グローバル・サウスはなぜ「自立」を急ぐべきか トランプ外交と南アの教訓
南アフリカの駐米大使エブラヒム・ラスール氏が追放されるという前例の少ない外交措置は、トランプ大統領の予測しにくい外交スタイルを象徴する出来事となりました。グローバル・サウス(新興国・途上国)の国々にとって、これは「他国任せの国際秩序」にどこまで依存できるのかを問い直すタイミングでもあります。
南アフリカ大使追放が映し出した現実
ラスール大使の追放は、世界が驚きと戸惑いをもって見守った出来事でした。南アフリカは、アパルトヘイト後の「奇跡」とも呼ばれる和平と和解のプロセスを経て、分断を乗り越えた象徴的な存在として、国際社会から厚い支援と期待を集めてきました。
その南アフリカの大使が、トランプ大統領の決定により追放されることは、次の二つの事実を浮かび上がらせます。
- どれほど象徴的で「模範的」とされた国であっても、外交関係は一方的な判断で急変しうること
- 従来の「同盟」や「戦略的パートナーシップ」といった枠組みが、想像以上に脆いかもしれないこと
グローバル・サウスにとって、これは「自国の将来を、他国の政権交代や政策転換に過度に左右されないようにするにはどうすべきか」という問いを突きつける出来事です。
ナショナリズムと「アメリカ・ファースト」が揺さぶる国際秩序
トランプ大統領は、ナショナリズムやポピュリズム、「アメリカ・ファースト(米国第一)」を前面に掲げてきました。このメッセージは米国内の有権者には強く響きましたが、国際社会にとっては新たな不確実性の源となっています。
外交面では、次のような動きが相次いでいます。
- パリ協定からの離脱表明など、気候変動をめぐる国際枠組みからの離脱
- NATO同盟国に対する防衛負担の見直し圧力
- 中国製品への関税引き上げを含む保護主義的な通商政策
- 長年維持されてきた貿易協定への異議申し立てや再交渉
こうした一連の決定は、イギリスやEU諸国、カナダやメキシコといった伝統的な同盟国との関係さえも緊張させています。国際ルールや多国間の合意よりも、自国の短期的利益を優先する傾向が強まる中で、「予測可能で安定した国際環境」に依存してきた国々は、大きな不安を抱かざるをえません。
グローバル・サウスが直面する「従属」のリスク
多くのグローバル・サウスの国々は、長年にわたり、主要国の政策や市場動向に左右される立場を強いられてきました。資源価格、為替相場、安全保障、開発援助──いずれも強大な国の決定が一夜にして状況を変えうる分野です。
トランプ政権下で顕在化したような、急激な関税措置や外交方針の転換は、次のような形でグローバル・サウスの脆弱性を露呈させます。
- 輸出市場の突然の縮小や、予期せぬ制裁による景気悪化
- 安全保障協力の条件変更による防衛体制の不安定化
- 援助や投資の流れが政治的理由で止まることによる開発計画の停滞
つまり、「よその国の選挙結果や政権の気分」に、自国の経済や社会の行方が大きく左右される構図そのものがリスクになっているのです。
では「自立」とは何を意味するのか
では、グローバル・サウスにとっての「自立」とは、単に「どの大国とも距離を置く」ことなのでしょうか。必ずしもそうではありません。むしろ現実的な自立とは、次の三つの方向性の組み合わせだと言えます。
1. 経済とパートナーの多角化
特定の国や市場に過度に依存するほど、外交の一挙手一投足が自国経済に響きます。貿易相手や投資パートナーを多様化し、地域内の経済連携を強めることは、ショックを和らげる「保険」の役割を果たします。
2. 自国の意思決定能力を高める
外交や経済政策において、自国の長期的利益を自ら分析し、戦略を描けるかどうかも重要です。他国の「おすすめ」に追随するのではなく、自国の優先順位を明確にし、交渉の場でそれを一貫して主張できるだけの知識と人材が求められます。
3. 南南協力と連帯の強化
グローバル・サウス同士が経験や技術、資金を持ち寄り、相互に学び合う「南南協力」は、自立に向けた現実的な選択肢です。単に支援を「受ける側」にとどまらず、地域の課題解決に主体的に関わることで、国際社会での発言力も高まっていきます。
自立は「孤立」ではない
ここで強調したいのは、自立を目指すことが、多国間主義や協調を否定することとは全く別だという点です。むしろ、国内の基盤を強め、多様なパートナーと関係を築いている国ほど、国際交渉の場で冷静に、そして建設的に振る舞うことができます。
トランプ外交のもとで可視化された不確実性は、グローバル・サウスにとって不安であると同時に、発想の転換を促すきっかけにもなりえます。「不安定な世界だからこそ、自らの足場を固める」。そのための議論と準備を、今のうちから進めておくことが重要です。
私たちが問われていること
南アフリカ大使の追放という出来事は、遠い国のニュースに見えるかもしれません。しかし、その背後にある問いは、グローバル・サウスの国々だけでなく、国際社会全体に突きつけられています。
- 自国の将来を、どこまで他国の政治に委ねてよいのか
- 不確実性が高まる中で、どのようなパートナーシップを築くべきか
- 「自立」と「協調」をどう両立させるのか
国際ニュースを追う私たち一人ひとりにとっても、この問いを自分事として考えることが、これからの世界の見え方を大きく変えていくはずです。
Reference(s):
Why the Global South should embrace self-reliance amid seismic shifts
cgtn.com








