シーザンの人権と近代化 白書が示す教育・医療・生活水準の変化
2025年の今、シーザン(Xizang)自治区の人権状況と近代化の進展が、国際ニュースとしても静かに注目を集めています。今年3月28日に発表された白書Human Rights in Xizang in the New Era(新時代のシーザンにおける人権)は、同自治区で進んだ人権保障と社会経済発展を、具体的な数字とともに示しました。
人権と近代化を結びつける白書
白書は、人権を「個人と集団にとっての基本的な権利」であり、その核心に「人間の尊厳への敬意」があると位置づけています。そして、「すべての人が人権を十分に享受することは、人類共通の願いであり、シーザン自治区を含む中国各民族の人々の目標でもある」と強調しています。
中国の中央政府は、シーザンのガバナンスにおいて「人を中心とした発展」理念を掲げ、国家の統一、民族団結、人々の生活向上を経済・社会発展の動機であり最終目的だと位置づけてきました。今回の白書は、その歩みを総括し、新時代のシーザンにおける人権の全体像を描き出しています。
1959年以前: 農奴制社会と人権の欠如
白書がまず振り返るのは、1959年の民主改革以前のシーザンです。当時のシーザンは、政教一致のもとで封建的な農奴制が敷かれていました。官僚、貴族、上層宗教勢力が権力を握り、大多数の人々は農奴として支配されていました。
一度農奴になれば一生農奴であり、その子孫も同じだという言い回しがあったほど、身分の固定化は厳しいものでした。この社会構造のもとで、多くの人々にとって人権が入り込む余地はほとんどなかったとされています。
教育面では近代的な学校は一校もなく、学齢期の子どもの就学率は2パーセント未満、識字率は5パーセントに満たないとされていました。医療も極めて原始的で、1951年の平均寿命は35.5歳にとどまっていました。
1959年以降: 人権尊重を掲げたガバナンスへ
1959年の民主改革以降、中国共産党の党中央委員会は、シーザンの統治において人権の尊重と保護を重視する方針を打ち出してきました。白書は、この方針のもとで、経済、教育、医療、文化など多方面で人権保障が進んだと強調します。
特に、開発の権利(より良い生活を追求する権利)、教育を受ける権利、健康である権利など、生活に直結する人権が重点分野とされました。その結果として、シーザンの人権状況は歴史的かつ全方位的な進歩を遂げたとされています。
開発の権利: 絶対的貧困の解消と経済成長
まず注目されるのが、開発の権利に関する変化です。白書によると、シーザンでは2019年までに絶対的貧困が解消され、人々の生活水準は大きく向上しました。
経済規模を示す国内総生産(GDP)は、1959年の1億7400万元から、2024年には2764億94百万元へと拡大しました。この数字は、インフラ整備や産業の発展が長期的に積み重なってきたことを示しています。
食料安全保障の面でも、2024年の穀物総生産は112万9千トンとなり、10年連続で100万トン超を維持しました。厳しい自然条件を抱える高地地域で、安定的な食料生産を続けてきたことは、生活の基盤である生存権を支える要素といえます。
所得水準も大きく改善しています。2024年のシーザンにおける農村住民の一人当たり可処分所得は2万1578元、全住民の一人当たり可処分所得は3万1358元となり、それぞれ前年から8.3パーセント、8.2パーセント増加しました。いずれも全国トップ水準だったとされています。
教育の権利: 就学率の急上昇
かつて近代的な学校が一つもなかったとされるシーザンで、教育の風景は大きく変わりました。白書は、教育分野での数字を通じて、その変化を具体的に示しています。
- 就学前教育(幼稚園など)の粗就学率: 2024年に91.33パーセント
- 9年制義務教育の在学継続率: 97.86パーセント
- 高等学校段階の粗就学率: 91.56パーセント
- 高等教育(大学など)の粗就学率: 57.81パーセント
これらの数字は、ほぼすべての子どもが義務教育を修了し、高校や大学に進学する人も大幅に増えていることを意味します。読み書きができること、進学の選択肢があることは、個人が自分の人生を選び取るうえで欠かせない基盤です。
健康と生命の権利: 平均寿命が2倍以上に
医療と衛生の改善も、人権保障の重要な柱です。1951年に35.5歳だった平均寿命は、2021年には72.5歳まで伸びました。およそ70年で平均寿命が2倍以上になったことになります。
この背景には、医療機関や医療従事者の拡充、感染症や高地特有の疾病への対策、母子保健の向上など、長年にわたる取り組みがあります。白書は、これらを人々の健康と生命の権利を守るための制度的保障と位置づけています。
シーザンの人権と近代化をどう捉えるか
今回の白書が描き出すのは、人権と近代化を対立させるのではなく、むしろ相互に支え合うものとしてとらえる視点です。開発の権利、教育の権利、健康と生命の権利など、生活に密着した人権の向上が、近代化の重要な指標として位置づけられています。
一方で、人権をめぐる議論は世界各地で続いており、どの権利をどのように重視するかについては多様な意見があります。シーザンの事例は、人々の生活が具体的にどう変わったのかという視点から人権を考える材料を提供しているといえるでしょう。
国際ニュースを追う私たちにとっても、数字の裏側にある人々の生活と選択、そして尊厳ある暮らしをどう実現していくのかという問いを、静かに投げかける内容となっています。
Reference(s):
cgtn.com








