中国の新質生産力が世界のイノベーションを動かす 中関村フォーラム2025
2025年3月に北京で開かれた中関村フォーラム(ZGCフォーラム)は、中国が掲げる「新質生産力」と世界の科学技術協力を前面に打ち出しました。中国発のイノベーションが、これからの国際経済や産業構造をどう変えていくのかを考えます。
北京・中関村フォーラム2025で浮かび上がったキーワード
2025年3月27〜31日に北京で開催された中関村フォーラム年次会議は、「新質生産力とグローバルな科学技術協力」をテーマに、科学技術と産業の未来像を議論しました。
フォーラムでは、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)、大韓民国、一帯一路のパートナー国・地域との新たな協力モデルを探る国際フォーラムが多数開かれました。30を超える国際機関が参加し、「オープンサイエンス国際協力イニシアチブ」の実行を掲げています。
具体的には、研究インフラの共同利用、データの国際的な共有、一帯一路共同研究所や国際技術移転センターなど、多国間の科学技術プロジェクトへの関与を深めることが目標とされています。中国の科学技術力を世界とつなぎ、相互に利益をもたらす「開かれた協力」の方向性が示された形です。
「新質生産力」とは何か
新質生産力の中核には技術革新があります。産業・製造分野では、理論のブレークスルー、技術革新、プロセスの改善、道具の高度化、生産要素の最適化という五つのレベルで破壊的イノベーションが起こり得ます。いずれかで突破口が開かれると、新しい生産様式が広がり、技術が急速に社会へ浸透していきます。
産業革命は、機械化から電化、デジタル化へと進み、現在は人工知能(AI)の段階に入っています。2024年には、具現化したAIとしての人型ロボットが春節の番組に登場し、国産の大規模言語モデル「DeepSeek」やAIエージェント「Manus」が世界の注目を集めました。デジタル技術をフル活用したアニメ映画「哪吒2(ネザ2)」は、興行収入の新記録を打ち立てています。
AI、量子コンピューティング、人型ロボット、自動運転機能を備えた新エネルギー車といった先端技術は、新質生産力が持つ潜在力の大きさを象徴しています。中国はこれらの分野への投資を通じて、経済のけん引役を転換し、資源効率を高め、産業高度化を進めようとしています。
従来型の成長モデルとの違い
従来の生産性向上は、設備などの資本投資、労働力の量的拡大、資源の掘削や大量消費に依存してきました。それに対し、新質生産力は次のような特徴を持つとされています。
- 技術的ブレークスルーと生産要素の最適化、産業の高度化が原動力となる
- ビジネスモデルだけでなく、経営や制度のイノベーションも含めて捉える
- 全要素生産性(TFP)の大幅な向上を重視する
- 「高い技術・高い効率・高い品質」を志向する
資源の効率的な利用と技術進歩を両立させることで、持続可能な経済成長をめざす点が、新質生産力の狙いです。中国の現代化戦略と結びつきつつ、世界の技術政策を考えるうえでも参考になる視点と言えるでしょう。
中国の産業システムが支えるイノベーション
中国は、国連が定める全ての産業分類を網羅する世界で唯一の国として、きわめて包括的な産業体系と強固なサプライチェーン能力を持つとされています。製造業の付加価値は15年連続で世界首位となり、国内総生産(GDP)の4分の1以上を占めています。幅広い産業基盤と多様な応用シーンが、今後の産業発展を支える土台になっています。
2024年には、研究開発(R&D)費が前年比8.3%増の3兆6千億元(約4,946億ドル)に達し、世界第2位のR&D投資国の地位を維持しました。
人材面でも強みがあります。中国には2億人を超える技能人材が存在し、そのうち6千万人以上が高技能人材で、労働力の約3割を占めます。さらに、巨大な国内消費市場がイノベーション需要を生み出しており、2024年の社会消費品小売総額は48兆8千億元と、前年比3.5%増加しています。
こうした産業基盤、研究開発投資、人材、そして市場規模が相まって、新質生産力を育てるための土壌となっています。
企業主導の「協働イノベーション・エコシステム」
最先端技術の分野では、不確実性や偶然性が大きく、イノベーションに「決まった型」はありません。その中で重要な役割を果たすのが企業です。企業は、画期的な技術の出発点であり、産業転換を進める推進役でもあります。
技術・人材・資本が効率よく循環する「協働イノベーション・エコシステム」を構築することが、新質生産力の鍵になります。研究現場で生まれた成果を素早く事業化し、イノベーションのチェーンと産業のチェーンを滑らかにつなぐことで、技術が実際の経済価値へと変わっていきます。
世界の産業・グリーン転換への波及効果
中国の新質生産力の進展は、グローバルな産業チェーンとも密接に結びついています。先端製造やクリーンエネルギー、インテリジェントネットワークといった分野で、中国は国際的な供給と協力に関与しており、開発途上国を含む各国が技術力を高め、グリーン転換を進めるうえでの選択肢を提供しています。
同時に、新質生産力は国境を越えた協力を促し、サプライチェーンの連携やグローバルな価値連鎖(バリューチェーン)の再編を後押しします。技術と産業のネットワークがより緊密になることで、世界経済全体の効率性やレジリエンスを高める可能性があります。
日本と世界の読者への問い
中関村フォーラム2025で示された新質生産力の構想は、中国の国内戦略にとどまらず、国際社会との協調を前提としたものとして描かれています。研究インフラやデータを共有しながら、多国間で技術開発を進める流れは、今後いっそう重要性を増していくでしょう。
日本を含む各国の企業や研究機関にとっても、中国の動きを「競争相手」と見るだけでなく、「どの分野で連携すれば相互にメリットがあるのか」という視点で捉えることが求められているのかもしれません。
中国が掲げる新質生産力というキーワードを、世界のイノベーションの行方を考える一つの手がかりとして、引き続き追いかけていく必要がありそうです。
Reference(s):
Chinese new quality productive forces empowering global innovation
cgtn.com








