トランプ政権の一律関税は戦略か暴走か 世界経済への影響を整理
トランプ米大統領が今年4月2日を「解放の日」と呼び、輸入品に一律関税を課す大胆な政策を打ち出しました。米国発の新たな関税は、世界経済にとって戦略的な一手なのか、それとも混乱を招くだけの賭けなのかが問われています。
4月2日の一律関税、何が異例なのか
今回の措置では、多くの国からの輸入品に対して一律10パーセントの関税が課されました。さらに、自動車および自動車部品には25パーセントという高い関税が上乗せされています。相手国が対米貿易黒字かどうかにかかわらず、一律のベース関税を設けた点が大きな特徴です。
さらに異例なのは、各国への追加関税率を決めるために用いられた独自の計算式です。各国の対米貿易黒字額をその国の総輸出額で割り、貿易の不公正さを示す指数とみなし、その数値を二で割ったものを関税率とするというものです。この恣意的な算定方法が、公平性の観点から強い批判を招いています。
この仕組みによって、約60の国や地域が一律10パーセントを超える関税の対象になったとされています。一方で、カナダとメキシコは今回の対象から外れました。これらの国に対してまで高関税を課せば、米国経済への打撃が大きくなりすぎると判断されたためだとみられます。
影響が大きい地域と、なぜか外れた国
最も大きな影響を受けるとみられるのが、中国と東・東南アジア、次いで欧州諸国です。貧しい国々の中には、米国からの輸入が少ない一方で、米国向け輸出に依存しているところも多く、結果として最も高い関税を課される立場に置かれています。
- 中国および東・東南アジア: 製造業と輸出への依存度が高く、幅広い品目で関税負担が増加する可能性がある
- 欧州: 自動車や自動車部品といった主力輸出品が25パーセント関税の対象となり、価格競争力の低下が懸念される
- 最貧国: 米国からの輸入が少ないため統計上の貿易黒字の比率が高くなり、計算式の結果として高関税を課されやすい
このように、今回の関税は必ずしも「豊かな国」だけを狙い撃ちにするものではなく、むしろ最も脆弱な国々を直撃する側面を持っています。
関税を払うのは誰か 米国の消費者への跳ね返り
トランプ政権は、関税は相手国が支払うと主張しています。しかし、関税を実際に米国の税関で支払うのは米国の輸入業者です。輸入業者と輸出企業が負担の一部を吸収したとしても、相当部分は最終的に販売価格に転嫁され、米国の消費者や企業が支払うことになります。
その結果として、物価上昇圧力、つまりインフレが高まるリスクがあります。関税は、表向きは国外に向けられた政策であっても、実際には国内の家計と企業に重くのしかかる税金として作用します。
関税だけで米国は再産業化できるのか
トランプ政権は、今回の関税が米国の再産業化につながると主張しています。しかし、関税だけで産業構造を立て直すことはできないという指摘があります。関税はあくまで補助的な手段であり、産業政策の一部として機能してこそ効果を発揮します。
本来の産業政策に必要な条件
- 特定の産業や分野に絞ったセクター別の関税や支援策を設計すること
- 税制、信用供与、研究開発支援などを組み合わせた一体的な政策パッケージであること
- 政府が企業行動を一定程度コントロールし、期待する投資や雇用を実際に促せること
しかし米国では、政府が大企業をコントロールするどころか、大企業が政治を大きく左右していると指摘されます。このような構図の下では、たとえ高い関税を導入しても、企業行動を公共の目的に沿って変えることは簡単ではありません。
政策の論理と「狂気」のあいだ
今回の関税について、米国や各国のメディアの論調は二分されています。一方には、この政策を狂気に満ちたものだと批判する声があります。他方で、あえて常識外れの手法を取ることで何らかの交渉上の効果を狙っているのではないかと、背後にある意図を読み取ろうとする見方もあります。
少なくとも、現在示されている説明だけを見ると、政策の論理性と公平性には多くの疑問が残ります。関税を相手国に支払わせるという主張は現実の仕組みと食い違い、再産業化という目標に対しても、無差別な一律関税はきめ細かな産業政策とは言いがたいからです。
日本の読者が押さえておきたい視点
日本を含むアジアの多くの国は、米国市場と東・東南アジアのサプライチェーンの双方に深く結びついています。米国が一方的な関税を導入すると、その直接的な対象になっていなくとも、部品や中間財を通じて影響を受ける可能性があります。
- 関税は最終的にどの国であっても消費者と中小企業に跳ね返りやすい
- 一律関税は、どの産業を育てたいのかという戦略が見えにくく、市場の不確実性を高める
- 貧しい国ほど高い関税を課される構造が、国際的な不平等をさらに拡大させる懸念がある
今年4月のトランプ政権による関税措置は、米国の通商政策のあり方だけでなく、世界経済のルールや公平性についても改めて問いを突きつけています。日本としても、この動きを冷静に分析しつつ、自国の産業と生活への波及を見極めることが求められます。
Reference(s):
cgtn.com








