米国がスリランカ輸出に54%関税 揺れるアパレル産業と雇用
米国がスリランカからの輸出品に対し、合計54%にのぼる高い関税を課す決定をしました。経済危機からの回復途上にあるスリランカにとって、この国際ニュースは輸出産業と雇用に大きな揺さぶりをかけています。
何が決まったのか:総額54%の新たな関税
今回の米国の措置では、スリランカからの輸出に対して以下のような仕組みで関税が課されます。
- スリランカからの輸出品に対する44%の特別輸入関税
- すべての対米輸出に共通する10%の基礎関税
この2つが重なることで、スリランカから米国向けに輸出される多くの品目は合計54%という非常に高い関税負担を背負うことになります。価格競争力に直結するため、輸出企業にとっては経営の前提が変わるレベルのインパクトです。
米国はスリランカ最大の輸出相手国
スリランカにとって米国は、これまで最も重要な輸出相手国でした。数字で見ると、構図はよりはっきりします。
- スリランカの年間輸出総額:約130億ドル
- うち米国向け輸出:約30億ドル(最大の輸出市場)
- スリランカの対米輸入:約3億6,800万ドル
- 対米貿易黒字:約30億ドル規模
主力となっているのは、繊維・アパレル製品です。これまでスリランカは米国との貿易で大きな黒字を確保してきましたが、新しい関税制度のもとでは、この優位性が急速に薄れる可能性があります。
最大の打撃はアパレル産業に
今回の米国関税で、最も大きな打撃を受けるとみられているのがアパレル産業です。スリランカのアパレル産業は単なる「輸出産業」にとどまらず、国内の雇用と生活を支える柱でもあります。
- アパレル産業の直接雇用:約36万人
- 関連産業などの間接雇用:約100万人
多くの工場は地方部に立地し、そこで働くのは女性が家計を支える世帯も少なくありません。アパレル工場の給与は、地方では数少ない安定収入の一つであり、子どもの教育費や医療費を賄う重要な「生命線」となっています。
しかし、関税が一気に引き上げられれば、米国のバイヤーにとってスリランカ製品の価格は相対的に高くなります。マージン(利幅)が元々薄い産業であるため、企業側が価格を大幅に引き下げたり、自ら関税分を抱え込んだりすることには限界があります。その結果、バイヤーが他国へ発注を切り替えるリスクが高まり、受注減少や工場閉鎖、雇用喪失へとつながりかねません。
コミュニティと生活への波紋
数字の上では「輸出減」「貿易黒字の縮小」として表れるこの変化は、現場レベルではより生々しい影響をもたらします。
- 工場の残業カットやシフト削減による可処分所得の減少
- 非正規社員や派遣労働者からの雇い止めの懸念
- 工場閉鎖が起きた場合、地方コミュニティ全体の消費低迷
ここ数十年で最悪とされる経済危機からの回復が続く中で、こうしたショックは、特に脆弱な立場にある人々を再び不安定な状態へ押し戻す可能性があります。アパレル産業に依存してきた地域ほど、その影響は大きくなります。
スリランカ経済にとっての意味
今回の米国関税は、スリランカ経済にいくつかの問いを投げかけています。
- 「米国向け輸出依存」をどこまで続けられるのか
- アパレル中心の輸出構造から脱却できるのか
- 関税ショックから労働者をどう守るのか
短期的には、受注の急減に耐えるための資金繰り支援や、失業リスクにさらされる労働者へのセーフティーネットが課題となります。中長期的には、市場の多角化や、付加価値の高い製品への転換など、輸出モデルそのものの見直しが避けられないテーマとなりそうです。
これから何が問われるのか
今回の米国の高関税は、一国の政策変更が、他国の産業や地域社会にどれほど大きな影響を与えうるかを改めて示しています。特に、アパレルのように「安さ」と「安定した受注」に支えられてきた産業にとって、関税の変化は経営戦略と生活の両方を揺るがす要因になります。
スリランカが今後、どのように輸出市場と産業構造を調整していくのかは、2025年以降の国際経済を考えるうえでも注目すべきポイントです。米国との関係をどう位置づけ直すのか、国内の雇用と社会の安定をどう守るのか——その過程は、他の新興国や開発途上国にとっても重要な示唆を与えるかもしれません。
通勤時間の数分で追えるこのニュースの背景には、世界の貿易構造と、そこで働く一人ひとりの生活が密接につながっているという現実があります。スリランカと米国の動きは、今後もしばらく国際ニュースの重要なテーマであり続けそうです。
Reference(s):
cgtn.com








