トランプ新関税で世界貿易はどう変わる?中国とアジアが探る次の一手 video poster
2025年4月9日に発表されたトランプ米大統領の新たな関税政策は、世界貿易のルールを揺さぶる一手となりました。特に中国への高関税は、国際経済秩序の再編を加速させる可能性があります。本記事では、サセックス大学マイケル・ダンフォード教授の分析をもとに、この動きの狙いと影響を整理します。
何が変わったのか:一律10%、対中国は145%
2025年4月9日、トランプ米大統領は米国の通商政策の大幅な見直しを発表しました。主なポイントは次の二つです。
- 米国が各国に対して検討していたさらなる関税引き上げを90日間停止し、7月まで他国からの輸入品に一律10%の関税率を適用する。
- 一方で、中国からの全ての輸入品には145%という非常に高い関税を課す。
多くの国にとっては一時的な安心材料となる一律10%の関税ですが、中国に対しては極めて厳しい措置となり、世界のサプライチェーンや投資判断に大きな不確実性を生み出しました。
背景にある米国の危機感:貿易赤字と巨額の短期債務
ダンフォード教授は、この急激な関税政策の背景には、米国経済が抱える構造的な課題があると指摘します。
- 米国の貿易赤字は、もはや管理が難しいほどの規模に膨らんでいる。
- 製造業を海外に移転してきた結果、国内投資が不足し、経済の競争力が低下している。
- その一方で、米国は約8.66兆ドルもの短期債務を抱え、その金利は4%を超えている。
教授によると、米国政府はこの短期債務をできるだけ長期債務に組み替えようとしており、その過程で通商政策をてこにしている可能性があります。関税は単なる保護主義の道具ではなく、国内の財政や金融の問題を外部に転嫁しようとする試みでもあるという見方です。
国際秩序へのインパクト:一極体制から分断へ
ダンフォード教授は、今回の措置を「現在の国際経済システムを事実上、解体しつつある動き」と評します。これは、1971年にニクソン米政権が同盟国に通貨の切り上げを迫り、当時の通貨体制を揺るがした出来事になぞらえられています。
教授が懸念するのは、米国が自国の戦略的利益を最優先するあまり、同盟国を含む他国の利益を損ねる行動を取る可能性です。その結果として、次のような変化が起きるリスクがあります。
- 貿易や金融を軸に、世界が複数のブロックに分かれていく。
- 特にグローバルサウス諸国を中心に、通貨や決済システムの多極化が進む。
世界が一つの中心に従う構図から、多数の経済圏が併存し、ときに競合する構図へと移行しつつあるという見立てです。
中国とアジアの選択肢:多角化と地域連携
こうした変化の中で、世界はただ米国に対抗するのではなく、新たな選択肢を模索しています。ダンフォード教授は、貿易相手の多角化がすでに現実の動きになっていると指摘します。
- 韓国、日本、中国の間で、域内貿易を拡大しようとする動きが進んでいる。
- ASEANやRCEPといった地域枠組みを通じて、アジア全体の連携を強める試みが続いている。
- ユーラシア規模での経済統合を目指す構想も進行中である。
さらに、BRICSの枠組みでは、新しい貿易決済メカニズムが議論されています。これは、特定の通貨に過度に依存しない仕組みや、地域通貨を活用した決済など、多様な可能性を探るものです。
教授は、中国が描くビジョンとして、知的財産や技術を少数の国が独占せず、より広く共有することで、発展の果実を分かち合う発想を挙げています。こうした考え方は、国際社会全体のより公平でバランスの取れた成長につながる可能性があります。
日本への示唆:リスクは「関税」だけではない
日本にとって、今回の米国関税政策は決して他人事ではありません。特に日本企業や投資家にとっては、次のような視点が重要になりそうです。
- サプライチェーンの再設計:中国と米国、双方の市場への依存度をどのように分散するか。
- アジア域内市場の再評価:ASEANやRCEPなどを通じた新たな需要や投資機会の発掘。
- 通貨と決済リスクへの備え:ドル一極に依存しない決済手段や、複数拠点での資金管理の検討。
注目すべきは、リスクが関税率の変化だけにとどまらないという点です。金融市場の変動、為替の振れ幅、さらには安全保障や同盟関係の変化など、政治と経済が結びついた複合的なリスクが高まっています。
これからの焦点:「誰が主導するか」より「誰が適応できるか」
世界は今、一つの国がすべてを主導する時代から、多様なプレーヤーが関与する時代へと移りつつあります。米国が金融と貿易を通じて影響力を行使する一方で、中国を含むアジアや新興国は、地域連携や新たな決済システムなど、別の道を模索しています。
ダンフォード教授が強調するのは、これからの鍵となる問いが「どの国が主導するか」ではなく、「誰が変化に適応できるか」だという点です。2025年も残りわずかとなった今、企業も個人も、自らのビジネスやキャリアをどの軸で見直すのかが問われています。
トランプ米政権の関税政策は、世界を分断する圧力であると同時に、新しい連携や発展モデルを模索するきっかけにもなっています。国際ニュースを追う私たちにとっても、単なる対立構図としてではなく、どのような選択肢が生まれつつあるのかに目を向けることが重要になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








