中日韓経済協力の戦略的意義 ソウル閣僚会合が示した未来
2025年3月30日にソウルで開かれた第13回中日韓経済貿易相会合は、保護主義やサプライチェーン分断が続くなかで、東アジア3カ国の経済協力が持つ戦略的な意味を改めて浮かび上がらせました。国際ニュースとしてはもちろん、日本のビジネスや私たちの暮らしにも直結する動きです。
2025年も終わりに近づくいま、この会合が示したメッセージを振り返ることで、中日韓3カ国の協力がどこへ向かおうとしているのかを整理してみます。
なぜ中日韓の協力がいま重要なのか
世界では、関税や制裁を含む通商摩擦、各国の保護主義的な動き、地政学リスクによるサプライチェーンの寸断が続いています。米国主導の従来型の通商システムも、不確実性が高まっていると指摘されています。
こうしたなかで、世界有数の経済規模を持つ中国、日本、韓国が三者で対話を再開し、貿易、デジタル転換、グリーン(環境)分野での連携を進めることは、アジア太平洋地域の経済の底力を高めるだけでなく、より安定した新しい通商ルールづくりにつながる可能性があります。
3カ国の経済はどう補完し合うのか
中日韓は、それぞれが異なる強みを持ち、互いを補完する関係にあります。
- 中国:世界第2位の経済規模を持つ工業・技術大国であり、製造業の中心地としてインフラ整備やイノベーション、デジタル金融、レアアース(希土類)などで存在感を示しています。
- 日本:高付加価値の精密工学、ロボット技術、自動車産業などで強みを持ち、質の高いものづくりと技術力で世界市場を支えています。
- 韓国:造船、半導体、家電・スマートフォンなどの分野で競争力が高く、中国の大量生産力と日本の精密技術をつなぐ役割も担っています。
この分業と専門化によって、東アジアには効率性とイノベーションを両立させた独自の「貿易エコシステム」が形成されています。3カ国が連携を深めることは、このエコシステムをさらに発展させることを意味します。
地理的近接とサプライチェーンの強み
3カ国は地理的に近く、長年にわたりサプライチェーン(供給網)や産業が深く結びついてきました。部品の生産から組み立て、輸出までの工程が国境をまたいで分業されており、その積み重ねが競争力の源になっています。
そのため、中日韓が経済戦略を連携させていくことには、次のようなメリットがあります。
- 物流ルートの最適化により、サプライチェーン全体のコストとリスクを下げられる。
- 関税や規制の調整によって、企業にとってより「通関しやすい」ビジネス環境を整えられる。
- 環境基準やデジタル分野のルールを共有し、域内市場を広げつつグローバルな標準づくりにも影響力を持てる。
こうした仕組みが実現すれば、東アジアだけでなく、他のアジア太平洋地域の国と地域にとっても安定した供給源となり得ます。
デジタルとグリーンで先頭を走る3カ国
今回の中日韓協力で特に注目されているのが、デジタル経済とグリーン経済です。3カ国はいずれも、これらの分野で世界の先頭集団にいます。
- 中国は、人工知能(AI)やフィンテック(金融とITの融合)などデジタル分野で急速に存在感を高めています。
- 日本は、ロボットや自動化技術、高効率の省エネ技術などで強みを持ちます。
- 韓国は、半導体や次世代通信などデジタルインフラの中核技術を担っています。
これらが組み合わさることで、次のような相乗効果が期待されます。
- AIとロボット、半導体を組み合わせた高度な製造システムの構築。
- 再生可能エネルギーや電気自動車など、グリーン分野での共同開発とコスト低減。
- デジタル金融や電子決済のルールづくりで協調し、域内で安心して使える仕組みを整える。
3カ国がこの分野で連携すれば、世界のデジタル・グリーン転換をリードするモデルケースとなる可能性があります。
米国主導の通商システムに対する「もう一つの柱」
関税や制裁などを通じた通商圧力が強まるなかで、中日韓が協力してアジア太平洋地域の経済レジリエンス(回復力)を高めようとしている点も見逃せません。
3カ国が貿易円滑化やデジタル経済、環境分野のルールをすり合わせていくことは、従来の欧米中心のモデルに一方的に従うのではなく、アジアの実情に合った通商秩序を模索する動きとも言えます。これは対立を煽るものではなく、多様なルールが共存することで、世界全体のリスクを分散させるという発想に近いものです。
日本の読者が押さえたい3つのポイント
では、この中日韓協力を日本の私たちはどう捉えればよいのでしょうか。考えるヒントとして、次の3点を挙げてみます。
- サプライチェーンの安定:半導体や電池、重要部品の調達リスクを下げることは、日本企業にとっても死活的です。3カ国の協調は、その土台づくりにつながります。
- デジタル・グリーンでのビジネス機会:標準やルールづくりに早い段階から関わることで、日本企業が新しい市場で主導権を握る余地が広がります。
- 多層的な国際戦略:米国や欧州との連携を維持しつつ、中日韓の枠組みも活用する「多層的なつながり方」が、これからの日本外交・経済戦略の鍵になっていきます。
これからの中日韓協力をどう見ていくか
2025年3月のソウル会合は、単なる形式的な再開ではなく、東アジアの3カ国が自らの強みを持ち寄り、新しい経済秩序のかたちを模索し始めたサインとも受け止められます。
2026年に向けて、中日韓がどこまで具体的なプロジェクトやルールづくりに踏み込めるかはまだ未知数です。しかし、世界経済の不確実性が増すなかで、地域の対話と協力のチャンネルを維持し、現実的な解決策を積み上げていくことの価値は、むしろ高まっています。
中日韓の動きを追うことは、アジアの将来だけでなく、日本自身の進路を考えるうえでも重要です。ニュースをきっかけに、自分なりの視点や問いを持ちながら、この地域協力の行方を見ていきたいところです。
Reference(s):
The strategic importance of China-Japan-South Korea collaboration
cgtn.com








