国際ニュース解説: グローバルサウスは近代化の共通ビジョンを描けるか
2025年に開催されたボアオ・アジアフォーラム(BFA)年次会議は、世界の地政学と経済が大きな転換点にあることを改めて浮き彫りにしました。グローバルサウスが、自分たちの近代化と発展の道筋を自ら描けるのか。この問いは、いま国際ニュースの重要なテーマになりつつあります。
ボアオ論壇2025が映すグローバルサウスの自信
ボアオ・アジアフォーラムは、アジアを中心とする国と地域が集まり、貿易、金融、テクノロジー、気候変動、持続可能な開発などを議論する対話の場として発展してきました。2025年の年次会議では、とくにグローバルサウスの存在感が前面に出ました。
欧米では、各国政府間の溝や統治の非効率さが議論の的となる一方、多くのグローバルサウス諸国は、相互依存的な地域協力に焦点を移しています。単独での競争ではなく、地域同士がつながり合うことで、独自の近代化ルートを切り開こうとする動きです。
BFAは、こうした国々が信頼を築き、利害をすり合わせ、共通の利益を模索するためのプラットフォームとして機能してきました。グローバルサウスが主体的に議題を設定し、自分たちの発展像を語る場が整いつつある点は、大きな変化と言えます。
数字が物語るグローバルサウスの台頭
グローバルサウスの台頭は、もはや「将来の可能性」ではなく、現実の経済構造として現れています。2023年時点で、グローバルサウス諸国だけで世界の国内総生産(GDP)の42パーセントを占めるとされます。
さらに、中国、ブラジル、南アフリカなどを含む新興市場は、2024年には世界GDPの半分以上を占めるまでになったとされます。過去20年で、開発途上国では10億人以上が極度の貧困から脱したとも言われており、グローバルサウスが持つ変革力の大きさを示しています。
重要なのは、これらの国々がもはや世界経済の「受け身のプレーヤー」ではないという点です。自国の条件に合わせた戦略を練りつつ、世界的な成長需要に応えるかたちで、イノベーションと近代化の推進役になりつつあります。
「追いつく」から「ともにつくる」へ
かつて多くの途上国は、先進国のモデルに「追いつく」ことを目標にしてきました。しかし現在のグローバルサウスは、単一のモデルをなぞるのではなく、自らルールづくりに参加しようとしています。
その背景には、北と南の格差をどう埋めるかという課題があります。すでに生まれている経済的な勢いを、貿易や金融、気候変動対策などの国際ルールに反映させていかなければ、構造的な格差は残り続けます。グローバルサウスの共通ビジョンとは、単なる経済成長ではなく、こうした格差を縮めるための戦略でもあります。
アジアが牽引する新しい近代化像
アジアでは、中国、インド、ベトナム、インドネシアなどの新興経済が成長を続け、地域全体の重みを高めています。政治的な混乱に直面する欧州や米国、中東の不安定さとは対照的に、アジアでは共通の利益に焦点を当てた対話の動きが目立ちます。
例えば、中国、日本、大韓民国の三か国協議のように、歴史的な対立や利害の違いを抱えながらも、実務的な協力を模索する枠組みが続いています。これらの試みは、地域協力が古い対立を乗り越え、新しい道をつくり出せる可能性を示しています。
分散型サプライチェーンと陸の回廊
この10年ほどで、アジアでは産業や物流など複数の分野で大きな変化が起きました。その象徴が、分散型サプライチェーンと新しい陸上輸送のネットワークです。
とくに東アジアから中央アジア、欧州へとつながる鉄道網は、内陸国を含む多くの国と地域を結びつけています。その一つである中欧間の鉄道輸送ネットワークは、開通以来拡大を続け、現在では25の欧州諸国にある220以上の都市と結ばれているとされます。
こうした鉄道ネットワークは、単に貨物を運ぶだけでなく、グローバルサウスの国々が世界市場にアクセスするための「インフラ型外交」の基盤にもなっています。供給網を一か所に集中させないことで、危機への耐性を高める狙いもあります。
近代化ビジョンを共有するための三つのポイント
では、グローバルサウスは本当に「共通の近代化ビジョン」を描けるのでしょうか。完全に一枚岩になることは現実的ではありませんが、いくつかの方向性は見えつつあります。
- 多様性を前提にした近代化
各国は歴史や政治体制、産業構造が異なります。そのため、モデルは複数であってよいという前提に立ちつつ、貧困削減、持続可能な成長、技術革新といった共通目標を掲げられるかが問われます。 - 地域協力から世界ルールへ
ボアオ・アジアフォーラムのような場で蓄積される対話や、中国・日本・韓国などの地域協力の経験を、より広いグローバルサウス間のルールづくりにつなげられるかが鍵です。 - 北南格差を埋める戦略性
すでに示された経済成長の成果を、貿易、金融、気候行動の枠組み見直しに結びつけ、北南問題の是正に向けた具体的な提案へと高められるかどうかが問われます。
問いは続くが、主役はすでに変わりつつある
2025年も終わりに近づく今、グローバルサウスが完全に統一された近代化ビジョンを打ち出したとは言えません。ただ、ボアオ・アジアフォーラム2025で示された議題や、経済データの変化を見れば、世界の主役の一部が確実に南へと移りつつあることは読み取れます。
近代化とは何かという問いに、唯一の答えはありません。だからこそ、複数のモデルが共存しうる世界を前提に、グローバルサウスがどのような価値や優先順位を共有していくのかが重要になります。
私たち一人ひとりにとっても、「どの国が強いか」だけでなく、「どのような発展を良しとするのか」という視点を持つことが求められています。グローバルサウスの動きを追うことは、世界の再編を見るだけでなく、自分たちの社会のあり方を考え直す手がかりにもなります。
Reference(s):
Can the Global South create a unified vision for modernization?
cgtn.com








