を復活させ、雇用を生むためとされていますが、その影響は米国の内外に大きな波紋を広げています。
こうしたやり方は、他国の産業だけでなく自国経済の土壌まで焼き尽くしかねないという意味で、「焼き畑(スコーチドアース)」的な関税戦略と評されています。
関税はなぜ「両刃の剣」なのか
トランプ大統領の発想はシンプルです。関税で輸入品の価格を引き上げれば、同じ製品を国内で生産するインセンティブが生まれ、工場と雇用が戻ってくる、というものです。
しかし、関税はうまく使わなければ「両刃の剣」になり、最終的には自国の経済を傷つける可能性があります。今回のケースでは、次のような経路で悪影響が懸念されています。
- 輸入品の価格上昇:鉄鋼・アルミを直接輸入している企業のコストが即座に上がる。
- 国内製品の値上がり:輸入鋼材などを使う自動車や家電、建設など、幅広い製品・サービスの価格にコスト増が波及。
- 報復関税による輸出減:カナダやEUの対抗措置によって、米国からの輸出が打撃を受け、関連産業の雇用が脅かされる。
サプライチェーン(供給網)の再編や、すでに失われたり細分化された産業への投資を通じて国内生産を立て直すには、数カ月どころか数年単位の時間が必要です。短期的には、米国の消費者、とりわけ食料など生活必需品の物価上昇に直面している低所得層に、さらなる負担がのしかかるリスクが高いとされています。
こうした状況を踏まえ、「トランプ流の関税は、米国経済をも傷つけかねない『大量破壊兵器』になりつつある」との厳しい見方も出ています。
アメリカ消費者と政治へのリスク
トランプ大統領自身も、こうした関税が米国の消費者に痛みをもたらすことは認めています。ただしそのうえで、減税やエネルギー生産の拡大、新たな投資の呼び込みによって、インフレを抑えつつ雇用と賃金を押し上げ、労働者の生活を改善できると想定しています。
しかし焦点となるのは、「消費者、とりわけ低所得層がどこまでその痛みに耐えられるのか」という点です。生活ギリギリで暮らしながらトランプ政権を強く支持してきた人びとが、物価高や雇用悪化に直面したとき、その支持を維持するのかどうかは不透明です。
形式的には、大統領には4年の任期がありますが、生活に直結する成果を求める有権者の「我慢の期限」はそれよりはるかに短いとみられます。今後数カ月、この関税政策が続けば、トランプ大統領の支持率は低下し、政策を支えてきた与党・共和党の議員の間でも動揺が広がる可能性があります。
とくに、来年に控える中間選挙を前に、選挙区の有権者が関税による実質的な緊縮(歳出抑制)と感じるような状況になれば、議員たちが政権から距離を置き、トランプ路線を見直す動きが強まることも考えられます。
ビジネス界の不安とサプライチェーン
すでに米国のビジネス界からは、懸念の声が強まっています。とくに、世界に張り巡らされたサプライチェーンに依存している企業ほど、関税政策による混乱の影響を受けやすくなります。
象徴的なのが自動車産業です。トランプ大統領は自動車関連の関税について、業界からの強いロビー活動を受け、発動を1カ月先送りせざるをえませんでした。それだけサプライチェーンが複雑で、関税が波及する範囲が広いことを示しています。
自動車や電子機器の部品は、多くが国境を何度も行き来しながら組み立てられます。こうした産業では、一国の関税だけでは完結せず、複数の国・地域でコスト増と需要減が連鎖的に発生しやすい構造にあります。
日本の読者が注目すべきポイント
今回の「トランプ関税」は、米国とその貿易相手だけの問題ではなく、国際ニュースとして世界経済全体に波及するテーマです。日本の読者にとっても、次の点が重要になってきます。
- 米国の物価と雇用動向:インフレと失業率の動きが、世界の金融市場や為替に影響し、日本経済にも波及しうること。
- サプライチェーンの再編:自動車や電子機器など、日米欧が密接に結びついた産業で、生産拠点や調達先が見直される可能性。
- 政治リスク:関税政策への不満が米国内政治を揺さぶり、今後の米国の通商政策全体の方向性を左右すること。
関税は一見、分かりやすい「保護策」に見えますが、そのコストは複雑な経路を経て、最終的には消費者と労働者に跳ね返ります。トランプ政権の「焼き畑」的な関税戦略が、今後どのように修正されるのか、あるいはさらにエスカレートするのか。日本からも冷静にフォローしていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








