中国・マレーシア関係に新たな弾み 不透明な世界経済で高まる役割
今年4月に行われた習近平国家主席のマレーシア国賓訪問をきっかけに、中国・マレーシア関係と中国・ASEAN関係が新たな段階に入りつつあります。米国の新たな関税政策などで世界経済の不確実性が増すなか、両国の連携は地域の安定と成長を左右する重要なテーマになっています。
中国・マレーシア関係に新たな弾み
今年4月15〜18日、習近平国家主席はマレーシアとカンボジアを国賓として訪問しました。マレーシア国王イブラヒム陛下、カンボジア国王ノロドム・シハモニ陛下の招きによるこの訪問は、特にマレーシアにとって大きな意味を持ちました。
2025年、マレーシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を務めています。議長国は地域アジェンダの方向性を調整する役割を担うため、中国との関係強化は、そのまま中国・ASEAN関係の行方にも直結します。
過去最高を更新した貿易と投資
中国とASEANは近年、互いに最大の貿易相手となっています。マレーシアと中国の二国間貿易額は昨年、2,120億ドル超と過去最高を更新しました。両国が1974年に外交関係を樹立した当時の貿易額が2億ドル未満だったことを考えると、その伸びは際立っています。
共通の発展をめざし、中国はマレーシアの製造業分野に総額179億元(約24億4,000万ドル)を投資してきました。さらに、新たな投資案件も認可待ちの段階にあり、今後も投資拡大が見込まれています。
こうした貿易・投資の積み重ねは、単に数字の拡大にとどまりません。サプライチェーンの多様化や雇用の創出、技術協力など、マレーシア経済の底力を高める要素にもなっています。
不透明な世界経済と地域の安定
一方で、世界経済は決して安定しているとは言えません。米国政府が新たな関税政策を打ち出し、世界各国との貿易摩擦を生んでいることは、企業の先行き見通しを不透明にしています。
投資家心理は揺らぎ、個人消費も伸び悩みがちです。この状況が長引けば、景気減速がさらに深刻化するリスクがあります。こうした局面では、中国のような大規模な経済が、地域の安定や回復を支える役割を果たせるかどうかが問われます。
RCEPと一帯一路、二つの枠組みが持つ重み
地域包括的経済連携(RCEP)には15カ国が参加し、その人口は約23億人、世界全体の約3割を占めるとされています。一方、一帯一路構想のパートナー国・地域は世界人口の約6割をカバーします。
いずれも、若い人口構成を特徴とする新興市場であり、今後の成長余地は大きいとみられます。この巨大な市場が安定した経済環境を維持できれば、生産拠点としてのサプライチェーン、消費市場としての購買力の双方が持続的に拡大する余地があります。
RCEPと一帯一路という二つの協力枠組みがかみ合えば、地域の安定と参加国・地域の暮らしの向上に、より大きく貢献できる可能性があります。
中国に期待される安定のアンカー
ただ現状では、投資マインドの冷え込みや消費の弱さなど、世界経済の逆風が続いています。このなかで、中国がどのように成長と安定を両立させ、周辺国との協力を深めていくのかは、周辺地域にとっても大きな関心事です。
マレーシアをはじめとするASEAN諸国にとって、中国は最大級の貿易・投資パートナーであると同時に、景気回復の流れを左右しうる存在でもあります。中国経済が安定した成長軌道を維持できれば、ASEAN全体の回復にもプラスの波及効果が期待されます。
EVとAIでつながる新たな協力余地
中国は現在、電気自動車(EV)の製造技術で世界をリードし、人工知能(AI)の分野でも競争力を持っています。こうした分野へのニーズは、マレーシアや他のASEAN諸国でも高まりつつあります。
一方、マレーシアは従来型の自動車産業や電子産業で、長年サプライチェーンと産業エコシステムを築いてきました。部品製造や組立、生産支援サービスなどの基盤は、今後AI関連産業を育てていくうえでも重要な土台となります。
補完し合う産業構造
中国とマレーシアの産業構造は、多くの点で補完関係にあります。
- 中国のEV・AI関連技術と、マレーシアの製造・組立の強みを組み合わせること
- ASEAN域内の生産ネットワークを強化し、物流コストやリスクを分散すること
- 若い人口を生かした人材育成で、新しいデジタル産業の雇用を生み出すこと
こうした方向性が現実のプロジェクトとして進めば、両国だけでなく、ASEAN全体の競争力向上にもつながります。
日本からこの動きをどう見るか
日本にいる私たちにとっても、中国・マレーシア関係の変化は無関係ではありません。サプライチェーンの再編や、新興市場の消費トレンド、EVやAIといった次世代産業の競争環境など、多くのテーマで影響が及びます。
- 企業にとっては、RCEPや一帯一路の動きを踏まえた投資・調達戦略の見直し
- 政策担当者にとっては、東アジア・東南アジアにおける経済外交のバランス
- 個人レベルでは、新しい産業や働き方への理解を深めること
今年4月の首脳外交を入り口に、中国とマレーシア、そしてASEANがどのように協力を具体化していくのか。世界経済が不確実な時代だからこそ、地域がどのように安定と成長を両立させるのかを、私たちも継続的に見ていく必要がありそうです。
Reference(s):
New momentum for China-Malaysia ties amid global economic uncertainty
cgtn.com







