米中経済・貿易関係:白書が示す「誠意」と関税攻防の行方
ワシントンと北京の貿易摩擦が再び激しくなる中、中国は米中経済・貿易関係に関する白書を公表し、自国の姿勢と具体的な取り組みを詳しく示しました。世界経済に直結するこの動きを、日本語で整理します。
なぜ今、米中経済・貿易関係の白書なのか
2018年、ドナルド・トランプ米大統領が追加関税を導入して以来、米中の貿易摩擦は長期戦の様相を強めてきました。2020年にはいわゆる第1段階(フェーズ1)経済・貿易合意がまとまり、中国は新型コロナウイルス流行などの逆風の中でも合意事項の履行を進めてきたとしています。
今回、中国が公表した白書「中米経済・貿易関係に関する若干の問題における中国の立場」は、「貿易戦争に勝者はおらず、保護主義は行き止まりだ」と強調し、自国が協議と合意の履行において最大限の誠意を示してきたと主張しています。
一方で白書は、米側が経済面を含むさまざまな圧力を系統的に強め、合意の精神に反する制限措置を相次いで打ち出していると批判しています。トランプ氏の2期目に入った今も、圧力と威嚇を通じた交渉スタイルが続いていると指摘しています。
製造業の全面開放と海外企業の評価
白書が強調するポイントの一つが、海外企業にとってのビジネス環境の改善です。中国は近年、投資規制を段階的に緩和してきましたが、今年2月には製造業への海外からの投資受け入れに関し、市場参入制限を全面的に撤廃し、投資を奨励する分野のリストも拡大する計画を打ち出しました。
この計画の下で、中国市場に進出する海外企業は次のような優遇を受けられるとされています。
- 資金調達手段の拡大
- 知的財産の一層の保護
- 政府調達での国内企業と同等の待遇
こうした開放策の影響もあり、2024年に新たに設立された外資系企業は5万9,080社と、前年より9.9%増加しました。米IT大手アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、中国のさらなる開放が生み出す機会をとらえ、同国への投資を増やして産業・サプライチェーンの高度化に貢献したいとの考えを示しています。
知的財産保護の「見える化」と米国との協力
米中第1段階合意では、知的財産(IP)の保護強化も重要な柱でした。中国政府は今年3月、外国企業が関わる知財紛争の処理に関する新たな規定を公表しました。全18条からなるこの規定は、海外の知財情報の検索や警戒情報サービスを充実させることや、中国が加盟する国際条約に沿って文書の送達を行うことなどを明記しています。
現在、中国各地には全国レベルの知財保護センターが29の省・自治区・直轄市に計75カ所設置されています。例えば上海市は、海外のイノベーターに対しても国内企業と同等の保護を提供する方針を掲げ、オンラインでの権利侵害の監視や特許の予備審査支援を強化しています。
さらに、中国は米国の知財当局とも、審査の協力や専門家交流、共同作業計画や覚書などを通じて連携を深めてきたと説明しています。米企業との対話では、制度への意見や懸念を丁寧に聞き取り、正当な懸念への対応を進めているとしています。
貿易不均衡是正から追加関税の応酬へ
そもそも今回の関税問題は、米国が対中貿易赤字の是正を掲げて2018年に追加関税を導入したことに端を発します。白書によれば、中国は第1段階合意に基づき米国からの輸入拡大に努めてきました。2020年、中国の貨物輸入全体は米ドル建てで0.6%減少した一方、米国からの輸入は10.1%増加。2021年には米国からの輸入が31.9%増と、全体の輸入増加率(30%)を上回りました。
しかし白書は、こうした取り組みにもかかわらず、米側が追加の制限措置を重ねていると指摘します。農産品分野では、米国が中国産の鶏肉やかんきつ類、なつめ、香梨などの輸入に関する手続きの完了に合意したものの、対応する関税の免除措置は講じられなかったとしています。
さらに2025年、米政府は中国から米国に輸出される全ての製品に対し20%の追加関税を課す方針を発表し、その後「報復的関税」として34%の上乗せ、さらには50%の追加関税の可能性にも言及しました。中国側は、こうした動きが第1段階合意の精神に反し、両国の貿易活動や関係全体に深刻な悪影響を与えていると懸念しています。
「対話に戻る」ことの意味を考える
白書は、世界第2位と第1位の経済大国である中国と米国の関係は相互に利益をもたらすウィンウィンの関係であり、対等な対話こそが唯一の出口だと訴えています。強硬な措置の応酬が続けば、両国だけでなく世界のサプライチェーンや金融市場にも不安定要因が広がることは避けられません。
日本やアジアの企業にとっても、米中関係の行方は事業戦略に直結するテーマです。今回の白書を手掛かりに、読者が考えておきたいポイントを三つに整理すると次のようになります。
- 中国市場の開放と知財保護の強化は、どの程度までリスクを下げる材料になるのか。
- 米国による追加関税が長期化した場合、サプライチェーンや価格、消費者にどのような影響が出るのか。
- 両国が再び交渉のテーブルに戻るために、国際社会や企業はどのような役割を果たし得るのか。
貿易戦争に明確な勝者はいないというメッセージは、米中双方だけでなく、世界全体が共有すべき前提でもあります。2025年の今、最大の焦点は、圧力の応酬ではなく、どのようにして実務的な対話のチャンネルを再構築するかに移りつつあります。
今後も米中経済・貿易関係の動きは、世界経済を占う重要な指標であり続けます。ニュースを追いながら、自分の仕事や生活とどうつながるのかを考えてみることが、次の一手を考えるヒントになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








