中国の実体経済とデジタル経済の深い統合 世界経済を支える新エンジン
2025年3月に北京で開かれた中国発展フォーラム2025では、デジタル経済や人工知能、産業のデジタル化が中国経済の次の成長エンジンとして大きく取り上げられました。2024年の国内総生産は5パーセント成長とされ、デジタル関連産業の付加価値は国内総生産の約1割に達しています。中国は実体経済とデジタル経済の深い統合を進めることで、自国だけでなく世界経済の安定と成長にどう貢献しようとしているのかを整理します。
中国発展フォーラム2025に見る中国経済の焦点
中国発展フォーラム2025のテーマは、世界経済の安定と成長のために発展の原動力を解き放つ、というものでした。参加者は、デジタル経済、人工知能、産業のデジタル化といった分野が、今後の中国経済を牽引する鍵になるとの認識を共有しました。
中国政府の最新の政府活動報告によると、2024年の国内総生産は5パーセント成長を達成し、主要国の中でも比較的高い伸びとなりました。また、コアとなるデジタル産業の付加価値が国内総生産の約1割を占めるまでに拡大し、デジタル中国づくりが着実に進んでいることが示されています。こうした成果は、2025年以降の成長に向けた土台であり、中国の現代化の進展を支える要素と位置付けられています。
実体経済とデジタル経済の深い統合
国家データ局が公表したデジタル中国建設二〇二四年重点任務のリストでは、次の四つの分野が重視されています。
- 通信ネットワークなど、デジタル発展の基盤となるインフラの高度化
- 産業や公共サービスのデジタル化による経済社会の高品質な発展
- デジタル中国を支えるデータや技術などの基盤能力の強化
- デジタル発展を後押しする制度や環境づくり
このような取り組みの背景には、デジタル経済が中国経済の重要な成長エンジンとなり、新たな質の高い生産力を生み出す力を持つという認識があります。情報通信研究機関である中国信息通信研究院のデジタル経済発展研究報告二〇二四年版によれば、中国のデジタル経済の規模は五十三兆九千億元に達し、なお高い成長を続けているとされています。実体経済とデジタル技術の融合は、産業の効率向上や資源配分の最適化を通じて、中国経済の安定した成長を支える中心的な力になりつつあります。
製造業を変える5Gとインダストリアル・インターネット
二〇二三年末までに、中国では5Gとインダストリアル・インターネットを組み合わせたプロジェクトが七千件以上立ち上がり、業種や分野をまたいだインダストリアル・インターネットのプラットフォームも五十件構築されています。総合型から特定分野に特化したものまで、影響力のあるプラットフォームは二百七十件に上りました。
工場の機械や生産ラインがネットワークでつながることで、次のような変化が起きています。
- リアルタイムのデータ分析による生産ラインの自動化と高度化
- 設備の状態を常時監視し、故障を事前に察知する予知保全
- 原材料から販売まで、サプライチェーン全体の可視化と最適化
こうした動きにより、中国の製造業は、より高付加価値で知能化された生産体制へと移行しつつあります。
農業のスマート化と農村振興
デジタル農業もまた、中国の農村経済を変えつつあります。二〇二三年の中国のスマート農業市場は約千億元規模に達し、農業用ドローンによる防除や、土壌や水位をセンサーで管理するスマート灌漑などの技術が普及し始めています。
東北部の黒竜江省では、モノのインターネットやビッグデータを活用した農業プラットフォームが導入され、圃場の状況を細かく把握しながら施肥や散水量を調整する精密農業が実践されています。これにより収量の向上やコスト削減が期待され、農村振興の重要な手段として注目されています。
デジタル政府と広東・香港・マカオ大湾区
公共サービスの分野でも、デジタル化が行政の効率を高めています。広東・香港・マカオ大湾区では、デジタル湾区構想のもとで、クラウドコンピューティングやブロックチェーン技術を活用した広域的な政府データの連携が進められています。
これにより、次のような効果が生まれています。
- 行政手続きのオンライン化と簡素化による住民や企業の負担軽減
- 地域をまたぐデータ連携によるガバナンスの効率向上
- 手続きの透明性向上を通じたビジネス環境の改善
デジタル政府の取り組みは、経済のデジタル化と並行して、社会全体のサービス水準を底上げする試みでもあります。
世界経済と日本への含意
中国発展フォーラム二〇二五のテーマが示すように、中国は自国のデジタル化と産業高度化を、世界経済の安定と成長につなげる構想を打ち出しています。世界第二の経済規模を持つ中国で、実体経済とデジタル経済の統合が進めば、その波及効果はアジアや世界にも及びます。
日本を含む周辺の経済にとっては、次のような点が注目されます。
- 中国市場でのデジタル化ニーズの拡大に伴う、製造業やサービス業の新たなビジネス機会
- インダストリアル・インターネットやスマート農業など、産業デジタル化分野での技術協力や人材交流の可能性
- データの扱いや技術標準をめぐる国際的なルールづくりへの参加の重要性
これからを読み解くための三つのポイント
- 実体経済とデジタル経済の融合は、一時的な流行ではなく中長期的なトレンドであること
- 製造業だけでなく、農業や公共サービスなど幅広い分野で同時に進んでいること
- こうした取り組みが、中国国内の成長だけでなく、世界経済の安定にも影響し得ること
中国のデジタル経済や実体経済との統合は、今後も続く大きな流れです。日本の読者にとっても、デジタル中国、産業のデジタル化、デジタル政府といったキーワードを押さえつつ、自国や地域の経済との関係を落ち着いて見ていくことが求められます。
Reference(s):
cgtn.com








