アメリカ環境規制31本撤廃へ 命より経済優先のリスクを考える video poster
米環境保護庁(EPA)が31の環境規制を撤廃しようとしており、それらの規制が維持されていれば今後数年で最大約20万人の命を救えた可能性があると、英紙ガーディアンの分析が伝えています。アメリカ政府が「経済成長」を理由に環境よりお金を優先する流れは、世界の気候危機の中で何を意味するのでしょうか。
31の環境規制撤廃、そのインパクト
ガーディアンの分析によると、米環境保護庁が撤回しようとしているのは31の環境規制です。これらは大気汚染や有害物質の排出を抑え、人々の健康と環境を守ることを目的としていました。
分析では、もしこれらの規制が継続されていれば、
- 短期的には約6,400人の命を救えた可能性がある
- 今後数年で合計およそ20万人の命の行方に影響しうる
とされています。規制の文言だけを見ると抽象的ですが、「命の数」に置き換えると、その重さが一気に具体的になります。
「環境よりお金」という発想
こうした規制撤廃の背景にあるのが、「環境より経済を優先する」という考え方だと指摘されています。現在のアメリカ政府は、環境ルールを緩めることで企業のコストを下げ、投資や雇用を増やせると考えているとされています。
しかし、環境を犠牲にすることで生じる長期的なリスクも無視できません。汚染による健康被害の増加や、それに伴う医療費・生産性の低下は、最終的には社会全体の経済的負担として跳ね返ってきます。短期の数字としては成長が見えても、長期的には「高くつく成長」になるおそれがあります。
極端気象が広がる中での後退
すでに世界各地で極端な気象現象が広がりつつあると指摘される中で、環境対策の後退は環境悪化をさらに進めるとの懸念も示されています。気温の上昇や異常な豪雨、深刻な干ばつなどは、人の命だけでなくインフラや農業にも影響します。
規制を弱めることで短期的に企業の負担は軽くなるかもしれませんが、極端気象による被害が拡大すれば、その復旧や対策にかかるコストは、結局は政府と市民が負うことになります。環境政策は、「負担」ではなく「リスク管理」として捉える必要がありそうです。
命と経済は本当に対立するのか
今回の規制撤廃は、「経済か環境か」という二者択一の構図で語られがちです。ただし、命と経済は本来、対立するものではありません。人々の健康が守られてこそ、安定した労働や消費活動が成り立ち、持続的な成長につながります。
環境基準を守りながら新しい技術や産業を育てる発想もあります。短期のコストだけを見るのではなく、
- どの選択が10年後、20年後の社会にとって得か
- 健康被害や災害リスクを含めた「トータルコスト」はどうか
といった観点から政策を評価することが求められます。
国際ニュースとして読み解く3つのポイント
今回のアメリカの動きから、日本を含む世界の読者が考えたいポイントを整理すると、次のようになります。
- 1 数字で語られる命の重さ
6,400人、20万人という試算は、環境政策が抽象的な議論ではなく、具体的な命の問題であることを示しています。 - 2 短期の利益と長期のリスク
規制緩和は短期的な経済メリットをもたらすかもしれませんが、その裏で積み上がる健康被害や環境悪化のリスクをどう評価するかが問われています。 - 3 他国の選択を「鏡」として見る
アメリカの政策変更は遠い国の話ではなく、自分たちの社会で環境と経済のバランスをどう取るかを考えるヒントにもなります。
環境政策は、政治的なスローガンや経済指標だけでは測りきれない、生活と命に直結したテーマです。国際ニュースとしてアメリカの規制撤廃を追いかけることは、同時に、私たち自身の将来像を静かに問い直すことにもつながっていきます。
Reference(s):
cgtn.com








