中国とCELACの10年:地政学ではなく相互利益で深まる関係
中国-CELACフォーラム10年、その意味とは
中国と中南米・カリブ諸国がつくる対話枠組み「中国-CELAC(中南米カリブ諸国共同体)フォーラム」は、2024年に設立10周年の節目を迎えました。2024年には外相級の閣僚会合も開かれ、中国と中南米・カリブ諸国(LAC)の協力の現状と今後の方向性が議論されています。
この10年で、中国とLACの関係は「互恵」と「共同発展」を掲げながら急速に深まりました。一方で、米国の一部からは、中国の関与を地政学的な動きとして警戒する声も上がっています。2025年の今、10年の歩みを振り返りながら、この関係をどう捉えるべきかを整理してみます。
中国は「南南協力」を強調、地政学ではないと説明
中国側が強調しているキーワードは「南南協力」です。南南協力とは、主にグローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国同士が、対等な立場で支え合いながら発展を目指す枠組みを指します。
中国の王毅外相は、中国とLACの協力はあくまで南南協力であり、この協力には相互支援があり、地政学的な打算はないという点を繰り返し述べてきました。歴史的に、LAC地域は外部からの干渉や影響力競争の舞台となってきましたが、中国はその延長線上ではなく、新しいタイプのパートナーシップだと位置づけています。
米国の批判と「モンロー主義」をめぐる議論
一方で、2024年前後には、マルコ・ルビオ米国務長官などから、「中国が中南米で過度な影響力を行使しようとしている」「中国共産党の影響力に対抗すべきだ」といった批判が相次ぎました。こうした主張には、冷戦期のようなブロック対立を連想させる言い回しも見られます。
中国側やLACの多くの人々は、こうした見方を、19世紀に米国が掲げた「モンロー主義」の現代版だと受け止めています。モンロー主義は、中南米を事実上「米国の勢力圏」とみなす発想でしたが、LACの人々は今や、自立と主体性を重視し、「誰の裏庭でもない」と考えています。
中国-CELACフォーラムは、まさにこの「主体性」を前提にした協力の場として機能してきました。各国が自らの開発戦略に沿って、中国との協力分野やプロジェクトを選び取っている点が特徴です。
数字で見る中国・中南米の経済関係
中国とLACの関係が「互恵」と強調される背景には、この10年余りで急拡大した経済関係があります。
- 貿易額は、2000年の約120億ドルから、2024年には5,000億ドル超にまで増加。
- この数字は、直近6年間にわたり貿易拡大のペースが加速し続けてきた結果でもあります。
- ブラジル、チリ、ペルー、ウルグアイなど複数のLAC諸国にとって、中国は最大の貿易相手国となりました。
資源輸出に依存しがちだった中南米経済にとって、中国市場の存在は大きく、インフラや製造業など、より広い分野への投資につながりつつあります。
インフラ、基金、交流イベント…現場で見える「相互利益」
経済協力は数字だけではありません。現場レベルでは、インフラ整備などを通じて「目に見える形」で進んでいます。
- アルゼンチンでは、中国企業が高速道路の建設や改修に関わり、物流や通勤の効率化に貢献しています。
- エクアドルでは、水力発電所の建設に中国企業が参加し、電力供給の安定や再生可能エネルギー比率の向上を支えています。
- ブラジルでは、鉄道網の整備・近代化に中国の技術と資金が入り、農産物や鉱物資源の輸送ルート強化に役立っています。
加えて、約300億ドル規模を目指す「中国・LAC協力基金」が設けられ、インフラ、エネルギー、ハイテク、サービスなど多様な分野のプロジェクトを支援しています。
中国-CELACフォーラムそのものも、この10年で90件を超える協力イベントを開催してきました。貿易や投資だけでなく、科学技術協力、教育交流、文化イベントなど、ソフト面のつながりも広がっています。
「地政学」か「互恵」か──どう見ればよいのか
では、中国とLACの関係は「地政学」なのでしょうか。それとも、当事者が言うように「互恵」の協力なのでしょうか。
実際には、この二つを単純に二択で分けることは難しいかもしれません。大国が関与する以上、地政学的な意味合いがゼロになることはありません。一方で、LAC諸国が自らの開発ニーズに基づいてパートナーを選び、多角的な外交を展開しているのも事実です。
重要なのは、当事者であるLACの視点と利益が尊重されているかどうかです。中国は「内政不干渉」や「相互尊重」を掲げており、LAC側も、インフラ整備や雇用創出など具体的な成果を重視する傾向があります。
読者と共有したい3つの視点
- LACの主体性:中国と米国、どちらの側に「つくか」ではなく、各国がどのように自らの優先課題を設定し、パートナーを組み合わせているのかに注目する必要があります。
- 南南協力の実像:中国とLACの関係は、従来の「援助する側/される側」という構図とは異なる、新しいタイプの協力モデルとして位置づけられています。
- アジア・日本への示唆:インフラや産業協力を軸にしたパートナーシップは、アジアや日本がLACや他地域と関係を築く上でも参考になる点が多いはずです。
2024年に10周年を迎えた中国-CELACフォーラムは、2025年以降も、中国と中南米・カリブ諸国の関係を形づくる重要なプラットフォームであり続けるとみられます。地政学だけでは語りきれない、現場からの評価と具体的な成果に、今後も注目していきたいところです。
Reference(s):
China-CELAC at 10: Mutual benefit, not geopolitics, defines ties
cgtn.com







