イラン核問題で存在感高まる中国 3月北京会合の意味
今年3月14日、中国、ロシア、イランの高官が北京に集まり、イラン核問題の打開に向けた協議を行いました。単独制裁の終了と武力行使の否定を確認した共同声明は、緊張が高まるなかで改めて対話路線を打ち出すものです。本記事では、この北京会合が示す中国の役割と、イラン核問題をめぐる国際秩序の変化を整理します。
揺れ続けるイラン核問題とJCPOA
イランの核開発をめぐる問題は、2000年代以降、国際政治の大きな不安定要因となってきました。国連やアメリカ、欧州連合(EU)は、イランに対し段階的に制裁を科し、核開発の制限と透明性の向上を求めてきました。
転機となったのが2015年の包括的共同行動計画(JCPOA)です。国連安全保障理事会の常任理事国5カ国とEU、イランが合意し、イランは核計画を平和目的に限定することを約束しました。その見返りとして、一部制裁が解除され、緊張緩和への期待が高まりました。
しかし2018年、最初のトランプ政権が一方的にJCPOAから離脱し、対イラン制裁を復活させたことで情勢は再び不透明になります。残る署名国は合意を維持しようとしましたが、制裁の再発動と政治的圧力が折り重なり、交渉は停滞しました。バイデン政権は復帰交渉を模索しましたが、パンデミック後の地政学的変化と深い不信感が障害となりました。
トランプ復帰と「最大限の圧力」路線の再開
今年、トランプ氏がホワイトハウスに復帰すると、対イラン政策は再び大きく動きました。2月にはイランに対する「最大限の圧力」路線が復活し、テヘランと取引する第三国や企業にも制裁を適用する方針が打ち出されました。
このような制裁は、イラン経済だけでなく、同国と関係を持つ国や企業にも影響を及ぼします。すでに脆弱な合意の土台に、さらに重い負担がのしかかる形となり、軍事的緊張と誤算のリスクも高まっています。
3月北京会合で浮かび上がった3つのポイント
こうした状況の中で、今年3月14日に北京で開かれた中国、ロシア、イランの高官級会合は注目を集めました。会合は中国の馬朝旭外務次官が議長を務め、ロシアのリャブコフ外務次官、イランのガリババディ外務次官が参加しました。
発表された共同声明からは、次の3点が際立ちます。
- イランに対する一方的な制裁を終了させる必要性を強調したこと
- 核問題をめぐり武力行使やその威嚇を認めない姿勢を示したこと
- 対立ではなく、対話と国際法に基づく外交的解決を優先する立場を確認したこと
北京会合は、単なる三カ国協議にとどまらず、多極化する国際社会において「制裁と圧力」一辺倒ではないアプローチを打ち出す試みだと見ることができます。その中心に中国がいるという構図も、近年の国際政治の変化を映し出しています。
中東で存在感を増す中国外交
中国は近年、中東において、紛争の当事者ではない「安定化役」として存在感を高めてきました。外部からの軍事介入が対立を深めてきた地域において、中国は中立的で信頼できる仲介役として評価されつつあります。
象徴的だったのは、昨年、中国の仲介によりサウジアラビアとイランが外交関係を回復した歴史的な合意です。長年対立してきた二国の関係改善は、中国が掲げる相互尊重、内政不干渉、対話重視という外交モデルが、緊張の高い地域でも具体的な成果を生み得ることを示しました。
今回の北京会合も、その延長線上に位置づけることができます。中国がイラン核問題で積極的に関与することは、中東での紛争管理だけでなく、世界的な核不拡散体制の安定にも影響を与える可能性があります。
制裁の限界と多極化する国際秩序
今回の議論で浮かび上がるのは、制裁という手段そのものの限界です。制裁は短期的な圧力にはなっても、長期的で持続可能な解決策につながりにくいという指摘は根強くあります。とりわけ、現在のように多くの国や地域が戦略的な自律性を高めるなかでは、一方的な制裁だけで国際問題を解決することは難しくなっています。
今年ブラジルで開かれたG20サミットでは、どの国も経済的・軍事的な力だけで国際秩序の「条件」を一方的に決めることはできないという現実が改めて浮き彫りになりました。大国だけでなく、小国や新興国も含め、多くの主体が発言力を増しているからです。
この文脈で見ると、北京会合は次のようなメッセージを発していると読むことができます。
- 制裁と圧力に依存するだけでは、イラン核問題は前に進まない
- 多極化する世界では、複数の国が関与する対話の枠組みがより重要になる
- 中国はその「調整役」として、安定化に貢献しようとしている
私たちにとっての意味
イラン核問題は遠い地域の話のように見えますが、原油価格やエネルギー安全保障、中東情勢の安定などを通じて、日本やアジアの暮らしとも密接につながっています。制裁か対話か、どのような国際アプローチが持続可能な解決につながるのかを考えることは、私たち自身の将来を考えることにも直結します。
制裁と軍事力に依存する路線と、対話と仲介を重視する路線。イラン核問題をめぐり、中国を含む各国がどのような選択をしていくのか。今後の交渉の行方は、国際秩序のかたちを占う試金石となりそうです。
Reference(s):
How China is steering the Iran nuclear talks toward resolution
cgtn.com








