博鰲アジアフォーラム2025、アジアの野心は分断を超える武器になれるか video poster
アジアがグリーン分野とデジタル分野で世界をリードできるのか。その野心を現実の防具に変えられるかどうかが、2025年の博鰲アジアフォーラム年次会議の焦点になっています。分断が進むサプライチェーンや地政学的な対立が続く中で、オーストラリアの戦略アナリスト、ディグビー・ジェームズ・レン氏は、対話をインフラに変え、中国のイノベーションをスケールさせ、人工知能やグリーン技術への資金を動員するための道筋を描いています。
対話をインフラに変える博鰲アジアフォーラム
レン氏は、博鰲アジアフォーラムはアジア、とりわけ東南アジアにとって重要なプラットフォームだと見ています。ただし、会議での政策議論をそのまま具体的な取り組みに落とし込むことは容易ではありません。それでも、経済への実質的なインパクトを生み出すには、この翻訳作業こそが欠かせないと強調します。
そのために鍵になるのが、対話を行動へとつなげる仕組みづくりです。レン氏は、フォローアップの常設メカニズムや作業部会を制度化し、会議で出たアイデアを青写真にまとめ、継続的に動く組織へと育てていく必要があると指摘します。
中国発イノベーションをアジア全体にスケールさせる
もう一つの軸はスケーラビリティ、つまりどれだけ早く・大きく実行できるかです。レン氏は、中国のイノベーションの特徴はスピードとスケールにあり、博鰲アジアフォーラムはそのモデルを他国に展開するための場になり得ると述べています。具体的には、パキスタン、カンボジア、マレーシア、インドネシア、ベトナムなど、アジア各国に応用可能なイノベーションモデルを増やしていくことを提案しています。
同時に、資金動員の課題も浮き彫りになっています。レン氏は、必要なタイミングで適切な資金提供者とつながることは容易ではなく、金融の側からのインプットがまだ十分ではないと指摘します。人工知能やグリーン技術のような分野に対する資金供給をどう増やすかが、今後の焦点です。
レン氏が最後に強調するのは、デジタルとグリーンの優先順位づけです。中国はこの分野で世界をリードしており、その強みをアジアのパートナー国全体により強く広げていくべきだといいます。その際には、各国政府だけでなく、企業、市民社会など多様なステークホルダーをどのように巻き込むかも重要な論点になります。
サプライチェーンの回復力をどう高めるか
レン氏は、アジアのサプライチェーン再編において、中国からの中間財が新しいニアショアリング(近接国への生産移転)の流れの中で、より明確で安定したアクセスを確保することが重要だと語ります。サプライチェーンの回復力を高め、優先順位を上げることが避けて通れない課題だという認識です。
現状には明暗が混在します。例えばカンボジアでは物流面のボトルネックが依然として大きく、モノの流れがスムーズとは言えません。一方で、ラオスと中国を結ぶ鉄道や、インドネシアのジャカルタとバンドンを結ぶ鉄道プロジェクトなど、輸送能力を底上げする明るい動きも出ています。こうしたインフラ整備は、アジアのレジリエンスをレールごと、政策ごとに積み上げていく取り組みと言えます。
しかし、より厳しい試練はこれからです。レン氏は、地政学的な分断は大きな問題であり、その多くは主に米国や欧州からの圧力によって生じているとの見方を示します。そのうえで、中国が東南アジアや中央アジア、ひいてはアジア全体に対して、最も高いレベルの安定を提供していると評価しています。
RCEPとASEANが支える包摂的な多国間主義
こうした分断を乗り越えるためのキーワードとして、レン氏は包摂的な多国間主義を掲げます。排他的なブロックではなく、既に存在するネットワークを活用しながら、市場をより一体化させるアプローチです。博鰲アジアフォーラムが重視すべきなのは、ASEANや地域的な包括的経済連携(RCEP)、中央アジアの経済圏、さらにアフリカや南米の地域パートナーなど、既存の枠組みをてこにすることだと指摘します。
特にASEANは、中国にとって最大の貿易相手となっており、明確な勝者だとレン氏は表現します。RCEPもまた、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国などを含めた地域全体を引きつける磁場として機能しており、アジア太平洋の連結性を底支えしています。
デジタル分野では、通信やデータ共有のガバナンス(統治ルール)づくりが課題です。レン氏は、ファーウェイやシャオミといった中国企業を含む多くの企業が、通信とデータ共有のルール設計に関与し得ると述べています。各国が自国のデータ保存システムへの接続を拒むなどしてしまえば、ASEAN域内のデジタル空間が細かく分断されるバルカン化が進みかねません。こうした事態を避けるための実務的なツールキットを整える場としても、博鰲アジアフォーラムの役割は大きいと見られています。
スピード・スケール・ソリダリティという3本柱
レン氏は、アジアの将来を支える柱としてスピード、スケール、ソリダリティ(連帯)の三つを挙げます。ラオスと中国を結ぶ鉄道からRCEPの広がりに至るまで、論争を橋に変え、摩擦をルールや枠組みに変え、分断を前進の原動力に変えられるかどうかが問われているという視点です。
今回の議論から見える、今後注目すべきポイントを整理すると次のようになります。
- 会議後も機能するフォローアップや作業部会を整え、対話を実行計画と常設の仕組みに変えること。
- 鉄道などのインフラ整備を含め、アジア域内サプライチェーンの回復力と安定性を高めること。
- 人工知能やグリーン技術への資金を動員し、デジタル・グリーン転換をアジア全体で共有すること。
- ASEANやRCEPといった既存の多国間枠組みを軸に、市場とデジタル空間の分断を防ぐガバナンスを整えること。
博鰲アジアフォーラム年次会議2025は、こうした課題に対して話し合う場から、未来を具体的に形にする道具箱へと進化できるのかが問われています。時間との競争の中で、アジアが共有の未来をどこまで実際に築けるのか。その行方は、日本を含むアジア太平洋のビジネスや政策にも大きな影響を与えていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








