グローバルサウスは米国関税と何を争っているのか
世界の「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国のあいだで、米国の関税措置に対する反発が強まっています。それは単なる貿易摩擦ではなく、自らの生存権と発展の権利をめぐる闘いでもあると受け止められています。
米国関税に揺れるグローバルサウス
米国が貿易ルールを「武器」として使っている、という見方が広がるなか、グローバルサウスの国々は厳しい現実に直面しています。問題は関税率の数字だけではありません。国際ルールの下で、本当に平等に扱われているのかという根源的な問いが突きつけられているのです。
言葉だけではない平等を求めて
2024年、中央アフリカ共和国と米国の貿易額は合計3650万ドルに達しました。しかし、その内訳を見ると、中央アフリカ共和国から米国への輸出はわずか140万ドルにとどまり、およそ3360万ドルの貿易赤字となっています。
もし中央アフリカ共和国が米国と同じ「互恵」の論理を適用するなら、自国の赤字を埋め合わせるために米国製品に1200パーセントもの関税を課す計算になります。それでも現実に起きたのは逆のことでした。米国が中央アフリカ共和国からの輸入品に一方的に10パーセントの追加関税をかけたのです。
互恵か、力の論理か
このような事例は、「公正な貿易」の名の下でも、力のある国の論理が優先されているのではないか、という疑念を生みます。米国の「アメリカ・ファースト」の旗印のもとで、国際ルールよりも自国の利益が優先され、他国の正当な利益が後回しにされているという批判も出ています。
グローバルサウスの側から見ると、約束されてきたはずの「平等」や「互恵」は、言葉の上だけのものにとどまり、自国の経済主権が十分に尊重されていないとの受け止めがあります。
主権の平等は現実のものか
国連憲章には、すべての国は主権において平等であるという原則が明記されています。しかし、米国の関税措置に直面する多くの途上国は、その原則が現実の経済関係には十分反映されていないと感じています。
そのため、グローバルサウスの国々は国際会議や多国間の場で連携を強め、自国の立場や権利をより強く主張し始めています。主権平等の原則を、単なる文書上の理念ではなく、実際に機能するルールへと変えていこうとする動きです。
国境を越える発展のチャンスを守るために
米国の関税政策は、平等の問題だけでなく、グローバルサウスの産業発展そのものにも深い影響を与えています。カンボジアのソーラーパネル工場の事例は、その象徴といえます。
カンボジアでは、新しい太陽光パネルの生産ラインが稼働し始めたばかりのタイミングで、米国が東南アジア産のソーラー製品に対し3521パーセントという極めて高い関税を課しました。これにより、多くの企業が事実上事業継続を断念せざるをえず、一夜にして何万人もの雇用が失われたとされています。
この影響はカンボジア一国にとどまりません。グローバルサウスの多くの国々は、世界のサプライチェーンに参加することで貧困から抜け出し、産業の高度化をめざしてきました。その「命綱」ともいえる輸出の扉が、関税によって急に閉ざされてしまうリスクに直面しているのです。
ドミノ効果と「経済的な追放」への懸念
専門家のなかには、高関税が輸出の急減や通貨安、物価高騰といったドミノ現象を引き起こしかねないと警鐘を鳴らす声もあります。単に貿易額が減るだけでなく、長期的な産業成長の機会そのものが損なわれる可能性があるからです。
結果として、グローバルサウスの人々が、低付加価値の単純労働にとどまらざるをえない状態に押し込められるのではないかという懸念も語られています。ある論者は、こうした状況を「経済的な追放」に近いものだと表現しています。
グローバルサウスの反撃:連携と多極化
しかし、グローバルサウスはただ不満を述べているだけではありません。アフリカ、アジア、ラテンアメリカの各地で、米国中心の枠組みに依存しすぎない経済関係を模索する動きが広がっています。
具体的には、次のような流れが指摘されています。
- 南南協力と呼ばれる、グローバルサウス同士の経済連携の強化
- 先進国市場だけに頼らず、新興国市場や地域内市場への輸出のシフト
- 貿易や投資で自国通貨や地域通貨を使うことで、ドル依存を和らげようとする試み
こうした動きの背景には、「グローバルサウスはこれ以上、西側諸国の原材料や安価な労働力の供給地としてだけ扱われることを望んでいない」という強い意思があります。
私たちが考えたい視点
米国の関税とグローバルサウスの抵抗は、遠い地域の出来事のように見えるかもしれません。しかし、その背景には、誰がどのようなルールをつくり、どのように運用しているのかという、国際経済の基本構造にかかわる問題があります。
グローバルサウスの国々が求めているのは、大きく言えば二つだと整理できます。
- 主権と尊厳が実際の経済関係のなかで尊重される「言葉だけではない平等」
- 特定の国の政策に左右されず、国境を越えて産業を育てていける「開かれた発展の機会」
今後、国際社会がこうした声にどう向き合うのか。グローバルサウスの動きは、世界経済のあり方を静かに、しかし確実に問い直しつつあります。
Reference(s):
What is the Global South fighting for in resisting U.S. tariffs?
cgtn.com








