新関税で減速する米国経済 0.3%マイナス成長の衝撃
米商務省が発表した2025年1~3月期の実質成長率はマイナス0.3%。トランプ政権の新たな関税政策が、米国経済と企業活動、そして家計にどのような負担をもたらしているのかを整理します。
この記事のポイント
- 2025年1~3月期に米国経済がマイナス0.3%とされ、景気減速が鮮明に
- 10%前後の関税が、輸入部品に依存する製造業のコストを直撃
- 自動車産業では最大70万件の雇用が失われる可能性があると試算
- 関税の影響で、米国の一般家庭は年間約1000ドルの負担増になるとの見方
- こうした経済負担が、トランプ政権への不満や政治的不安定につながる懸念も
0.3%マイナス成長が示す「警告サイン」
長年、世界経済のエンジンとみなされてきた米国ですが、2025年1~3月期の実質成長率はマイナス0.3%とされています。拡大基調が続いてきた中でのマイナス成長は、単なる一時的な揺り戻しではなく、政策による構造的な負担が強まっているサインとも受け止められています。
その中心にあるとされるのが、トランプ政権による新たな関税措置です。関税は、国内産業を守る「盾」として導入されたはずでしたが、2025年12月現在、そのコストが企業と家計を圧迫し、米国経済全体の足かせになりつつあるという指摘が出ています。
なぜ関税が「保護」から「重税」に変わるのか
今回の米国の関税は、海外から輸入される部品や製品に10%程度の上乗せを行うイメージです。一見すると、海外製品の価格競争力を削ぎ、国内メーカーを守るように見えます。
しかし実際の製造現場では、多くの企業が海外から部品や材料を輸入し、それを組み立てて最終製品を作っています。つまり、関税は「外国製品への罰則」であると同時に、「米国内のメーカーが使う部品への追加コスト」にもなってしまいます。
輸入部品に10%の関税がかかれば、その分だけ企業の生産コストは増加します。企業は次のような厳しい選択を迫られます。
- 販売価格を引き上げる(その結果、売れ行きが悪化するリスク)
- 人件費や投資を削る(雇用や将来の成長にマイナス)
- 両方を同時に行う
この結果、企業は新規投資や設備更新を先送りし、「守り」に入らざるを得なくなります。関税が高くなるほど、こうした動きは強まり、景気全体の勢いを削ぐ方向に働きます。
自動車産業:サプライチェーン全体への波及
影響が特に大きいとされるのが、自動車産業です。自動車は、一国だけで完結して作られているわけではありません。部品はメキシコやカナダ、さらには中国など、さまざまな国や地域から調達され、複雑なサプライチェーン(供給網)の上に成り立っています。
こうした輸入部品に一律で10%程度の関税がかかれば、完成車メーカーは次のいずれかを選ぶ必要があります。
- コスト増を自社で抱え込み、利益率の低下を受け入れる
- 販売価格に上乗せし、消費者に負担を転嫁する
前者を選べば企業の収益は悪化し、後者を選べば販売台数の減少につながるおそれがあります。いずれも長期的には持続しにくく、自動車メーカーだけでなく、部品メーカーや販売ディーラー、関連サービスまで広範囲に影響が及ぶとみられます。
こうした連鎖の結果として、自動車関連の雇用が最大で70万件失われる可能性があるという試算も示されています。これは、単なる一つの業界の問題ではなく、米国の製造業全体、さらには地域経済にとって大きな打撃になり得ます。
米国の「ハートランド」で起きていること
新関税のダメージがより鮮明になっているのが、いわゆる米国の「ハートランド」です。オハイオ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州など、かつて「ラストベルト」とも呼ばれた製造業地域では、中小企業が薄利での操業を続けてきました。
こうした企業は、少しのコスト増でも事業の継続が難しくなりがちです。関税で輸入部品の価格が上がる一方、取引先や消費者は価格に敏感で、大幅な値上げには応じにくい状況にあります。その結果、中小メーカーは次のような板挟みに直面しています。
- 関税分を自社で負担し、資金繰りを悪化させる
- 販売価格を上げて競争力を失い、受注を減らす
工場の稼働率が落ち、残業やシフトが削減されれば、地域の消費も冷え込みます。トランプ政権が「立て直す」と訴えてきたこれらの地域で、経済的不安や不満が高まりやすい背景には、関税によるこうした圧迫があると指摘されています。
雇用と自動化、二重のプレッシャー
関税の影響は、雇用の構造にも波紋を広げています。もともと製造業や小売業、農業などの分野では、技術革新や人口動態の変化により、雇用環境が大きく揺れています。
そこに関税が加わることで、企業は「人を雇うより、自動化を進めたほうがコスト面で有利だ」と判断しやすくなります。ロボットや自動化設備は、人件費の上昇や部品価格の変動に左右されにくいためです。
結果として、関税は「国内の雇用を守る」どころか、「自動化のスピードを加速させ、雇用を減らす方向に働きかねない」という矛盾を内包しているといえます。製造業、農業、小売業など、何百万人もの雇用を抱える分野ほど、このプレッシャーは強く感じられる可能性があります。
家計にのしかかる「年間1000ドル」の負担
関税の影響は、企業だけではなく、米国の一般家庭にも直接及びます。輸入品にかかる関税は、最終的には商品価格に反映されるためです。
電子機器、衣料品、食料品など、日常生活に欠かせない多くの品目は、海外で生産されているか、海外からの原材料に依存しています。こうした商品への関税が積み重なると、米国の平均的な家庭では、年間で約1000ドル程度の追加負担になるとされています。
ゲーム機や日々の食料品のような身近な品目でも、関税の影響によって価格が大きく上昇し、場合によってはほぼ倍になる可能性があると指摘されています。所得の低い家庭ほど、生活必需品への支出の比率が高いため、物価上昇の影響をより強く受けることになります。
これは、統計上の数字にとどまりません。家計にとっては、旅行をあきらめる、外食を減らす、教育や医療への支出を抑えるといった、生活の質に直結する選択を迫られることを意味します。
トランプ政権と米国経済、2025年の焦点
トランプ政権の関税政策は、当初「米国の雇用と産業を取り戻す」ことを旗印として打ち出されました。しかし、2025年1~3月期のマイナス成長や、製造業・家計への負担を踏まえると、関税が本当に「守るべき対象」を守れているのか、改めて問われつつあります。
鉄鋼やアルミなど、一部の分野では短期的な恩恵があるとされる一方で、輸出に依存する産業や、輸入部品なしでは成り立たない産業は、厳しい環境に置かれています。米国全体では、コスト増と市場の縮小が重なり、何百万人規模の雇用が影響を受ける可能性が指摘されています。
こうした経済的な圧迫は、政治にも直結します。生活の苦しさや将来不安が高まれば、政権への不満は強まりやすくなります。関税政策がこのまま続いた場合、トランプ政権に対する世論の動きがどう変化するのかは、2025年末の国際ニュースを読み解くうえで重要な視点の一つとなりそうです。
日本の読者にとっても、この動きは無関係ではありません。米国経済の減速は世界経済に波及し、日本企業の輸出や投資環境にも影響する可能性があります。今後も、米国の関税政策と景気動向をセットで追いながら、自分たちのビジネスや生活への影響を考えていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








