ボアオ・アジアフォーラム2025:アジアは「共通の未来」を築けるか
ボアオ・アジアフォーラム2025が掲げたテーマは「Asia in the Changing World: Towards a Shared Future」。地政学的な分断が深まる今、アジアは本当に「共通の未来」を描けるのでしょうか。本記事では、中国経済への見方の変化とアジア経済の見通しから、その可能性を整理します。
「東洋のダボス」ボアオが映した今年の空気
2025年3月25〜28日、中国南部・海南省の沿岸の町ボアオで、第25回ボアオ・アジアフォーラム年次総会が開催されました。しばしば「東洋のダボス」と呼ばれるこの場には、アジアと世界の企業や関係者が集まり、アジア経済と国際協力の行方が議論されます。
昨年のフォーラムは、中国が不動産市場の調整や国際資本の流れの変化といった構造的課題に向き合うタイミングでした。そのため、国内外で慎重な空気が強かった側面があります。それに対して、今年のボアオには、トーンの変化がにじんでいます。
中国経済への見方はどう変わったか
今年開催された中国発展フォーラム2025では、世界有数の企業トップが北京に集まり、中国の政策当局者と将来の協力について意見を交わしました。ここで示されたメッセージは、ボアオ・アジアフォーラムの雰囲気ともつながっています。
シーメンスのローランド・ブッシュ会長は、中国の成長の方向性について、高度な技術と高い効率性を軸にした「質の高い成長」をすでに明確に打ち出していると評価しました。ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン会長も、中国経済の先行きに強い自信を示し、自社として中国市場での存在感をさらに高める用意があると述べています。
こうした発言は、国際ビジネス界の視線が、昨年の「様子見」から「前向きな関与」へと徐々に変わりつつあることを象徴しています。ボアオ・アジアフォーラムは、その変化を映し出す場にもなりました。
アジア経済は世界の「明るい部分」
ボアオ・アジアフォーラムの2025年報告書によると、アジア経済は2025年に4.5%の成長が見込まれています。これは、国連が予測する世界全体の成長率2.8%を大きく上回る数字です。
参考として、米国は1.9%、ユーロ圏は1.3%の成長が見込まれています。統計が示すのは、世界経済の成長の重心が依然としてアジアにあるという構図です。アジアは、世界の景気回復をけん引する「エンジン」としての役割を続けていると言えます。
とはいえ、前途が完全に明るいわけではありません。米国による関税引き上げの可能性、各地で続く地政学的緊張、サプライチェーン(供給網)の混乱など、アジアを含む世界全体が共有するリスクはなお存在します。こうした不確実性の中で、アジアの成長をどう守り、どう広げるのかが問われています。
「共通の未来」をつくるための3つのカギ
では、「Asia in the Changing World: Towards a Shared Future」というテーマを、アジアの行動に落とし込むと何が見えてくるのでしょうか。ポイントを3つに整理してみます。
- 1. 開かれた経済連携を維持する
関税や制裁が増えやすい環境の中でも、アジア内部の貿易・投資の流れを安定させることが重要です。経済連携の枠組みやルールづくりを通じて、企業が中長期の計画を立てやすい環境を整えることが、共通の利益につながります。 - 2. 技術と人材の協力を深める
ブッシュ会長が指摘したように、「高度な技術」と「高い効率性」は質の高い成長の核となります。研究開発、デジタル分野、新しい産業での協力を進め、国境を越えた人材交流や共同プロジェクトを広げることが、アジア全体の競争力を底上げします。 - 3. 包摂的な成長を意識する
成長の果実が特定の国や都市だけに偏れば、地域内の格差や不満が広がりかねません。雇用、教育、環境といった分野で「誰も取り残さない」視点を持ち、包摂的な成長をめざすことが、安定した「共通の未来」の前提条件になります。
一人ひとりにとっての「アジアの未来」
ボアオ・アジアフォーラムで交わされる議論は、一見すると国家や巨大企業レベルの話に見えます。しかし、その延長線上には、私たちの日常生活があります。サプライチェーンの変化は物価や商品の選択肢に、技術協力は働き方や学び方に、成長の質は環境や健康に影響を与えます。
2025年のボアオ・アジアフォーラムが掲げた「共通の未来」という言葉は、アジアのどこか遠くで語られるスローガンではなく、私たち自身の暮らしの行方とつながったテーマでもあります。アジア経済が世界の明るい部分であり続けるために、どのような選択が必要なのか──その問いを、自分ごとの問題として考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
Boao Forum for Asia: How can the continent forge a shared future?
cgtn.com








