雲南・麗江で観光と文化が融合 習近平主席視察後に広がる変化
中国南西部の雲南省麗江市で、文化と観光を一体化した取り組みが加速しています。2025年3月19日には習近平国家主席が現地を視察し、「文化と観光の深い融合が観光商品の文化的な厚みと魅力を高め、地域経済に新たな活力を与えている」と評価しました。2024年の観光データも好調で、国際ニュースとしても注目されています。
習近平主席が視察した雲南・麗江とは
麗江は、雲南省に位置する有名な観光地です。伝統的な街並みや山岳景観などで知られ、国内外から多くの旅行者を引きつけてきました。習近平国家主席の視察では、とくに文化と観光を組み合わせた「文化観光」の取り組みが高く評価されました。
主席は、麗江で進む文化観光の取り組みについて、観光商品の文化的な内実と魅力を高めるだけでなく、地域経済にも新たな活力を注いでいると指摘しました。これは、中国の地方都市が観光を軸に発展を模索する動きの一つの象徴と言えます。
民族文化を生かした「体験型」観光づくり
トンパ文化やモソの風習を観光資源に
麗江の地方政府は、ナシ族のトンパ文化やモソの風習など、多様な民族文化資源を積極的に活用しています。文化的な景観の整備や、ストーリー性のある「文化シーン」の演出、伝統芸能の公演や文化フェスティバルの開催、文化創造商品の開発などを通じて、観光客が「見る」だけでなく「体験する」ことのできる観光を目指しています。
旧市街に整備された文化中庭や、ナシ古楽を楽しめるナシ古楽クラブなどのプロジェクトでは、観光の動線の中に自然に伝統文化が組み込まれています。訪れた人は単なる観光スポット巡りではなく、土地の歴史や文化の空気を肌で感じることができます。
ヘルスツーリズムから展示会まで、多様なメニュー
観光産業全体の「融合」を進めるため、麗江は国家級・省級の観光リゾートの整備を起点に、ブランドホテルの誘致を進めてきました。ヒルトンなどの国際ブランドホテルが進出し、宿泊の質やサービス水準を引き上げています。
同時に、健康増進を目的としたヘルスツーリズム、農村の暮らしや自然を楽しむ農村観光、会議や展示会を組み合わせた展示観光など、新しい観光商品やビジネス形態も次々と打ち出されています。これにより、麗江は「観光地」から「滞在しながら多様な体験ができる目的地」へと変化しつつあります。
スマート観光と人材戦略が支える成長
旧市街のスマートタウン化と4A級景勝地のデジタル化
麗江の地方政府は、情報技術を観光発展の重要なツールと位置づけています。旧市街ではスマートタウンの建設が進められ、4A級以上の主要な景勝地では、チケット購入から人流管理まで、運営の高度なデジタル化が目指されています。
こうしたスマート観光の仕組みによって、旅行者はオンライン予約や混雑状況の事前把握など、より便利でスムーズな旅を楽しめるようになり、運営側もデータに基づく管理で効率化を図ることができます。
雲南人材支援プログラムで専門人材を育成
人材面では、地方政府が「雲南人材支援プログラム(Yunnan's Talent Support Program)」を実施し、文化・観光分野の高度人材を育成しています。生活支援の補助金やプロジェクト資金の支援、研究や研修の機会提供などを通じて、専門人材が現地に根付き、新たなアイデアやサービスを生み出す土壌づくりが進んでいます。
例えば、無形文化遺産として受け継がれてきた伝統工芸や儀礼を、観光と組み合わせて発信する取り組みや、地域の文化を生かした新たなブライダル観光(結婚式や前撮りを目的に訪れる旅行)の開発などが進んでいます。
観光ブームが地域経済と雇用にもたらした効果
文化観光産業の発展は、飲食、宿泊、交通、買い物など関連産業の繁栄につながっています。麗江市では、観光産業に従事する地元住民が約30万人に達し、市全体の人口の約25パーセントを占めています。多くの家庭にとって、観光は重要な収入源になっています。
2024年の麗江の観光統計は、その勢いを示しています。
- 観光客数:延べ約8,060万人(前年比18.45パーセント増)
- 観光消費額:1,383億元(約191億米ドル、前年比6.41パーセント増)
- 一人当たり消費額:平均1,718元(約237.6米ドル)で雲南省トップ
観光客の増加により、都市部だけでなく周辺地域の飲食店や小売店、交通事業者にも収益の波及効果が生まれています。観光を核に、多様な産業が連携しながら成長する循環が形になりつつあります。
農村振興とサステナブルな観光モデル
麗江では、文化観光の発展が農業やスポーツ、文化産業との連携を通じて、農村振興の重要な手段にもなっています。とくに、雲南の豊かな自然資源である花、茶、コーヒーなどを生かした特色ある農村観光が展開されています。
花畑をめぐる観光ルートや、茶文化を体験できるツアー、コーヒーの生産やテイスティングを組み合わせたプログラムなど、地域の特産と観光を結びつけた旅行商品が整備されています。これにより、一次産業が観光と結びつき、付加価値の高いビジネスへと広がっています。
さらに、農村観光の拡大や文化拠点の整備、文化イベントの開催を通じて、農村部のインフラや生活環境も改善されています。こうした取り組みは、貧困脱却から長期的な農村発展へと移行する過程を支える役割も果たしています。観光が、環境保全と地域経済の両立を目指すサステナブルな仕組みとして機能し始めていると言えます。
日本の地域づくりへのヒント
雲南省麗江の事例は、文化と観光、デジタル技術、人材育成を組み合わせることで、地方都市が新たな成長の道を切り開こうとしている姿を示しています。日本でも各地で観光を軸にした地域活性化が模索されるなか、そのプロセスや発想は参考になる点が多いでしょう。
例えば、次のような視点は、日本の地域づくりを考えるうえでもヒントになりそうです。
- 地域固有の文化や暮らしを「見せる」だけでなく、「一緒に体験してもらう」仕組みをどう作るか
- スマート観光のように、デジタル技術を観光サービスと運営の両方にどう組み込むか
- 農業や地場産業と観光をどのように組み合わせ、持続可能な収益モデルにしていくか
国際ニュースとしての麗江の動きを追うことは、単に中国の観光ブームを知るだけでなく、日本を含むアジア各地の地域づくりを考える素材にもなります。スマートフォン片手に世界のニュースを追う読者にとって、自分の暮らす地域と重ねながら読み解いてみたいケーススタディと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








