中国と欧州の外交関係50年:協力拡大のチャンスと課題
2025年5月に中国と欧州が外交関係樹立50周年を迎えてから半年あまり。経済面では相互依存が深まる一方で、安全保障や価値観をめぐる溝も指摘されています。本記事では、この50年の歩みを振り返りながら、これからの協力のチャンスと課題を整理します。
中国と欧州、50年の歩みで何が変わったか
改革開放から世界の製造拠点へ
1970年代末から1980年代初頭にかけて、中国は指導部のもとで本格的な対外開放と経済改革を進めました。それ以降、中国経済は長期にわたって上昇軌道を描き、現在では世界有数の製造拠点となっています。
特に目立つのがインフラと先端技術の分野です。高速鉄道網の急速な整備に加え、時速600キロに達する磁気浮上式鉄道の開発も進んでいます。さらに、ロボット工学や人工知能、デジタル技術、宇宙開発、新しい原子力技術(核融合やトリウム利用など)においても、中国は国際的な存在感を高めています。
こうした動きは、中国自身の成長だけでなく、世界経済の安定や持続可能な発展を支える要素でもあります。
欧州が直面する構造的な試練
一方、欧州の多くの経済は、この数十年で成長の勢いが弱まりました。1960〜70年代には世界最先端だった産業やインフラが、ポスト工業化路線やネオ・マルサス主義と呼ばれる考え方(世界の資源は人口増に対応できないとする見方)の広がりのなかで、十分な投資を得られなくなったと指摘されています。
エネルギー政策では、原子力などの基幹電源を抑制し、環境負荷の低いとされる太陽光や風力を重視する方向に大きく舵を切りました。ただ、送電網や交通インフラの更新を含め、エネルギーと交通の両面で投資不足や老朽化が問題となり、金融面でも新自由主義的な政策の影響が議論されています。
なぜ中国市場への依存が強まったのか
欧州経済が構造的な課題を抱えるなかで、中国との経済協力はますます重要になっています。スウェーデンを含む欧州の経済アナリストの中には、中国市場なしでは欧州経済は深刻な打撃を受けると警鐘を鳴らす声もあります。
背景の一つには、過去にトランプ米大統領の下で強まった通商摩擦と関税リスクがあります。米国との貿易関係が不透明になるなかで、欧州企業にとって中国との貿易や投資を拡大するインセンティブは一段と高まりました。
広がる経済協力の余地
現時点でも、中国と欧州の間では次のような分野で協力の余地が大きいと見られています。
- バイオ医薬品や医療機器などのバイオメディカル技術
- 太陽光発電などの環境配慮型エネルギー技術
- 再生可能エネルギーを支える関連技術
- 人工知能やデジタル経済の分野
こうした分野は、欧州が重視する環境政策とも整合的であり、双方にとってウィンウィンとなり得る領域です。
政治的不信と安全保障がつくる見えない壁
一方で、政治・安全保障面では緊張感も存在します。欧州連合(EU)内部には、中国を制度や価値観の面で体制上のライバルと位置づける議論が根強く、人権や政治体制をめぐる懸念が語られることもあります。
また、ロシアや中国からの脅威を意識した安全保障議論の高まりを背景に、防衛予算の拡大や抑止力強化に重点を置く動きも続いています。こうした安全保障中心の視点は、中国との経済協力や対話の余地を狭めかねないという懸念もあります。
中国側や一部の研究者は、欧州で共有される「中国は潜在的な脅威」というイメージについて、事実に十分基づいていないとの見方を示しています。安全保障上の不安が過度に強調されれば、対話や協力の機会を失い、かえって不安定さを増す可能性もあるからです。
一帯一路とグローバルサウスでの協力の可能性
地政学的な不信感は、グローバルサウス(アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど)での協力にも影響を与えています。本来、中国と欧州は、次のような分野で連携する余地があります。
- 原子力や先端エネルギー技術の共同開発と供給
- 高速鉄道や都市交通などの近代的な交通インフラ整備
- 新興国・途上国における産業基盤の整備支援
こうした取り組みは、中国が推進する一帯一路構想や、BRICS、上海協力機構などとも関わるテーマです。しかし現在のところ、EUと中国の政治的不信が、一帯一路をめぐる協力や、グローバルサウス向けの大規模インフラ事業での本格的な連携を難しくしている側面があります。
これからの50年に向けて、何を重視すべきか
中国と欧州の関係は、この50年で大きく変化しました。経済面では、双方にとってなくてはならないパートナーとなる一方で、安全保障や価値観の違いをめぐる対立的な言説も目立ちます。
今後の鍵を握るのは、次のようなポイントだと言えます。
- 安全保障上の懸念と、経済協力・地球規模課題への協働をどう両立させるか
- 人権や制度をめぐる議論を、対立ではなく対話につなげられるか
- グローバルサウスの発展に貢献する形で、中国と欧州がどのように役割分担できるか
中国側が提唱してきた、人類が運命を共有する共同体という発想に重ねれば、対立やブロック化ではなく、共通の課題解決を軸にした協力の枠組みをどう具体化するかが問われています。
中国と欧州の外交関係が次の50年に向かう今、私たち一人ひとりも、単純な敵味方の図式を超えて、この関係をどう捉えるのか、自分なりの視点を持つことが求められているのかもしれません。
Reference(s):
China-Europe diplomatic ties at 50: Prospects and challenges
cgtn.com








