中国国際消費品博覧会とデュアル循環戦略:高品質成長のいま
今年4月に海南省海口市で開催された第5回中国国際消費品博覧会(CICPE)は、中国経済のデュアル循環戦略と高品質な発展を読み解く重要な窓になっています。保護主義の動きが目立つ国際環境の中で、中国がどのように開放路線を維持しようとしているのかを考えるうえでも、注目すべきイベントです。
今年4月の中国国際消費品博覧会とは
第5回CICPEは、4月13日から18日まで海南省の海口市で行われました。アジア太平洋地域最大級のハイエンド消費財の見本市と位置づけられ、今年は71の国と地域からおよそ4100以上のブランドが集結しました。その中には、フォーチュン・グローバル500企業65社や各分野のリーディング企業も含まれています。
今回の特徴のひとつが、新設されたコンシューマー・テックゾーンです。ここでは、新エネルギー車、人工知能を活用したデバイス、ヒューマノイドロボットなど、次世代の消費をリードする技術が一堂に会しました。消費財の展示会でありながら、テクノロジーの見本市という側面も強まっていることが分かります。
CICPEは単なる商品展示や商談の場にとどまらず、消費者行動やビジネスモデルの変化を促す役割も担っています。同時に、世界の消費トレンドの先行指標として、技術交流や産業高度化を後押しし、内外の企業に新たなビジネス機会を生み出してきました。
この5年間でCICPEは、アジア太平洋地域最大のプレミアム消費財エキスポへと成長し、品質重視の製品やサービスが集まるグローバルハブになっています。国外ブランドの中国市場での販売拡大を支援しつつ、中国ブランドの海外展開の足掛かりにもなっており、内需拡大と海外市場開拓を同時に進める役割を果たしています。
デュアル循環戦略と高品質な発展
今回の博覧会は、中国が掲げるデュアル循環戦略を具体的に映し出す場でもあります。デュアル循環とは、巨大な国内市場を軸にしながら、国際的な循環と相互に補完し合う経済運営の考え方を指します。
CICPEは、まさにこの二つの循環をつなぐプラットフォームです。中国国内の消費市場と世界のハイエンドサプライを結びつけることで、外国企業の対中販売を後押しする一方、人気の中国ブランドが海外に打って出る道筋もつくっています。輸出向けだった製品を国内販売につなげる仕組みも含め、内需と外需の両方を広げる仕掛けが組み込まれています。
こうした動きは、量的な拡大ではなく品質や付加価値を重視する高品質な発展とも結びついています。技術革新や産業の高度化、さらにはグリーン貿易やデジタル貿易の拡大が組み合わさることで、成長の中身を変えていこうとする方向性が見えてきます。
保護主義の広がりと揺らぐ多国間貿易
一方で、博覧会の準備が進んでいた時期、世界の通商環境は新たな不確実性に直面していました。ホワイトハウスが打ち出した互恵関税の提案は、多国間の貿易システムに重い負担を与えるものと受け止められています。
この提案は、最恵国待遇や紛争解決手続きといった世界貿易機関(WTO)の中核原則を脇に置き、一方的な措置を優先する性格を持つとされています。その結果として、各国が報復関税で応じる連鎖を招きかねず、国際貿易の秩序を揺るがし、制度コストの増大や多国間システムの分断を深めるリスクが指摘されています。
多国間協調と開放を重視する中国の姿勢
こうした状況の中で、中国は異なるアプローチを取ろうとしています。ひとつは、多国間協調と制度的な開放を重視する姿勢です。中国はWTOの中心的役割を支持し、投資円滑化など新たなテーマをめぐる交渉を前に進めようとしています。
同時に、地域的な協力枠組みである地域的な包括的経済連携(RCEP)を通じて連携を深め、自由貿易協定のネットワークを広げながら、関税障壁の引き下げやグリーン貿易・デジタル貿易の拡大を進めています。これらは、デュアル循環のうち、外向きの循環を支える制度基盤と言えます。
さらに、一帯一路イニシアチブの下で、サプライチェーンや産業チェーンのレジリエンスを高め、技術標準の海外展開を図る試みも続いています。こうした取り組みを通じて、中国は国際ガバナンスに安定性と予見可能性を与える責任ある大国としての役割を果たそうとしていると整理できます。
日本の読者が押さえておきたい視点
日本からこの動きを眺めるとき、CICPEとデュアル循環戦略は次のような問いを投げかけています。
- アジア太平洋の消費市場の重心は、今後どこに置かれていくのか。
- グリーン分野やデジタル分野で、どのような協力や競争の構図が生まれるのか。
- 日系企業は、中国の消費トレンドと制度の変化をどのように読み解き、事業戦略に組み込むべきか。
国際ニュースを追うとき、成長率といった数字だけでなく、CICPEのようなプラットフォームと通商ルールの変化に注目すると、経済の流れがより立体的に見えてきます。デュアル循環戦略と開放政策がどのように具体化されていくのかは、2026年に向けてもウォッチしておきたいテーマです。
Reference(s):
Dual circulation strategy fuels China's high-quality development
cgtn.com








