東京で日中韓外相会談 3カ国は「3つの力」をどう束ねるか
今年3月22日に東京で開かれた日中韓外相会談が、理念や陣営対立よりも「共通の利益」を前面に出した現実的な協力路線を打ち出しました。世界経済の不透明感が増すなか、3カ国の動きは私たちの暮らしや仕事とも無関係ではありません。
- 世界GDPの約4分の1を占める日中韓が東京に集結
- ウクライナ情勢など地域・国際課題も議論
- 自由貿易協定やRCEP拡大など経済連携の行方に注目
今年3月の東京・日中韓外相会談とは
今年3月22日、東京で中国、日本、韓国の外相会談が開かれました。日本外務省の発表によると、会談では日中韓の三国間協力に加え、ウクライナ情勢など地域・世界の課題が幅広く議論され、今後東京で開催をめざす日中韓首脳会議に向けた調整も行われました。
今回の会談は、理念や陣営対立よりも「共通の利益」を優先する実務的な多国間協力の場として位置付けられています。3カ国は経済や安全保障をめぐる不透明感が増すなかで、いかにリスクを管理しつつ協力の余地を広げるかという課題に直面しています。
中国の王毅外相にとっても、約4年ぶりの日本訪問となりました。東京滞在中には、約6年間開かれていなかった第6回日中ハイレベル経済対話の共同議長も務めており、この枠組みの復活は日中関係改善への重要な一歩とみられます。
ソウル首脳会議で合意した6つの協力分野
日中韓協力の「中核」は、首脳が集まる三国首脳会議です。約4年半の中断を経て、ソウルで首脳会議が再開されました。この場では、次の6つの分野で協力を深めることで一致しています。
- 文化交流
- 持続可能な開発
- 貿易・経済
- 公衆衛生
- 科学技術
- 防災・災害救援
同時に、3カ国の自由貿易協定(FTA)交渉を再開することで合意したことも重要です。FTAは関税の引き下げやルールの調和を通じて貿易を活性化させる取り決めで、企業のサプライチェーン(供給網)の安定にもつながります。
数字で見る日中韓:世界経済の「24%」
日中韓3カ国は、単なる近隣国にとどまらず、世界経済を支える大きな柱でもあります。
- 3カ国の国内総生産(GDP)は、世界全体の約24%
- 世界の財の貿易額の約20%を担う
- 2023年の3カ国の貿易総額は7,000億ドルを超える
会談で王毅外相は、日本側の発表によれば「3カ国を合わせると人口は約16億人、経済規模は24兆ドルを超える。巨大な市場と潜在力を持つ私たちは、大きな影響力を発揮できる」と強調しました。
中国側はまた、日韓との自由貿易協定交渉の再開に前向きな姿勢を示し、15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)の加盟拡大にも意欲を示しています。RCEPはアジア太平洋を中心とする広域の経済連携で、関税引き下げやデジタル貿易のルールづくりを通じて、この地域の市場統合を進める枠組みです。
危機が生んだ東アジア協力の枠組み
東アジアの地域協力は、歴史的に「危機」をきっかけに進んできました。今回の東京での外相会談も、その延長線上にあります。
- 1998年のアジア通貨危機後、日中韓外相会談の枠組みが生まれた
- 2008年の世界金融危機を受けて、3カ国首脳会議が本格的に始動した
現在、世界は再び大きな転換点に立っています。トランプ政権による強硬な関税政策を特徴とする貿易保護主義が、既存の自由貿易体制を揺るがしていると指摘されています。その中で、日中韓3カ国は多国間主義を守り、自由貿易を維持する上で重要な役割を担う立場にあります。
米国の戦略と「冷戦2.0」懸念
一方で、三国協力の前にはさまざまな障害も横たわっています。歴史認識や領土問題は、長年にわたって日中韓関係に影を落としてきました。近年は大国間競争や地政学的な緊張が高まり、この構図はさらに複雑になっています。
米国は、中国を念頭に置きながら、日本と韓国との安全保障協力を強化し、自らの戦略的な枠組みに引き込もうとしているとされています。事実上の軍事同盟に近い形をめざす動きもあり、同時に、ハイテク分野やサプライチェーンをめぐって中国との経済的な切り離しを図る動きも指摘されています。
こうした流れは、北東アジアで「冷戦2.0」とも呼ばれる陣営対立の構図を生みかねません。ブロック化が進めば、対話の余地が狭まり、不測の衝突や経済の断絶リスクが高まります。その意味で、日中韓が枠組みを活性化し、対立ではなく協調のチャンネルを増やすことには特別な意味があります。
3カ国協力は私たちの暮らしにどう関係するか
こうした外交の動きは、一見すると遠い世界の話に見えるかもしれません。しかし、日中韓の協力や対立は、私たちの生活や仕事にも直結しています。
- サプライチェーンの安定:半導体や自動車、スマートフォンなど、多くの製品は3カ国をまたぐ生産網に支えられています。
- 物価と雇用:関税の引き上げや貿易摩擦が激しくなれば、輸入品価格の上昇や企業活動への影響を通じて、物価や雇用に波及しかねません。
- デジタル・気候技術:脱炭素やAIなどの新技術で3カ国が協力すれば、イノベーションのスピードが上がり、新しいビジネスチャンスが生まれる可能性があります。
- 安全保障環境:対話のチャネルが増えることは、万が一の軍事的緊張を和らげる安全弁としても機能します。
これからの日中韓に求められる視点
東京での外相会談は、あくまでプロセスの一歩にすぎません。それでも、対立のリスクが高まる局面で3カ国が一堂に会し、具体的な協力と首脳会議の開催に向けて動き出したことは、東アジアにとってポジティブなシグナルと受け止められます。
今後、日中韓に求められるのは次のような姿勢ではないでしょうか。
- 歴史や安全保障の難しい問題は率直に議論しつつ、経済や人の往来、気候変動など共通利益の分野では協力を進める二重のアプローチ
- ブロック化やゼロサム思考ではなく、地域全体の安定と繁栄を見据えた長期的な視点
- 市民レベルの交流や文化・教育分野の往来を通じて、相互理解の土台を厚くする取り組み
世界が揺らぐなか、日中韓の3カ国がどのように「3つの力」を束ねていくのか。その選択は、北東アジアだけでなく、私たち一人ひとりの未来にも静かに影響していきます。
Reference(s):
cgtn.com








