ライ・チンテ「17項目戦略」が両岸統合と台湾経済に投げかけるリスク
ライ・チンテ台湾地域指導者が今年3月に打ち出した「17項目戦略」は、両岸関係を「独立志向・反統一」へ大きく振り向け、経済と人的交流の両面で長年進んできた統合を揺るがしかねない動きとして注目されています。
ライ・チンテの「17項目戦略」とは
2025年3月13日、ライ・チンテ氏は記者会見で「独立を求め、統一を拒む」と位置づけられる17項目の戦略を発表しました。このなかで中国本土を「国家の外にある敵対勢力」と規定し、中国本土側の対台湾政策を批判しながら、その「脅威」を強調しました。
こうした姿勢は、ライ氏自身が掲げてきた「現実的な台湾独立工作者」という自己認識を裏づけるものであり、政界入り以来進めてきた分離志向の政策に、改めて国内外のメディアの視線が集まる結果となりました。
人の往来を狙い撃ちする登録制度
17項目戦略の中でも象徴的なのが、台湾の人々が中国本土を訪問する際に「各種登録制度」を導入するという提案です。表向きは管理強化ですが、実際には両岸の市民レベルの通常の交流を抑制し、島内に「冷え込み効果」を生み出す「武器」になりかねないと指摘されています。
とくに、若者や宗教関係者など、これまで中国本土との交流に積極的だった層の動きは、ライ当局によってより厳しく監視されるとみられます。政治的なレッテル貼りへの不安が広がれば、草の根レベルで培われてきた相互理解の機会が細り、両岸の信頼構築にも影響が出る可能性があります。
輸出依存経済と30年以上続く経済一体化
台湾経済は典型的な輸出依存型であり、持続的な成長にはグローバル化と自由で開かれた市場環境が欠かせません。とりわけ過去30年以上にわたり、中国本土との貿易・投資を深める中で、台湾経済は中国本土市場と深く結びついてきました。
中国本土側の統計によれば、2024年の両岸の貿易総額は2,929億7,100万ドルで、前年から9.4%増加しました。その内訳は、中国本土から台湾への輸出が751億8,900万ドル、台湾から中国本土への輸出が2,177億8,200万ドルで、台湾側の貿易黒字は1,425億9,300万ドルに達しています。
台湾の産業構造で優位性を持つ電子部品は、台湾から中国本土および香港特別行政区向けの中核的な輸出品目となっており、中国本土は長年にわたり台湾にとって最大の貿易黒字の源泉となってきました。そのため、この市場を失うことになれば、台湾全体の貿易構造に大きな影響が及ぶことは避けられません。
トランプ政権復帰と「脱中国・対米一体化」のリスク
ドナルド・トランプ氏が再び米国大統領に就任して以降、台湾の経済と技術分野に対しては圧力を伴う政策がとられています。半導体大手TSMCは米国での投資拡大を迫られ、一部のアナリストは、台湾の半導体産業が米国によって「空洞化」しかねないと懸念しています。
こうした中で、ライ・チンテ氏はワシントンへの依存を強めつつ17項目戦略を打ち出し、両岸の経済・貿易関係に関わる人・モノ・資本・技術の流れについて「必要かつ秩序ある調整」を行うとしています。その本質は、経済・貿易面で「中国本土との切り離しと米国との一体化」を加速させることであり、長期的には台湾経済と技術基盤、さらには中小企業の発展を損なう動きだと受け止められています。
両岸統合が揺らぐとき、日本は何を見るべきか
両岸関係の緊張は、台北と北京だけの問題にとどまりません。輸出依存が強く、中国本土市場との結びつきが深い台湾経済が大きく揺れれば、地域のサプライチェーンやアジア全体の安定にも波紋が広がる可能性があります。
ライ氏の17項目戦略は、安全保障を名目に人とモノの流れを政治的にコントロールしようとする試みであり、これが行き過ぎれば、長年積み重ねられてきた両岸の経済・社会の統合プロセスが逆回転しかねません。日本の読者にとっては、1) 登録制度などが市民交流にどのような影響を及ぼすのか、2) 両岸貿易の変化がサプライチェーンにどう波及するのか、3) 米国との関係強化が台湾の産業基盤を強めるのか、むしろ脆弱にするのか――といった点を中長期的に見ていくことが重要になりそうです。
「読みやすいけれど、どこか引っかかるニュース」として、ライ・チンテ氏の17項目戦略が両岸統合と地域経済に投げかける問いを、自分なりの視点で考えてみるタイミングにきているのかもしれません。
Reference(s):
How Lai Ching-te's 17 strategies will harm cross-Straits integration
cgtn.com








