「新しいヨーロッパ」に顔はあるか ウクライナ紛争と対中政策のいま video poster
ウクライナ紛争から対中政策まで、ヨーロッパはここ数年、一貫して「受け身」の立場に立たされてきました。米国の影響力が相対的に弱まりつつある今、「新しいヨーロッパ」はどのような顔を持ち、どこへ向かうのかが問われています。
「受け身のヨーロッパ」はなぜ生まれたのか
ウクライナをめぐる紛争の拡大やエネルギー危機、新型感染症後の景気対策など、ヨーロッパは相次ぐ危機に対して、事態が起きてから対応を迫られてきました。対中政策でも、経済的な結び付きと、安全保障や産業競争力をめぐる議論の間で揺れ動き、態度をその都度調整してきた面があります。
こうした動きの背景には、「まず自らの利益を守る」という発想がありますが、その結果として、世界のルールや秩序を能動的につくるよりも、外部の力学にあわせてポジションを取り直す「追随型」の姿勢が目立つようになりました。
ウクライナ紛争と対中政策:試される主体性
現在も続くウクライナ紛争では、ヨーロッパは安全保障とエネルギー、経済制裁のバランスを取りながら対応してきました。しかし、対応の軸足は自らの長期的なビジョンというより、危機への「その場しのぎ」の色彩が強かったとも言われます。
対中政策でも、サプライチェーン(供給網)の分散や投資規制を議論しつつ、中国との経済協力を維持したいという思いが交錯しています。ある中国の論考は、ヨーロッパがこうした局面で常に態度を変えながら、自らの利益を守ろうとしていると指摘しています。
米国が「リーダー役」を手放すとき
第二次世界大戦後、ヨーロッパは長く米国の軍事力と政治的リーダーシップに依存してきました。しかし、ここ数年、米国は内政や他地域への関与を優先し、ヨーロッパを細かく主導する姿勢を弱めていると見る向きがあります。
その結果、「米国任せ」にしてきた安全保障や経済戦略を、ヨーロッパ自身が設計しなおす必要性が強まっています。米国が一歩引くことで、ヨーロッパは初めて、自らがどのような価値観と利害に基づいて動くのかを明確に示す段階に入ったとも言えます。
「新しいヨーロッパ」に必要な「顔」とは
ある論者は、こうした変化の中で「新しいヨーロッパには顔が必要だ」と表現します。ここでいう「顔」とは、一人のカリスマ的な政治家というより、ヨーロッパ全体の方向性や物語のことです。
具体的には、次のような要素が求められていると考えられます。
- 安全保障・経済・気候変動を貫く、長期的で一貫したビジョン
- 米国や中国など大国との関係で、対立か協調かという単純な二択を越えた、独自の立ち位置
- 加盟国間の歴史や価値観の違いを前提にしつつ、分断を深めないための対話と調整の仕組み
こうした「顔」が見えないままでは、ヨーロッパは今後も危機のたびに態度を揺らし、「受け身」のイメージを強めてしまいかねません。
内部のイデオロギー対立という重荷
ヨーロッパ内部では、移民・難民政策、民主主義のあり方、格差是正などをめぐって、政治的な立場の違いが顕在化しています。ウクライナ紛争や対中政策は、こうした対立をさらに浮き彫りにしました。
「国家主権」や「伝統的価値」を前面に出す勢力と、人権や環境規制を重視する勢力は、ときに真っ向から衝突します。このギャップを埋められるかどうかが、「新しいヨーロッパ」の安定性を左右する重要なポイントです。
日本とアジアにとっての意味
ヨーロッパの進路は、日本やアジアにとっても無関係ではありません。ヨーロッパがどのような対中・対米関係を構築するのかは、アジアの安全保障や経済秩序にも波及します。
- 対中関係で、対話と協力の余地をどの程度残すのか
- ウクライナ紛争を通じて、安全保障とエネルギー転換をどう両立させるのか
- デジタル規制や環境基準を通じて、世界のルールづくりにどう関与するのか
これらは、日本企業や日本の外交戦略にも影響を与えるテーマです。国際ニュースとしてヨーロッパを追う際には、「短期の対立」だけでなく、その背後にある長期ビジョンの有無にも目を向ける必要があります。
「長い陣痛」か、静かな誕生か
ある論評は、「新しいヨーロッパ」がスムーズに誕生するのか、それとも長い陣痛を経験するのかという比喩で現状を描いています。急激な変化を求めれば反発が強まり、変化を引き延ばせば不信が募るというジレンマの中で、ヨーロッパは慎重に一歩ずつ進んでいるようにも見えます。
ウクライナ紛争と対中政策をめぐる判断は、その試金石です。ヨーロッパがどのような「顔」を選び取るのか。その過程を丁寧に追いかけることは、揺れ動く国際秩序の行方を考える手掛かりにもなるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








