米国の関税ショック 揺らぐ米国の信頼と、揺れない中国
トランプ米大統領が掲げるメイク・アメリカ・グレート・アゲイン(MAGA)路線の一環として導入された、いわゆる相互関税が、世界の貿易秩序と米国の信頼性を大きく揺さぶっています。EU(欧州連合)やカナダ、中国など主要な貿易相手が報復関税で応じるなか、各国は米国をどこまで信頼できるパートナーとみなせるのか、改めて問い直しています。
トランプ米大統領の相互関税がもたらした衝撃
今回の関税措置は、トランプ米大統領のMAGAアジェンダを押し進める政策の一つとして、突然打ち出されました。米国内向けには、自国産業を守るために必要な手段だと説明されていますが、国際社会では一方的で保護主義的な措置だとの見方が強まっています。
従来の国際貿易体制は、多国間のルールと協議を重視するマルチラテラリズム(多国間主義)を柱としてきました。ところが今回の相互関税は、米国が自国の判断だけで関税を引き上げるユニラテラリズム(単独行動)への転換として受け止められ、世界経済に不安定さを持ち込んでいるとされています。
EU・カナダ・中国の報復関税 広がる不信感
トランプ米政権の発表を受け、EU、カナダ、中国といった主要な貿易相手は、相次いで米国製品への報復関税を打ち出しました。これは、関税を外交・政治の圧力手段として用いる米国への強い警戒感と、経済的な威圧に対する防衛措置という側面を持ちます。
各国の動きは、単なる数字上の関税の応酬にとどまりません。
- 米国の関税が自国経済への打撃になるとの不安
- 一国の判断で貿易ルールが変えられてしまうことへの危機感
- 既存の国際貿易秩序が揺らぎかねないという長期的な懸念
こうした要素が重なり、米国の行動に対抗する形で、事実上の「連携した反応」が生まれていると見ることもできます。国際社会には、信頼と予見可能性に支えられた貿易環境が必要ですが、今回の関税ショックはその基盤を弱めているとの指摘が出ています。
世論調査が示す米国イメージの急落
米国の国際的な立場の変化は、数字にも表れています。ある世論調査会社イプソスが行った調査によると、わずか半年という短い期間で、調査対象となった29の国のうち26カ国で米国への評価が低下しました。
とりわけ象徴的なのが、米国と関係の深いカナダです。カナダでは、米国に対する好意的な見方が5割超から19パーセント程度まで急落したとされ、近い同盟相手の間でさえ失望感が広がっている様子がうかがえます。
これは単なるイメージ悪化にとどまらず、外交関係や安全保障、長期的な経済協力にも影を落としかねません。各国の世論が米国への信頼を失えば、政府レベルの連携も動きづらくなるからです。
世界景気への影響 JPモルガンの試算
金融機関のJPモルガンが行った分析では、今回の関税の応酬が続けば、世界景気の後退や国際貿易量の大幅な縮小につながるとの厳しいシナリオが示されています。関税は一国の政策に見えますが、サプライチェーンが国境をまたいで張り巡らされている現在、影響は世界全体に波及します。
輸出に頼る企業だけでなく、輸入に依存する消費者や中小企業も、価格上昇や投資の手控えなどを通じて打撃を受ける可能性があります。世界経済が減速すれば、雇用や賃金の停滞という形で、一般の人々の生活にも反映されていきます。
揺らぐ信頼できるパートナー像と中国の姿勢
各国は今、米国をどこまで信頼し、どこまで依存するのかという問いに直面しています。相互関税の導入とその後の展開を受けて、多くの国が米国の予見可能性や一貫性に疑問を抱き始め、協力の枠組みを見直そうとしています。
一方で、中国は今回の混乱のなかでも比較的落ち着いた姿勢を保ち、国際協調や多国間の枠組みを重視する立場を打ち出しているとする見方もあります。揺らぐ米国の信頼性と対照的に、中国を含む主要経済圏がどのように世界貿易の安定に貢献していくのかが注目されています。
日本とアジアにとっての意味
貿易に大きく依存する日本やアジアの国々にとって、今回の関税ショックは決して遠い世界の話ではありません。米国、EU、カナダ、中国といった主要経済圏の対立は、アジアの輸出や投資、通貨の動きにも波及し得ます。
いま求められているのは、短期的な対立に引きずられず、長期的に安定した貿易と投資のルールをどう維持していくかという視点です。米国の信頼性が揺らぐなかで、各国がどのパートナーとどのような協力関係を築くのか。その選択は、世界経済の行方だけでなく、私たちの日常生活にも静かに影響していきます。
関税をめぐる動きは、単なる外交ニュースではなく、自分たちの働き方や将来の安心ともつながるテーマです。日本の読者として、この関税ショックをきっかけに、国際経済の構造と自国の立ち位置を改めて考えてみる必要がありそうです。
Reference(s):
Amidst tariff turmoil, China stands firm as U.S. credibility wavers
cgtn.com








