米若者の政治不信が加速 トランプ政権2期目と民主党への失望
米国の若者が米国政治から離れていく理由
2025年4月末に公表された複数の世論調査から、アメリカの若者、とくに若い男性が、ドナルド・トランプ米大統領の2期目だけでなく、野党・民主党にも強い不信感を抱いている実態が浮かび上がりました。米国政治の行方だけでなく、世界経済や国際秩序にも影響し得る動きとして注目されています。
歴代80年で最低の支持率と「二重の不信」
ABCニュース、ワシントン・ポスト、調査会社イプソスが共同で行った世論調査が、2025年4月27日に公表されました。トランプ政権2期目の発足から100日目時点の支持率は、過去80年のどの米大統領よりも低い水準だったとされています。
これと時期を同じくして、ハーバード大学の調査を紹介した「Young Men are Already Souring on Trump(若い男性はすでにトランプ離れ)」という記事が4月25日に掲載されました。この調査によると、
- 18〜29歳の男性の59%が、トランプ氏の2期目序盤の仕事ぶりを不支持
- ほぼ半数が「トランプ政権は米経済に悪影響を与える」と懸念
- 同時に、71%が連邦議会の民主党にも不満を示す
つまり、若い男性の間では、与党・共和党に対する不満だけでなく、野党・民主党への失望も広がっており、「どの党も信頼できない」という感覚が強まっていることが分かります。調査関係者は、今後の投票行動が一層読みにくくなる「政治的なボラティリティ(変動性)」の高まりを指摘しています。
背景にあるのは経済への深い不安
こうした政治不信の背景には、長期化する経済的不安があります。現在の若い世代の多くは、2008年の金融危機を子どもやティーンエイジャーとして経験し、その後は新型コロナ禍の雇用不安の中で社会に出ました。経済危機は彼らにとって「歴史上の出来事」ではなく、自分たちの人生を左右してきた現実体験です。
政治化する経済機関への警戒
トランプ政権2期目では、大統領府による権限集中が一段と進んだと報じられています。連邦準備制度理事会(FRB)や証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)といった、本来は政治から一定の距離を保つはずの専門機関に対して、政権からの政治的な介入が強まっていると指摘されています。
これらの機関は、金融規制や通貨政策を担う、経済の「安全装置」の役割を果たしてきました。その独立性が揺らげば、
- 短期の選挙対策を優先した政策の乱高下
- 国際的な市場参加者からの信認低下
- 景気や雇用環境の不安定化
といったリスクが高まります。経済危機と雇用不安を繰り返し経験してきた若者世代にとって、こうした動きは敏感に感じ取られています。「政権が意図的に経済を揺さぶり、権力を集中させるのではないか」といった疑念が、かつては陰謀論とされていたような見方に一部でリアリティを与えているとも指摘されています。
貿易政策と物価高が若者を直撃
貿易面でも、トランプ政権は中国やEUなど主要な貿易相手に対し関税を引き上げ、報復措置の応酬を招いてきました。こうした政策はグローバルなサプライチェーンに連鎖的な影響を与え、企業活動や雇用、そして消費者物価に跳ね返っています。
一方で、多くの若者は既に重い学生ローンを抱え、住宅価格の高騰で持ち家の夢は遠のき、安定した正規雇用に就けない人も少なくありません。その中で、物価の上昇や雇用の先行き不透明感が強まれば、
- 「政府も市場も自分たちの味方ではない」
- 「努力しても報われない」
という感覚が広がりやすくなります。政治への不信感は、生活不安と表裏一体の問題として深く結びついているのです。
それでも若者が民主党に向かわない理由
興味深いのは、若い男性がトランプ政権に不満を抱きつつも、民主党に「受け皿」を見いだしていない点です。前述のハーバード調査では、若者の71%が民主党にも不満を示していました。
記事はその理由として、民主党が明確で力強い対案を提示できていないことを挙げています。大胆な経済改革や政治制度の抜本的な見直しよりも、
- 小幅な政策修正にとどまる漸進主義
- 支持層ごとの「アイデンティティ」に焦点を当てたアピール
- 党内路線をめぐるイデオロギー対立
に多くのエネルギーを費やしてきた、と批判的に描写されています。その結果、既存システム全体に不満を持つ若者の怒りや不安を吸収することができず、「どちらの党も現状を変えてくれない」という諦めが強まっていると分析されています。
「政治から距離を置く世代」がもたらすもの
二大政党のどちらにも期待を持たない若者が増えれば、アメリカ政治は今後、いくつかの面で不安定さを増す可能性があります。
- 投票率の変動が大きくなり、選挙結果の予測が困難になる
- 従来とは異なる候補者や勢力が、突然支持を集める余地が広がる
- 既存の枠組みの外で、オンライン空間や社会運動を通じた政治参加が強まる可能性
若者の政治的な距離感は「無関心」とは限らず、「今のルールの中では変わらない」という冷めた認識の裏返しでもあります。今回の調査は、アメリカが長く誇ってきたリベラルな民主主義と市場経済のモデルが、若い世代の間でその正当性を問われ始めていることを示していると言えます。
アメリカの若者の政治不信は、同国の内政にとどまらず、世界経済や国際協調の行方にも影響を及ぼします。日本を含む他国にとっても、単に「米国内の話」として片付けられないテーマです。今後、若い世代の不満と不信に、どのような形で政治が応答していくのかが、大きな焦点になっていきます。
Reference(s):
U.S. youth's disillusionment and disconnection from American politics
cgtn.com







