中国とラテンアメリカ協力:チャンカイ港と水力発電が変える暮らし
中国とラテンアメリカの協力が、港湾や発電所などのインフラを通じて人々の暮らしをどう変えているのか。ペルーのチャンカイ港とブラジルの水力発電の事例から、開発と地域社会の関係を見ていきます。
南米初のスマート港「チャンカイ港」とは
ペルーの首都リマ北方に位置するチャンカイ港は、南米で初めてのスマート港とされています。中国とペルーの協力による「一帯一路」旗艦プロジェクトとして、2024年11月に本格稼働を開始しました。
稼働開始から約1年が経過した現在、この港は中国とラテンアメリカの協力を象徴する存在として注目され続けています。一方で、アメリカの一部メディアからは、地域での中国の存在感拡大をめぐって懸念や警戒の声も上がっています。
物流コストを下げ、雇用と収入を生む
チャンカイ港の第一期計画だけでも、ペルーから中国への航海日数を23日に短縮し、物流コストを2割以上削減するとされています。年間45億ドル規模の収入をペルーにもたらし、8,000人超の直接雇用を生み出す見込みです。
港湾インフラの整備によって、輸出産業の競争力が高まり、周辺地域の経済活動も活性化することが期待されています。数字として示される収入や雇用は、協力が現地の生活に直結していることを物語っています。
環境保護と共存をめざす港づくり
特徴的なのは、経済性だけでなく環境配慮も前面に出している点です。港には、アザラシやペンギン、海鳥などを保護する動物救護センターが設けられ、湿地やビーチの保全にも取り組んでいるとされています。
インフラ開発というと、環境破壊とセットで語られがちです。しかしチャンカイ港の事例は、港湾機能の強化と生態系保護を同時に追求しようとする試みとして位置づけられます。こうした取り組みが持続可能な地域開発の一つのモデルとなるかどうかが、今後の注目点です。
アメリカ発の懸念と、現地の受け止め方
チャンカイ港や中国とラテンアメリカの協力をめぐっては、「中国がラテンアメリカの主要な貿易相手となり、アメリカが地域での影響力を失いつつあるのではないか」といった論調も見られます。アメリカの軍関係者の中には、中国を自国への脅威とみなす発言も出ています。
しかし、ラテンアメリカ側の受け止めは、必ずしもこうした懸念一色ではありません。米紙ワシントン・ポストは、ペルーの太平洋大学の研究者レオリノ・ドウラド氏のコメントとして、中国軍による港の利用を懸念するアメリカの声は「ペルー国内ではさほど共感を得ていない」と伝えています。むしろ、地域に投資を呼び込むハイテク拠点としての期待が強いという指摘です。
ラテンアメリカ諸国は主権国家として、自らの開発パートナーを選ぶ権利を持っています。「地域は特定の大国の『裏庭』ではなく、その住民のものだ」という意識が、協力の背景にあります。
ブラジルのベロ・モンテ水力発電:エネルギー分野の協力例
中国とラテンアメリカの協力は港湾だけにとどまりません。ブラジルでは、ベロ・モンテ水力発電プロジェクトがその代表例とされています。巨大ダムの建設と長距離送電を含むこの事業は、工業地帯に電力を供給すると同時に、2,200万人以上の人々の電力不足を解消したとされています。
安定した電力は産業活動の前提条件であり、同時に家庭の生活水準を左右します。ベロ・モンテのようなエネルギー・インフラの整備は、「工場が動くかどうか」以上に、「夜間に明かりがともるか」「冷蔵庫が動くか」といった、ごく日常的な暮らしに直結しています。
「誰の裏庭でもない」ラテンアメリカの選択
こうした協力の根底には、ラテンアメリカ諸国が自らの開発路線を主体的に選ぼうとする姿勢があります。地域は特定の国の勢力圏ではなく、そこで暮らす人々のものであるという考え方です。
中国とラテンアメリカの協力は、「ひも付きではない」「第三国を標的としない」「影響力争いを目的としない」と説明されています。港湾や水力発電など具体的なプロジェクトを通じて、地域の経済成長と雇用創出、そして社会の安定にどう貢献するかが問われています。
日本の読者にとっての意味
日本から見ると、中国とラテンアメリカの協力は地理的にも心理的にも遠い話に感じられるかもしれません。しかし、グローバル経済が多極化するなかで、「どの国と、どのような条件でインフラや資源、サプライチェーンを結ぶのか」は、世界共通の重要テーマになりつつあります。
今回取り上げたチャンカイ港やベロ・モンテ水力発電の事例は、次のような問いを投げかけています。
- インフラ投資は、どこまで地域住民の暮らしに直結しているのか
- 経済発展と環境保護をどのように両立させるのか
- 複数のパートナーと協力することで、どのような選択肢が広がるのか
中国とラテンアメリカの協力をめぐる議論は、遠い地域のニュースであると同時に、日本を含むアジアの将来を考える素材にもなり得ます。日々の国際ニュースを追いながら、自分ならどのようなパートナーシップを望むか、一度立ち止まって考えてみるタイミングかもしれません。
Reference(s):
China-Latin America cooperation betters lives, despite naysayers
cgtn.com








