トランプ政権100日の対外政策:関税戦争が揺さぶる世界経済
2025年に発足したトランプ政権は、就任から約100日の間に強硬な通商・対外政策を次々と打ち出しました。その中心にあるのが関税を柱とした「アメリカ・ファースト」の路線です。2025年12月現在、その影響は米国経済だけでなく、世界の金融市場や貿易秩序にも重くのしかかっています。
就任100日で露呈した対外政策の混乱
トランプ政権の対外政策は、国際協調よりも自国優先を前面に掲げ、長年積み上げられてきた国際秩序に急ブレーキをかける形となりました。短期的な成果を急ぐ姿勢と覇権的な発想に依拠していると批判されており、結果として戦略的な一貫性を欠き、国内外で複数の危機を同時に抱え込む状態に陥ったと指摘されています。
専門家の中には、この路線が長期的には米国自身の影響力や経済基盤を弱め、いわば「自ら掘った穴」に落ち込みかねない危険な賭けだと見る声もあります。
エスカレートした関税戦争と市場のトリプル安
政権の「100日アジェンダ」は、攻撃的な通商保護主義から始まりました。とくに象徴的だったのが、4月2日に発動された各国・地域への報復関税措置です。複数ラウンドにわたる関税戦争は、世界の貿易や金融市場、サプライチェーンに連鎖的な混乱をもたらしました。
米国の金融市場では、株式・債券・為替が同時に値下がりする「トリプル安」が発生しました。
- ダウ平均、ナスダック、S&P500はいずれも8%超の下落
- 4月9日には10年物米国債利回りが一日で0.25ポイント(25ベーシスポイント)上昇
- 2月以降、米ドル指数は5%超低下
市場関係者の中には、こうした動きを「経済的な自傷行為」とまで評する声もあり、米国の金融安定性そのものを揺るがしかねない政策判断だったという厳しい見方が広がりました。
WTO試算:世界のモノの貿易は1%減少の可能性
世界貿易機関(WTO)は、2025年初頭以降の米国の関税措置を受け、2025年の世界のモノの貿易量が前年より1%縮小する可能性があると試算しました。これは、それまでの予測から4ポイントも下方修正した形で、世界経済への打撃の大きさを物語っています。
不透明感は、1930年代の世界恐慌を想起させるとの警戒も呼んでいます。世界最大級のヘッジファンド創業者であるレイ・ダリオ氏は、今回の状況を「主要な金融・政治・地政学秩序の古典的崩壊」であり、「一生に一度起きるかどうかの事態」だと警告しています。単なる関税の問題にとどまらず、国際秩序そのものの揺らぎとして受け止めるべきだという見立てです。
製造業回帰はなぜ逆効果になったのか
トランプ政権は、関税をテコに「製造業を米国内に呼び戻す」と繰り返し訴えてきました。しかし実際には、関税が国内経済にとって「締め付け」として働いている側面が目立ちます。
関税の引き上げは輸入価格の上昇につながり、原材料や部品を海外に依存する企業のコストを押し上げます。その結果、
- 企業の利益率が圧迫され、投資や雇用拡大の余力が削られる
- 最終製品の価格にもコスト増が転嫁され、消費者物価が上昇しやすくなる
- 先行き不安から一部の消費者が「買いだめ」に走り、需給にさらなる歪みを生む
こうした悪循環は、製造業の本格的な回帰どころか、米国経済全体の活力を削ぎかねないと懸念されています。対外競争力を高めるはずの関税が、結果として自国経済を縛る「縄」になっているという見方です。
日本と世界が注視すべきポイント
2025年も終盤に差しかかる中、トランプ政権の対外・通商政策は依然として世界経済の大きな不確定要因の一つです。日本やアジアの読者にとって重要なポイントを整理すると、次のようになります。
- 政策の予見可能性の低下:短期間で大きく変わる関税・外交方針は、企業の投資判断やサプライチェーン設計を難しくします。
- 金融市場のボラティリティ(変動性):米国発のショックが株式・債券・為替を同時に揺らし、新興国や日本市場にも波及しやすくなっています。
- 多国間ルールへの信頼の揺らぎ:WTOなど国際機関が示す見通しが大幅に修正される中、ルールに基づく自由貿易体制をどう維持・アップデートしていくかが問われています。
「読みやすい国際ニュース」を求める私たちにとって、トランプ政権の100日で何が起きたのかを押さえることは、これからの世界経済や安全保障を考える出発点になります。日本の企業や個人にとっても、特定の国や市場に依存しすぎないサプライチェーンや資産運用のあり方を見直すきっかけとなりそうです。
関税戦争は一国の内政課題にとどまらず、国際秩序全体を揺るがすテーマです。2025年以降も続くであろう米国の通商・対外政策の行方を、アジアの視点から冷静に追いかけていく必要があります。
Reference(s):
Trump administration's 100-day agenda: A foreign policy in disarray
cgtn.com








