米中が関税一時停止 ジュネーブ共同声明は第一歩
2025年5月12日、スイスのジュネーブで発表された米中の共同声明は、関税をめぐる緊張をいったん和らげ、世界の政府や市場、企業に小さな安堵をもたらしました。ただし、これは出発点に過ぎず、持続的な安定に向けてはまだ多くの課題が残っています。
ジュネーブ共同声明の中身:90日間の関税引き下げ
共同声明によると、中国とアメリカは、双方が課してきた関税水準を90日間引き下げることで合意しました。発表までには、2日間にわたる集中的な協議が行われ、中国側からはHe Lifeng副首相、アメリカ側からはスコット・ベッセント財務長官とジェイミソン・グリアー通商代表が参加しました。
声明には、今後も協議を続けるための仕組みを整えることも盛り込まれています。具体的には、He Lifeng副首相とベッセント財務長官、グリアー通商代表の間で対話を継続する枠組みが設けられ、90日後の関税の在り方についても協議が続けられる見通しです。
世界経済に広がる安心感とIMFの警告
この米中共同声明を受けて、各国政府や国際市場、グローバル企業は一時的に胸をなで下ろしています。高関税の応酬が続けば、世界貿易のコストが上昇し、サプライチェーンが混乱する懸念があったためです。
しかし、国際通貨基金(IMF)は2025年4月下旬、すでに関税の急激な引き上げが「新たな時代」の始まりだと警告していました。IMFは2025年の世界経済の成長率見通しを、それまでの3.3%から2.8%へと引き下げています。この下方修正幅は、2022年にロシアとウクライナの紛争が始まった直後の見通し引き下げよりも大きいとされています。
つまり、今回の米中共同声明がもたらす安心感は現実のものですが、それだけで世界経済の減速懸念が解消されたわけではありません。関税問題が長期化すれば、成長鈍化のリスクは引き続き意識されます。
マレーシアが示すアジア経済の不安
アジアの輸出志向経済にとって、米中の関税と貿易摩擦は他人事ではありません。マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は以前から、米中間の緊張が自国の成長軌道を狂わせかねないと警鐘を鳴らしてきました。
マレーシアは国際貿易への依存度が高く、グローバルな需要や投資の変化に敏感です。アンワル首相は「中国に高い関税が課されれば、わが国の対中貿易と投資の流れは避けがたく影響を受ける」と述べ、米中関係の行方が自国経済の行方にも直結していると強調しました。
同様の構図は、東アジアや東南アジアの多くの国や地域にも当てはまります。米中という世界最大級の経済が対立すれば、その波紋は輸出産業から雇用、さらには家計の物価にまで広がりかねません。
共同声明は「土台」にすぎない:これからの焦点
今回の共同声明は、米中が対話のチャンネルを維持し、関税の応酬を一時停止するという意味で重要な一歩です。とくに、「交渉を続けるための仕組み」をつくったことは、予測可能性を高める上でプラス材料だと言えます。
一方で、90日間という期限付きの関税引き下げは、時間の余裕が大きくないことも示しています。交渉の場では、例えば次のような論点が改めて問われることになりそうです。
- 90日後に関税をどうするのかという出口戦略
- 特定の産業や分野に偏らない、公平で透明なルールづくり
- 予期せぬ摩擦が起きた際にエスカレーションを避けるための対話メカニズム
- 他の国や地域の成長を損なわない形での米中協力のあり方
これらは、合意文書の一行で解決できる問題ではありません。それでも、今回の共同声明は、少なくとも対話を続ける意思が両国にあることを示すシグナルとして受け止められています。
私たちの日常とどうつながるのか
米中関係や関税の話は、一見すると遠い世界の出来事のように感じられるかもしれません。しかし、その影響は次のような形で私たちの生活にも及びます。
- 輸入品や電子機器、自動車などの価格変動
- 企業業績や株価、年金運用を通じた資産への影響
- アジアのサプライチェーンを通じた雇用と投資の変化
国際ニュースを追うことは、こうした変化の「予兆」をつかむことにもつながります。今回の米中共同声明は、世界経済の不安を和らげる重要なニュースであると同時に、「対立か協調か」という問いを改めて私たちに投げかけています。
90日後、その次の一歩がどの方向に進むのか。引き続き、冷静に情報を追いながら、自分なりの視点を持っていくことが求められています。
Reference(s):
China-U.S. joint statement a good foundation, more needs to be done
cgtn.com








