米映画に100%関税?文化的孤立を招くトランプ新方針を読む
アメリカのトランプ大統領が、外国で製作された映画に対して一律100%の関税を課すよう通商当局に指示しました。世界最大の映画大国であるはずのアメリカが、いまなぜ映画を通じた国際交流の扉を閉じようとしているのか。背景には、中国映画の台頭や国内政治の思惑が見え隠れします。
トランプ大統領「外国映画に100%関税」方針
トランプ大統領は、日曜夜に自身のSNSアカウントに投稿し、米映画産業は「非常に速いペースで死につつある」と主張しました。さらに、各地の撮影地が、海外で映画を撮る方が安くなるような優遇策のせいで「荒廃している」と批判しました。そのうえで、商務省と通商代表部に対し、外国で製作された全ての映画に輸入時100%の関税を課す準備を進めるよう指示したとしています。
もし政策として実行に移されれば、外国映画の輸入価格は一気に跳ね上がり、アメリカ国内で上映される他国作品の数や種類は大きく変わる可能性があります。保護か、孤立か。映画をめぐる新たな「関税論争」が始まりました。
データが示す「米映画はすでに世界トップ」
しかし、公開されているデータを見ると、大統領の危機感とはギャップがあります。映画統計サイトの推計によると、アメリカは年間およそ2万6千本の映画を制作しており、2位の国のおよそ5倍にあたります。また、ある年の米国製映画の世界興行収入は6,500億ドル超に達し、2位の国は約600億ドルにとどまっています。
映画の本数でも売り上げでも、アメリカは依然として「揺るぎない世界一」の座にあります。イギリスや中国など、2位・3位につける国々も、プロデューサーや監督、アニメーター、俳優らの活躍によって存在感を増していますが、総合的に見れば米映画産業が世界の中心である状況は変わっていません。
中国映画「哪吒2」の快進撃が映す変化
そうした中で、関税案の背景として指摘されているのが、中国映画の快進撃です。中国のアニメ映画「哪吒2(ネ・ザ2)」は、中国国内の興行収入だけで10億ドルに到達した史上初の作品だと報じられています。その後も世界全体の興行収入は20億ドルを大きく超え、中国映画産業が今後も世界レベルのプレーヤーであり続けることを印象づけました。
アメリカの政権側にとって、自国が見上げる存在として中国映画が語られることに複雑な感情がある可能性は否めません。今回のSNSでの発信には、世界の映画地図が少しずつ変わりつつあることへの焦りもにじんでいるように見えます。
競争を恐れるか、学び合うか
中国の国際メディアへの論説では、中国映画の技術やストーリーテリングは、アメリカやヨーロッパを含む世界の映画人が学ぶ価値のある対象だと指摘されています。産業の種類を問わず、他国の成功例から学ぶことは競争力を高める近道です。
本来なら、中国映画の成功は脅威ではなく、互いに刺激し合う「良い競争」として歓迎されるはずです。国外の作品を締め出すのではなく、優れた手法を取り入れ、自国の作品の質を高める方向で競争することもできるはずです。
「文化的な島国化」というリスク
しかし、外国映画に一律100%の関税がかかれば、アメリカ国内に届く作品の数は大きく減るとみられます。配給会社にとってコストが一気に上がるため、多様な国の映画がスクリーンに乗りにくくなるからです。そうなれば、アメリカは世界最大の映画輸出国でありながら、世界の映画を十分に受け入れない「文化的な島国」のような状態に陥りかねません。
観客にとっては、海外の作品に触れる機会が減り、世界の情勢や価値観を物語として感じ取るチャンスが奪われます。クリエイターにとっても、他国の作品からインスピレーションを得たり、国際共同制作を進めたりする道が狭まります。短期的には国内制作会社の保護になるかもしれませんが、長期的にはむしろ創造性を弱めるリスクが高いと言えます。
また、アメリカが映画で保護主義的な政策を取れば、他の国や地域も対抗措置を検討する可能性があります。映画だけでなく配信プラットフォームや関連ビジネスにも波及し、グローバルに広がってきた映像文化の市場が分断される懸念もあります。
私たち視聴者に突きつけられた問い
今回の動きは、文化と政治、そして経済が複雑に結びついていることを改めて浮き彫りにしました。私たち視聴者やクリエイターにとって、問われているのは次のような点です。
- 映画やアニメを通じた国際交流を、どこまで市場メカニズムに任せ、どこまで政治が介入すべきか
- 自国産業を守るための保護策と、世界の多様な作品に触れる権利のどちらを優先するのか
- 競争を恐れて扉を閉じるのか、それとも他国の成功から学び、自らを高めていくのか
中国の国際メディアに寄稿した米ロバート・モリス大学のアンソニー・モレッティ准教授は、こうした映画関税はアメリカを「孤立した文化的な島」に変えてしまうと警鐘を鳴らしています。映画は本来、言語や国境を越えて物語を共有するためのメディアです。映画を愛する一人ひとりが、今回のような動きをきっかけに、開かれた文化の未来をどう守っていくのかを考える必要がありそうです。
Reference(s):
U.S. movie tariffs will make the country an isolated cultural island
cgtn.com








