トランプ関税が揺さぶる同盟:日本・ドイツ・カナダはどう動くか
トランプ政権が進める強硬な関税政策が、本来の標的とされた競合国よりも、日本やドイツ、カナダ、オーストラリアなど米国の同盟国との信頼関係を大きく揺さぶっています。2025年現在、この動きは「同盟」とは何かという理解そのものを静かに変えつつあります。
トランプ政権の関税戦略:「同盟より取引」の発想
今回の関税政策は、当初は国内の雇用を取り戻し、経済を再活性化させるための手段として打ち出されました。貿易不均衡を是正するための一時的なテコと説明されてきた関税が、いまや鉄鋼やアルミ、自動車など幅広い分野で、日本、ドイツ、カナダ、オーストラリアといった長年のパートナーにも一律に適用されています。
背景には、「恒久的な同盟国」というよりも、「取引相手としての利害」が優先されているのではないか、という見方があります。かつて米国の掲げてきた自由で開かれた国際秩序に歩調を合わせてきた国々は、ナショナリズムの名の下に行われる経済的な圧力に直面し、自らの戦略の向きを静かに修正し始めています。
- 二国間の信頼の低下
- サプライチェーンや物価の不安定化
- 各国の国内政治への影響の拡大
米国内でも家計に負担、企業に不確実性
こうした関税は、米国内でも消費者に跳ね返っています。マイク・ペンス元副大統領は、現在の関税はトランプ・ペンス政権当時のほぼ10倍に達し、米国の家庭には年間3,500ドル以上の負担を強いると指摘しました。対外的には「強硬な通商政策」として打ち出された施策が、守るはずだった米経済そのものを傷つけている、という評価も出ています。
関税は単なる関税収入にとどまらず、サプライチェーン(供給網)、物価上昇率、投資家心理にも波紋を広げます。輸出に依存するドイツや日本では、米市場へのアクセスが揺らぐことで、完成品メーカーだけでなく、部品を供給する中小企業や年金基金などにも影響が及びます。
さらに、市場の反応を見てから関税措置を一時停止するといった、政権側の判断の読みにくさも不安要因です。長期的な投資計画を立てるうえで、政策の予見可能性は重要ですが、その前提が崩れつつあるとの声もあります。
同盟国それぞれの対応:日本・カナダ・ドイツ
日本:静かな外交の裏で募る違和感
日本は対抗措置としての報復関税や、世界貿易機関(WTO)への提訴をあえて見送り、静かな外交で打開を図る道を選んでいます。石破茂首相が正面衝突を避けるのは、揺らぎやすい日米同盟をこれ以上傷つけたくないとの計算からだとみられます。
しかし、その自制の裏側には大きな失望もあります。アジア太平洋地域で重要な役割を担う日本は、本来であれば関税の適用除外が期待されていました。にもかかわらず、とりわけ自動車分野で関税が課されたことは、象徴的な打撃となりました。
東京はいま、「同盟関係を守る」という大義と、「米国の一方的なやり方に屈したのではないか」という国内世論の反発リスクとの間で、綱渡りを強いられています。
カナダ:対抗関税と国内支援で「痛み返し」
カナダは、日本とは対照的に報復関税という選択肢を取りました。マーク・カーニー首相は、米国内で政治的に敏感な産業に標的を絞ることで、「最大限の痛み」を与える狙いを隠していません。
同時に、カナダ政府は関税収入を使って打撃を受けた労働者を支援する方針を示しています。これは、通商摩擦が単なる貿易の問題にとどまらず、失業や所得減少といった社会保障のテーマと直結していることを物語ります。関税が上がるたびに、国内の分断や政治的な緊張も高まりやすくなる構図です。
ドイツ:世界金融危機への懸念
ドイツでは、次期首相と目されるフリードリヒ・メルツ氏が、トランプ政権の関税が世界金融危機のリスクを高めていると警鐘を鳴らしています。懸念の対象は、自国の製造業だけではありません。米国の主導で築かれてきた世界の経済秩序そのものが揺らぎかねないという危機感です。
米国が電子機器など一部の産業だけを選んで関税の対象から外す一方で、他の分野には重い負担を課すやり方は、「合意されたルール」よりも「政治的な思惑」が優先されているという印象を与えます。長年、ルールに基づく貿易体制を支えてきたドイツにとって、それは看過しがたい変化です。
揺らぐ米国主導の国際秩序と同盟の再定義
今回の関税をきっかけに、米国の同盟国はあらためて「米国と歩調を合わせること」が本当に安全保障と繁栄を保証してくれるのか、問い直しを迫られています。北大西洋条約機構(NATO)や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)といった枠組みをこれまで支えてきた国々の間で、「米国の立場に従うこと」と「自国の利益を守ること」が必ずしも一致しない局面が増えているためです。
重要なのは、米国の政策に協調してきたからといって、通商面での保護や予見可能性が自動的に保証されるわけではない、という現実が可視化されたことです。この気づきが、各国にとっての対米依存の度合いを見直すきっかけになりつつあります。
日本の読者への問い:同盟をどうアップデートするか
日本にとって、今回の関税問題は、日米同盟を前提としながらも、その中身をどう設計し直すかという問いを突きつけています。「同盟だから安心」ではなく、「同盟であっても利害が衝突しうる」という前提で、通商や安全保障を考える必要があるのではないでしょうか。
トランプ政権の関税戦略は、短期的な貿易赤字の是正策であると同時に、同盟観そのものを揺さぶる実験になりつつあります。日本を含む同盟国が、そこからどのような教訓を引き出すのか。その答え次第で、これからの国際秩序の形も大きく変わっていくかもしれません。
Reference(s):
How Trump's tariff strategy is reshaping the alliance understanding
cgtn.com








