トランプ関税は誰のため?中国145%関税とグローバルサウスへの影響
アメリカのトランプ大統領が掲げる新たな関税政策が、世界中に「請求書」を突き付けています。とりわけ、中国に対して145%という異例の関税を課す動きは、世界市場だけでなく、グローバルサウスと呼ばれる途上国・新興国の将来にも影を落としつつあります。
ローズガーデンで示された「世界への請求書」
ローズガーデンで、トランプ大統領が数十カ国の名前と、それぞれに課す関税率のリストを掲げた光景は、現在のアメリカの関税政策の本質を象徴していると言えます。「アメリカを再び偉大にする(MAGA)」というスローガンの名のもと、各国からアメリカへの「支払い」を求める構図です。
しかしリストに並ぶのは、レソト、ラオス、カンボジアといった、すでに多くの人々が貧困ぎりぎりの生活を送っている国々です。こうした国々が、本当にアメリカの繁栄に「ツケ」を払うべき存在なのでしょうか。
原因をつくったのは誰か──アウトソーシングのツケ
長年にわたり、アメリカは自らの産業と雇用を、賃金の安い国々へとアウトソーシングしてきました。その結果、多くの工場が閉鎖され、かつて産業の中心だった地域は「さびついた工業地帯」と呼ばれるようになりました。
こうした変化を引き起こしたのは、レソトやラオス、カンボジアなのでしょうか。アメリカの都市がスラム化し、工業地帯が荒廃したのは、これらの小さな国々のせいではありません。それにもかかわらず、彼らはいま、新たな関税の対象として名を連ねています。
関税は「世界への税金」か
トランプ政権の関税政策は、世界に対する一種の「税金」のように機能していると見ることができます。世界中から関税として富を集め、それによってアメリカ国内経済を立て直そうとする発想です。
これは、19世紀の大英帝国がアフリカやアジアの植民地から富を絞り取っていた構図を連想させます。当時、吸い上げられた富は植民地の人々の暮らしを豊かにするどころか、本国の労働者にさえ十分に行き渡らず、主に資本家の利益として蓄積されました。
- 植民地の富が、現地の人々や本国の労働者ではなく、資本家に集中した歴史
- 関税という形で集められる富も、同じように一部の利益層に偏るおそれ
トランプ大統領が支持基盤とするMAGA層にとっても、関税が必ずしも生活向上につながるわけではありません。約束された「繁栄」の果実は、最終的にはごく一部の層に偏ってしまう可能性が高いのです。
90日猶予と中国への145%関税
こうした関税方針の発表だけでも、世界の市場は大きく揺れました。その影響の大きさから、トランプ大統領は多くの国々に対する関税の実施を「90日間の猶予」とすることを表明しました。
しかし、この猶予はすべての国に平等に与えられたわけではありません。中国については、すでに145%という極めて高い関税が課されており、その扱いは明らかに別格です。
問題は、そのコストを最終的に誰が負担するかです。低価格で知られるウォルマートやコストコで日用品を買う多くの人々、なかでも生活費を抑えようとしている労働者層が、価格上昇という形でその負担を背負うことになります。関税は「外国に払わせる」ものと説明されがちですが、現実には輸入品の価格に上乗せされ、消費者の家計を直撃します。
「反中国」感情の背景にあるもの
では、なぜここまで中国だけが突出した標的になっているのでしょうか。一つのわかりやすい説明は、中国が巨大な経済力を持つ国であるという事実です。アメリカが自国の覇権を維持しようとするなかで、中国を抑え込もうとする動きが強まっていると見ることができます。
覇権維持としての対中関税
中国の経済的な存在感が高まることは、世界経済の重心が変化していくことを意味します。関税やその他の圧力によって中国の影響力を弱めようとする試みは、単なる貿易赤字の問題というより、国際秩序の主導権をどこが握るかという争いとして位置付けられます。
一帯一路とグローバルサウスへの波及効果
中国の発展は、中国一国にとどまるものではありません。一帯一路構想(Belt and Road Initiative)は、多くの国々にとって、自国の発展のための経済的な枠組みを提供してきました。これにより、アジアやアフリカなどのグローバルサウスの国々には、新たな成長の可能性が生まれています。
もし、中国の経済的な役割が関税などによって大きく削がれれば、こうした国々の発展も一歩どころか、何十年分も後退しかねません。対中関税は、中国だけでなく、広くグローバルサウスの人々の未来にも影響を与える問題なのです。
日本の読者が押さえておきたい視点
日本を含むアジアの読者にとって、トランプ大統領の関税政策は、単なるアメリカと中国の対立ではありません。世界経済の再編のコストを誰が負担し、どの地域の発展が押し戻されるのかという問題でもあります。
- 関税政策を見るときは、「どの国から取るか」だけでなく、「その負担が最終的に誰に転嫁されるか」を確認する必要があります。
- 特定の国を狙った関税や制裁は、その国だけでなく、グローバルサウス全体の発展にも深い影響を与えます。
- スローガンや短期的な政治判断だけでなく、長期的な発展モデルと国際協力のあり方を見通す視点が重要です。
「アメリカを再び偉大に」といったキャッチフレーズの裏側で、誰が利益を得て、誰が負担を強いられるのか。そして、それが中国やグローバルサウス、さらには日本やアジアにどのような形で跳ね返ってくるのか。そうした問いを持ちながら国際ニュースを追うことが、これからの時代のリテラシーと言えるのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








