中国Z世代が火を付けた「グッズ経済」 小さなおもちゃが動かす巨大消費
中国の若者のあいだで広がる「グッズ経済」が、中国経済の新しい成長エンジンとして注目されています。アニメやゲームのキャラクター商品をきっかけに、消費のかたちや「メイド・イン・チャイナ」へのイメージが静かに変わりつつあります。
「Buy goods for good moods」――気分を上げるために買う
中国ではここ数年、「Buy goods for good moods(良い気分のためにグッズを買おう)」というフレーズが、Z世代やミレニアル世代の新しいライフスタイルを象徴する言葉になっています。仕事や勉強でストレスがたまりがちな日常の中で、キャラクターグッズを買うこと自体が、気分転換であり自己ケアになっているのです。
「グズィ」と呼ばれるグッズとは何か
若者のあいだでは、英語の「goods」を音からとった「グズィ(guzi)」という呼び名が広まっています。指しているのは、アニメ、コミック、ゲーム、小説、コスプレ(ACGNC)などに関連するスピンオフ商品です。
そのラインナップは幅広く、例えば次のようなものがあります。
- バッジやポスター、トレーディングカードなど、手に取りやすい価格のアイテム
- モデルフィギュアや大きなぬいぐるみといった、高価格帯のコレクション商品
こうした「グッズ経済」は、中国市場における新しい経済ドライバーとして存在感を増しています。同時に、細部まで凝ったデザインや物語性を持つ製品を通じて、「メイド・イン・チャイナ」に対する世界の見方も変わりつつあると指摘されています。
消費は「物」ではなく「感情」への投資
なぜ、ここまでグッズが若者を惹きつけるのでしょうか。背景には、「感情への投資」という発想があります。
例えば、中国にはこんな若者がいます。
- 神話に登場する人気キャラクター・哪吒(ネザ)のミニフィギュアで自分の部屋を埋め尽くす10代の少年
- 毎月数百元をグッズに使い、「これは自分への『感情投資』だ」と話す30代のオフィスワーカー
多くの若者にとって、「グズィ」の店に行くことは、友だちとの週末デートであると同時に、心を整えるためのちょっとした「セラピー」です。愛嬌のあるキャラクターや、遊び心のあるコレクションに囲まれる時間そのものが、彼らの心を癒やしているのです。
中国では、人気キャラクターのラブブ(Labubu)などのグッズを買う行為は「グズィを食べる」と表現されることもあります。単なる「おもちゃ購入」ではなく、自分に感情的な価値を与える行為として受け止められています。
ブラインドボックスが生む「物語」と「ワクワク」
このグッズ経済を語るうえで欠かせないのが、「ブラインドボックス」形式の商品です。箱を開けるまで中身のキャラクターやデザインが分からないため、購入のたびに小さな「くじ引き」感覚を味わえます。
コレクターたちは、次のようなポイントに魅力を感じています。
- 今回はどのキャラクターが出るのか、開ける瞬間まで分からないミステリー性
- なかなか手に入らない「シークレット(隠しバージョン)」を追い求めるゲーム感覚
- それぞれのキャラクターに設定された背景や人間関係など、物語の世界に浸る楽しさ
「何が出るか分からない」不確実さが、むしろ「楽しさ」の核心になっている点は、日本のガチャガチャ文化を連想させる部分もあります。
ラブブが象徴する「小さなグッズ、大きな経済効果」
グッズ経済の象徴的な存在が、ラブブ(Labubu)というキャラクターです。とがった耳とギザギザの歯、少し悪戯っぽい笑顔を持つその人形は、香港のアーティスト、Kasing Lung氏によって生み出されました。
ラブブは中国各地の「グズィ」ショップで人気商品となり、そのブームはやがてアジア各地へと広がりました。その背景には、K-POP歌手がSNSにラブブの写真を投稿したことなどがあり、ソーシャルメディアを通じて瞬く間に認知が拡大していきました。
今では、新作や再入荷のたびにラブブの人形が「秒」で売り切れ、限定版のフィギュアが転売プラットフォームで元の価格を大きく上回る値段で取引されることもあります。小さな人形が、オンラインとオフラインをまたいだ消費の連鎖を生み出しているのです。
グッズ経済が映し出す中国の「新しい消費」
グッズ経済には、現在の中国経済と若者消費の特徴が凝縮されています。ポイントを整理すると、次のようにまとめることができます。
- 新しい成長エンジン:アニメやゲームなどコンテンツ産業を起点にした「周辺グッズ」が、中国市場の新たな需要を掘り起こしている。
- 感情価値の重視:価格や機能だけでなく、「そのグッズが自分の気分や日常をどう変えてくれるか」という感情的な価値が重視されている。
- 「メイド・イン・チャイナ」のイメージ刷新:デザイン性やストーリー性を備えたグッズを通じて、世界の消費者が中国製品に抱くイメージがアップデートされつつある。
日本からどう読むか――国際ニュースとしての視点
2020年代半ばの中国経済を理解するうえで、Z世代・ミレニアル世代の「グッズ経済」は見逃せないキーワードになりつつあります。そこには、数字だけでは見えない若者の感情や価値観が色濃く反映されているからです。
日本でも、推し活グッズやカプセルトイなど、「モノを通じて感情を満たす消費」は広がっています。中国のグッズ経済をたどることは、アジアの若者文化や消費トレンドの共通点と違いを考えるヒントにもなるでしょう。
小さなフィギュアやぬいぐるみが動かしているのは、売り場だけではありません。SNS、転売市場、さらには国境を越えたカルチャーの交流まで――中国発のグッズ経済は、私たちの身近な消費とつながる国際ニュースとして、これからも注目しておきたいテーマです。
Reference(s):
cgtn.com








