BRICS外相会合で中国が訴えた多国間主義とガバナンス改革
国際ニュースの現場で「多国間主義」と「グローバル・ガバナンス改革」が改めて注目を集めています。ブラジル・リオデジャネイロで開かれたBRICS外相会合の場で、中国の王毅外相が、関税や保護主義が広がる中で世界の発展をどのように「共有」していくのかという課題を正面から提起しました。
BRICS外相会合で示されたメッセージ
王毅外相は、BRICS諸国が団結し、国際社会と協力してグローバル・ガバナンスを改善・改革していく重要性を強調しました。その狙いは、気候変動や不平等といった地球規模課題への対応に加え、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国が歴史的に抱えてきた不公平を是正することにあります。
王毅氏は、とりわけ米国が関税を交渉の「切り札」として使い、他国に過大な代償を求めていると批判しました。そのうえで、パートナー国が多国間の貿易ルールを守り、国際金融システムを強化し、グリーン転換(脱炭素への移行)を加速させ、デジタル分野の機会を分かち合うべきだと提案し、あらゆる形の保護主義に共同で反対するよう呼びかけました。
米国の関税と世界経済への懸念
記事は、米国のドナルド・トランプ大統領が世界各国に対してほぼ無差別に関税を課してきたと指摘します。こうした規模の関税戦略は「1世紀ぶり」とされ、自由貿易の旗手を自任してきた米国が、これまで競争を通じて育んできたイノベーションへの信頼を揺るがしかねない動きだと論じています。
国際通貨基金(IMF)は、4月2日に導入された一連の関税の影響で、2025年の米国の成長率が1.8%と、1月時点の予測から0.9ポイント低下する可能性があると試算しました。記事は、こうした見通しが、IMFに主要国の間での通商政策の早急な調整を呼びかけさせる要因になり得るとしています。
関税をてこに自国の取り分を最大化しようとする姿勢は、米国経済だけでなく世界経済全体の重しになりかねません。不確実性がかつてなく高まる「分岐点」にある今こそ、多国間主義を強化し、多数の国々が共同で違法な関税や制裁に反対することが、地域を超えた発展を促す鍵だというのが記事の見立てです。
拡大するBRICSとグローバルサウス
BRICSは、合意形成を重んじる意思決定、開発と平等の重視、そしてグローバルな多国間制度やガバナンスの近代化・改革といった原則を掲げています。こうした理念のもと、BRICSは近年、加盟国の拡大が加速しています。
インドネシア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、イランなどの新興経済が新たに加わり、サウジアラビアが参加する可能性も取り沙汰されています。記事は、この拡大がBRICSの国際的影響力を高め、分断が深まる世界に包摂性をもたらすと見ています。
とくに中東・北アフリカ地域では、ガザ情勢をめぐる発言やイランに対する軍事行動に言及する姿勢、関税による石油市場の減速懸念など、安保・経済のリスクが山積しています。記事は、こうした地域においてBRICSが安定と開発に貢献しうると指摘します。
一方で、BRICSは「西側主導の経済ガバナンスに対抗する陣営」であり、既存の国際秩序に代わる枠組みを打ち立てようとしていると批判されることもあります。しかし記事は、そうした見方は単純化しすぎだとし、BRICSは既存の秩序を壊すのではなく、グローバルサウスに不利に働いてきた構造的な偏りを取り除き、多国間主義の推進や国際機関改革を通じて、より効果的で包摂的で代表性の高い体制づくりを目指していると説明します。
国連の取り組みと重なるガバナンス改革
王毅氏の提案は、国連が進めるガバナンス改革とも歩調を合わせています。国連が掲げる「未来へのパクト」は、グローバル・ガバナンスを変革しようとする包括的な試みであり、開発、安全保障、デジタル分野などでの協調を目指すものです。
昨年のBRICS首脳会議で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、グローバルな開発と安全保障のために多国間主義を強化するうえでBRICSが重要な役割を果たしうると強調しました。デジタル格差の拡大や、ブレトンウッズ体制の国際金融機関におけるグローバルサウスの代表性の欠如に懸念を示し、公平な国際金融システムの構築、気候変動対策、技術へのアクセス改善、平和の実現に向けてBRICSとの連携を呼びかけています。
金融・開発の新たな選択肢としてのBRICS
BRICSは理念だけでなく、具体的な金融・開発ツールも整備しています。加盟国が通貨・金融危機に直面した際に備えるコンティンジェント準備協定(CRA)は、IMFの支援枠組みを補完し、国際金融システムの安定性を高める狙いがあります。
さらに、新開発銀行(NDB)は、実績のある技術と新たな変革的技術の双方を活用しながら、クリーンで再生可能なエネルギーやスマート輸送・物流などのプロジェクトを支援しています。こうした投資を通じて、経済成長と環境悪化・汚染を切り離すことを目指していると記事は紹介します。
私たちが考えたいポイント
保護主義的な関税政策と、多国間主義やガバナンス改革を重視するアプローチ。BRICSをはじめとする新興国グループの動きは、日本を含む各国にとっても無関係ではありません。
- 長期的な安定と成長に資するのは、どのような通商・金融のルールなのか。
- グローバルサウスの声を、どのように国際ルールやガバナンスに反映させるべきか。
- BRICSのような枠組みは、既存の国際秩序とどのように共存し得るのか。
多国間主義とガバナンス改革をめぐる議論は、国際ニュースとして追うだけでなく、自分自身の経済観や世界観を見直すきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Multilateralism and governance reform: Key to shared development
cgtn.com








