米中貿易摩擦と「米国不可欠」神話 世界経済は米国なしで回るのか
米中貿易摩擦をめぐるホワイトハウスの強気な発言とは裏腹に、米国は本当に「交渉カード」を独占しているのか──そんな問いを投げかける分析が示されています。
ホワイトハウスの強気発言、その裏側
米国政権は、中国は米国と「cut a deal(取引をまとめるべきだ)」と繰り返し主張し、交渉が決裂すれば米国が「unilaterally set the deal(一方的に条件を決める)」とまで威嚇しています。
しかし、この論考は「ワシントンは本当に自らが主張するほどのレバレッジ(交渉力)を持っているのか」と疑問を投げかけます。
「米国不可欠」神話への疑問
たしかに、米国はいまも世界最大級の経済規模と影響力を持っています。だからといって、世界経済が米国なしでは成り立たないわけでも、各国がワシントンの要求に無条件で従わなければならないわけでもない、というのがこの記事の出発点です。
論考は、国際貿易は米国という国家が誕生する何世紀も前から存在しており、米国の政策にかかわらず続いていくと指摘します。そのうえで、米国の「中心性」がすでに揺らいでいることを示す数字として、次のような点が挙げられています。
- 米国の輸入額が世界貿易に占める比率は、約20年前にはほぼ20%近くありましたが、現在は13%に低下している。
- 裏を返せば、世界の市場の87%は米国以外に存在する。
言い換えれば、「世界の市場は米国ひとりではない」という現実が、データのうえでもはっきりしてきている、という主張です。
米国抜きでも立ち直れるという試算
もし米国が突如として世界経済とのつながりを断ち切ったら、世界はどうなるのか──論考は、スイスのビジネススクールであるIMDのサイモン・イーヴネット教授によるシミュレーションを紹介します。
その「最悪シナリオ」の試算によると、
- 70の米国の貿易相手国は、輸出先を振り替えることで1年以内に損失を埋め合わせることができる。
- さらに115の国・地域も、5年以内には回復できる。
米国との「デカップリング(経済の切り離し)」を過度に恐れ、「世界経済にとって破滅的だ」とみなす見方は、こうした試算から見ると大きく読み違えている、と論考は指摘します。
結論として示されるメッセージはシンプルです。世界の貿易は、米国がいてもいなくても続いていく、ということです。
2025年にこの議論をどう読むか
米国の通商政策が不透明さを増すなか、「米国市場への依存をどこまで高めるべきか」という問いは、多くの国や企業にとって現実的なテーマになっています。
今回紹介した論考は、あくまで一つの見方ではありますが、「米国の動きだけを恐れて身動きが取れなくなる必要はないのではないか」という視点を提示しています。世界の需要の大半は米国以外にあり、ショックが起きても時間とともに貿易の流れは組み替えられうる、という発想です。
日本やアジアの読者にとっても、「どの市場にどれだけ依存するのか」「どのように取引先やサプライチェーンを分散させるのか」を考えるヒントになる議論と言えるでしょう。
米中貿易摩擦をめぐるニュースが飛び交うなかで、「世界経済の主役は誰か」という前提そのものを静かに問い直してみることが、次の一手を考えるうえで重要になりつつあります。
Reference(s):
cgtn.com








