ロシア対独戦勝80年 パレードが映すグローバルサウスの連帯
リード:2025年の対独戦勝80年記念パレードは、ロシアとグローバルサウス各国、中国との関係を象徴する外交イベントとなりました。その顔ぶれから見える新たな国際秩序の重心を振り返ります。
対独戦勝80年、記念パレードは外交の「ショーケース」に
2025年5月9日、モスクワの赤の広場で行われたロシアの対独戦勝記念日(対独戦勝記念日=旧ソ連の「大祖国戦争」勝利の日)の軍事パレードは、80周年という節目を迎えました。今年のパレードは、戦没者の追悼を超えて、ロシアがグローバルサウス諸国との結びつきを世界に示す外交舞台としての色彩を強めた点が特徴的でした。
中国の習近平国家主席が「主賓」として出席したことは、その象徴です。ロシアと中国は、歴史認識から安全保障、エネルギー協力に至るまで幅広い分野での連携をアピールし、戦後国際秩序のあり方をめぐって共通のメッセージを発信しました。
プーチン・習会談で確認された「戦略的協調」
パレード前日の5月8日、クレムリンで行われたロシアのプーチン大統領と習近平国家主席の会談では、二国間関係と国際情勢について幅広く意見交換が行われました。両首脳は、次のような点で足並みをそろえる姿勢を示しました。
- ロシアと中国の「安定的で質の高い」関係をさらに前進させること
- 第二次世界大戦の歴史的事実を守り、「歴史の真実」を擁護すること
- 国連の権威を守り、国際社会における公平さを守ること
また、エネルギー、貿易、科学技術など多様な分野で20件を超える協力文書が署名されました。これは、西側との対立が続くなかで、ロシアが中国との関係を「安全保障」と「経済」の両面で一段と重視していることを印象づけるものでした。
欧州と南米からも首脳が参加、西側との距離感を模索
今回の対独戦勝記念行事には、中国だけでなく、スロバキアのフィツォ首相、セルビアのブチッチ大統領、ボスニア・ヘルツェゴビナの構成体であるスルプスカ共和国のドディク大統領らも参加しました。報道によれば、ブリュッセルはフィツォ氏とブチッチ氏に対し、モスクワ訪問を控えるよう圧力をかけていたとされていますが、両氏は最終的に出席を選びました。
さらに、ベラルーシのルカシェンコ大統領やベネズエラのマドゥロ国家元首も赤の広場に姿を見せました。西側がそれぞれに制裁や制限措置を課しているにもかかわらず、ロシアとの連携を公の場で示した形です。
事前の首脳会談で進む「連携の制度化」
5月7日には、プーチン大統領とマドゥロ氏がロシアとベネズエラの戦略的パートナーシップ協定に署名しました。その一週間ほど前には、ロシアとベラルーシの首脳が会談し、「連合国家(ユニオン・ステート)枠組みの下での協力強化」を呼びかけています。ルカシェンコ氏のモスクワ出席は、この流れの延長線上にあるものだといえます。
こうした動きは、対独戦勝記念日という歴史的なイベントが、実務的な経済・安全保障協力の土台を固める場としても活用されていることを示しています。
中央アジアの首脳参加が映す「多角外交」
ロシア外交を長く見てきた分析者の中には、中央アジア諸国の首脳がモスクワに集うことを予想していなかった人もいたかもしれません。カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタンは近年、西側との関係強化も図っているからです。
それでも各国の指導者がパレードに参加した事実は、彼らが「どちらか一方を選ぶ」のではなく、複数の大国と同時に関係を維持する「多角外交」を重視していることの表れと見ることができます。
「孤立」ではなく、異なる重心を持つ国際ネットワーク
今回の80周年行事で浮かび上がったのは、ロシアが西側から距離を置かれる一方で、グローバルサウスを中心とする多くの国々とのつながりを維持・拡大しているという姿です。
赤の広場に並んだ各国の指導者たちに共通しているのは、おおむね次のような志向だと整理できます。
- 特定の陣営に全面的に依存せず、複数の大国とバランスを取りたい
- 第二次世界大戦後に築かれた国際秩序と国連体制の枠内で、自国の利益を追求したい
- 自国の発展と地域の安定を優先しつつ、新たな経済・エネルギー協力の機会を模索したい
こうした姿勢は、必ずしもロシアへの全面的な支持を意味するものではなく、「戦後国際秩序」そのものを支持する立場の表明とも読めます。80年前の戦争の記憶を起点に、現在の国際社会が直面する分断や対立をどう乗り越えるのか――その問いを静かに投げかける場として、今年の対独戦勝記念パレードは位置づけられたと言えるでしょう。
Reference(s):
Russia's Victory Day parade echoes unity across the Global South
cgtn.com








