米中関税か外交か 世界は分断に向かうのか video poster
2025年4月9日、米国が中国からの輸入品に145%という異例の高関税を課し、中国も125%の関税で応じました。この「関税合戦」は世界の市場を揺らし、「関税か外交か」という問いを改めて突きつけています。
本記事では、ヤシル・マスード氏が米国の地政学アナリスト、マイク・ビリントン氏と行ったデジタル対話をもとに、米中関係と世界秩序の行方を整理します。
145%関税が示す緊張の深さ
4月9日の発表で、米国は中国からの輸入品に145%の関税を上乗せしました。これに対し、中国は125%の報復関税を打ち出し、米中の経済的な緊張は一気に高まりました。
ビリントン氏は、こうした動きが「世界の金融・貿易システムがすでに不安定ななかで起きている」ことに注目します。関税が世界中の企業と家計に新たな不安をもたらし、市場に動揺が広がっていると見ています。
トランプ政権の対中姿勢:対話から圧力へ
トランプ大統領の対中姿勢は、最初から対立一辺倒だったわけではありません。ビリントン氏によれば、1期目の初期には、フロリダ州マーアラゴへの習近平国家主席の招待や、トランプ氏自身の北京訪問など、個人的な関係づくりが進んでいました。故宮を共に訪れ、中国の歴史や哲学について説明を受けたトランプ氏は、中国と習主席を高く評価していたといいます。
しかしその後、対話よりも圧力を重視する側近の影響が強まりました。ビリントン氏は、通商や安全保障の分野で対中強硬論を主張するアドバイザーたちが、外交よりも高関税や対立的なメッセージを優先させていると指摘します。その結果、関税が部分的に他国向けには引き下げられた一方で、中国向けの高関税は残り、「今後も続くのかは不透明だ」と見ています。
「2クアドラリオン・ドル」のデリバティブと金融不安
ビリントン氏が特に懸念するのは、関税問題が、すでに脆さを抱えた世界金融システムの上に積み重なっている点です。同氏は、欧米の銀行システムの上には、デリバティブと呼ばれる金融派生商品による「賭け」のような債務が約2クアドラリオン・ドル存在すると述べます。1クアドラリオンは1000兆ドルに相当します。
こうした巨大な金融取引は、普段は目に見えにくいものの、一度ショックが走れば連鎖的な混乱を招きかねません。ビリントン氏は、このような不安定な状況で主要国が関税をエスカレートさせることは、世界経済全体にとってリスクを高めると警告します。
ヨーロッパは米中の間でどう動くか
米国の関税政策は、同盟国であるヨーロッパにも影響を与えています。ビリントン氏によると、ヨーロッパの国々は、自らも米国の措置の対象となり得ると感じるなかで、中国との関係改善を模索しています。
一方で、多くの国は米国とも協議のテーブルにつかざるを得ません。安全保障や経済で米国との結びつきが強い以上、自国民の暮らしを守るために、米国と関税問題を交渉する必要があるからです。ヨーロッパは今、米中両方との関係をどうバランスさせるかという難しい選択に直面しているといえます。
中国の発展モデルと一帯一路という選択肢
ビリントン氏は、対立を深めるのではなく、中国との協力から学ぶ道もあると主張します。同氏は、中国が約8億人の人々を貧困から脱却させると同時に、世界で最も先端的な技術国家になったと評価します。
その延長線上にあるのが、一帯一路構想です。これは、インフラ整備や技術協力を通じて、各国の経済成長と安定を支えようとする取り組みとして位置づけられています。ビリントン氏は、米国がこの枠組みに参加し、各国の経済・開発・安全保障のニーズに応える新たな国際秩序づくりに協力すべきだと提案します。
関税か外交か:世界はどちらに進むのか
では、関税は世界を分断に向かわせるのでしょうか。それとも、むしろ対話の必要性を浮き彫りにし、外交の再起動につながるのでしょうか。
ビリントン氏は、トランプ大統領が最近、習近平主席を非常に優れた人物と評価する発言をしたことに注目します。かつてのように、中国との協力や主権への敬意を前提とする姿勢に立ち戻り、交渉のテーブルに本格的に戻るならば、「破局を避ける第一歩になり得る」と期待を示しています。
一方で、その選択が実際に行われるかどうかは、いまだ不透明です。関税という圧力の道具を握りしめたまま進むのか、それとも、相互尊重と協力を軸にした新しい外交の枠組みを選ぶのか。米中、ヨーロッパ、そして世界中の国と地域が、その岐路に立っています。
読者への問いかけ
高関税による圧力と、外交による協調。どちらが、長期的に見て世界の安定と自国の利益につながると考えますか。通商摩擦のニュースを追うとき、関税の数字だけでなく、その背後にある外交の選択肢にも目を向けることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








