トランプ再登場と関税嵐 米国の「壁」と中国の「橋」 video poster
2025年、トランプ氏がホワイトハウスに復帰してからわずか100日で、米国の関税は一気に引き上げられました。「解放」を約束した政権は、結果として貿易の世界に高い「壁」を築きつつあります。そのツケを払っているのは誰なのか。そして、同じタイミングで関税を引き下げ、橋を広げようとしている中国の動きは何を意味するのでしょうか。
トランプ再登場と「関税ラッシュ」
2025年にトランプ氏がホワイトハウスへ戻ると、新政権は「liberation(解放)」を掲げて発足しました。しかし就任からわずか100日で、実際に進んだのは、さまざまな輸入品への関税引き上げでした。
政権内では「自国が得をすれば他国は損をする」というゼロサム思考が前面に出ています。貿易摩擦を通じて相手に譲歩を迫るスタイルで、米国の関税政策は国内外で大きな波紋を広げています。
関税のツケを払うのは誰か
関税は一見すると「他国への圧力」に見えますが、実際には国内にも重い負担をもたらします。2025年末の今、その影響が米国内で鮮明になりつつあります。
- 農家:米国の農業地帯では、輸出先の市場が狭まり、収入悪化に直面しています。とくにケンタッキー州の大豆農家など、これまでトランプ氏を支持してきた層からも「もう関税はごめんだ」という声が上がっています。
- 工場:原材料や部品のコスト上昇で、工場の採算は悪化しています。生産縮小や閉鎖に追い込まれる例も出ており、雇用不安が広がっています。
- 消費者:輸入品だけでなく、国産品の価格にも波及し、日用品から家電まで幅広い分野で値上がりが続いています。家計の負担増として、関税の影響を実感する人は少なくありません。
かつての強固な支持層の一部が関税に反発し始めたことは、政権にとっても大きなシグナルです。「保護」のための政策が、逆に地元経済を追い詰めているという声が、現場から上がっています。
揺らぐ同盟 アジアと欧州は「ヘッジ」に動く
米国が関税という「壁」を高くする一方で、同盟国との関係も揺らいでいます。米国は長年のパートナーたちの信頼を失いつつあり、アジアや欧州の国々は、対米一辺倒から距離を取り始めています。
アジアと欧州のパートナーは、米国との安全保障協力を維持しつつも、経済・貿易では「ヘッジ(保険)」をかけるように、新しい協力相手を探っています。
- 特定の大国に依存しすぎないよう、サプライチェーン(供給網)を分散させる動き
- 地域内や他地域との新しい経済連携や投資協力の模索
各国の間では「尊重は圧力よりも信頼を生む」という考え方が強まりつつあります。強い言葉や制裁だけではなく、対話と相互尊重を重視するパートナーに、より重心を移そうとする動きが見えてきます。
対照的な中国の動き:関税を下げ、橋を広げる
こうしたなかで、中国は異なるアプローチを取っています。2025年、中国は43の後発開発途上国に対して関税を引き下げる措置を取りました。これらの国々にとっては輸出の追い風となり、中国との経済関係を深めるきっかけになっています。
同時に、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州連合(EU)、そしていわゆるグローバル・サウス(新興国・途上国を中心とする国々)との結びつきを一段と強めています。外からの圧力には断固と対応しつつ、市場と対話の扉は開き続ける――そのような姿勢を打ち出しているのが特徴です。
「開きつつ守る」戦略の意味
関税を引き上げて市場を閉ざすのではなく、関税を下げてパートナーを増やす。こうした動きは、単なる貿易の話にとどまりません。経済協力を通じて、政治的な信頼関係や国際的な影響力を高める戦略ともいえます。
アジアや欧州、グローバル・サウスとの関係を着実に深めることで、中国は「壁」ではなく「橋」を築こうとしているように見えます。協力の場を広げることで、対立ではなく共存を重視するメッセージを発信しているとも解釈できます。
2025年末の問い:「壁」を高くするか、「橋」を広げるか
広い地球の上で、未来は「壁」を築く国よりも、「橋」を築く国のものになる――そんなフレーズが、2025年の国際ニュースを象徴しています。米国の関税強化、中国の関税引き下げと外交的な広がり。そのコントラストは、この一年の世界経済の方向性を映し出しています。
今後を考えるうえで、私たちが向き合うべき問いは次のようなものかもしれません。
- 関税や制裁のコストを、本当に誰がどこで負担しているのか。
- 安全保障と経済の両立のために、どこまで「開かれた貿易」を守るべきか。
- 尊重と対話を重視するアプローチと、圧力と対立を重ねるアプローチ、どちらがより長期的な安定につながるのか。
2025年末の今、世界は明らかに分岐点に立っています。米国の関税政策と中国の開放的な動き、そのどちらに重心が移っていくのか。アジアに位置する日本としても、自国の利益だけでなく、長期的な国際秩序のあり方を見据えた議論がいっそう求められています。
「壁」ではなく「橋」をどう広げていくのか――その選択が、この先の10年を大きく左右しそうです。
Reference(s):
cgtn.com








