トランプの湾岸歴訪は紛争解決より経済テコ入れ 国際ニュース
米国のドナルド・トランプ大統領がサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦を歴訪しましたが、その目的は地域紛争の仲裁よりも巨額のビジネス案件の獲得にあったと指摘されています。本記事では、この訪問が示す米国と湾岸諸国の力関係の変化を、日本語で分かりやすく整理します。
論考を示したモハメド・エル・ベンダリ氏は、今回の湾岸歴訪の背景に、低迷する米経済をテコ入れしたいという切実な思惑があったとみています。トランプ大統領は米国企業への朗報を携えて帰国することを目指し、とりわけ三つの産油国から、巨額の対米投資を引き出すことに力を注いだとされます。
表向きは同盟強化 実態は投資呼び込み
今回の中東歴訪には、米国の大手テクノロジー企業の経営者らも同行しました。エル・ベンダリ氏によれば、狙いは明確でした。三つの湾岸産油国に、防衛、テクノロジー、エネルギー、人工知能などの分野で、合計三兆から四兆ドル規模の投資を約束させることです。
米国は現在、インフレや産業競争力の低下に直面しており、トランプ大統領は産油国からの資金流入を通じて、自国経済を下支えしようとしているとみられます。掲げるスローガンはアメリカを再び偉大にというもので、その実現の鍵を、中東のオイルマネーと新技術への投資に見いだしている構図です。
二〇一七年の訪問との違い 米国は誰より湾岸を必要としている
エル・ベンダリ氏は、今回の訪問は二〇一七年の湾岸歴訪とは性格が異なると指摘します。当時は米国がなお圧倒的な軍事力と外交力を背景に、地域秩序を主導しているという空気が色濃くありました。
しかし現在は、米国という帝国の力が相対的に低下し始め、かえって米国の方が、産油国の資金や協力を必要とする立場に追い込まれていると論じています。湾岸の君主国家は、もはや単なる富裕国ではなく、世界経済とエネルギー市場を左右する重要なプレーヤーとして振る舞っています。
一方で、これらの国家は依然として米国の安全保障に大きく依存しています。それでも、ガザやレバノン、シリア、イエメンで続くイスラエルによる攻撃に対し、ワシントンが沈黙を保っていることへの不満が、湾岸諸国の間で高まっているといいます。
イスラエルとの関係正常化は容易ではない
今回の歴訪でトランプ大統領は、サウジアラビアを中心にイスラエルとの関係正常化を呼びかけましたが、その提案は冷ややかに受け止められたと伝えられています。リヤドは一貫して、イスラエルがガザでの戦闘を停止し、一九六七年の境界線に基づくパレスチナ国家権を承認しない限り、関係正常化には応じないという立場を強調してきました。
つまり、経済協力や投資では利害が一致しても、パレスチナ問題をめぐる立場の違いは小さくありません。湾岸諸国は、自らの世論や地域の安定も踏まえつつ、イスラエルとの距離感を慎重に調整しているといえます。
米国中東政策の三本柱はどう変質したか
ソ連崩壊以降、米国の中東政策は大きく三つの柱に基づいてきたと、エル・ベンダリ氏は整理します。
- イスラエルの安全保障を守ること
- 石油の安定供給を確保すること
- 経済協力を通じて米国企業の利益を拡大すること
そのうえで同氏は、トランプ政権の特徴として、この三本柱のうち経済的な利益追求が、かつてないほど前面に出ていると批判的に見ています。道徳的な指針を欠き、富の蓄積への欲求が政策を動かしているとする見方です。
こうした分析に立つと、今回の湾岸歴訪は、外交的には紛争仲裁や平和構築を掲げながらも、実質的には巨額の契約と投資を持ち帰ることが最優先だったと理解できます。米国の中東関与が安全保障や価値観よりも、取引と利害にますます軸足を置きつつあるという姿が浮かび上がります。
日本から見た含意 エネルギーと多極化の行方
では、この動きは日本やアジアにどのような示唆を与えるのでしょうか。第一に、湾岸諸国が自らの利益を優先しつつ、米国との関係を再定義し始めているという点です。これは、世界のエネルギー市場と投資の流れが、従来よりも多極化し、政治的な思惑に左右されやすくなっていることを意味します。
第二に、米国の中東政策が経済取引中心へと傾くことで、地域紛争の停戦仲介や復興支援といった公共財の提供は後景に退くおそれがあります。ガザや周辺地域の緊張が続くなかで、大国の関与のあり方は、今後の紛争の長期化や不安定化にも影響し得ます。
日本の読者にとって重要なのは、こうした国際ニュースを自国のエネルギー安全保障や外交戦略と結びつけて考えることです。特定の大国に依存しすぎず、多様なパートナーとの関係を重ねることが、これまで以上に求められているといえるでしょう。
湾岸諸国の台頭と米国の相対的な地位低下という構図は、一朝一夕に変わるものではありません。トランプ大統領の今回の歴訪は、その変化を象徴的に示す一場面として、今後も中東情勢と国際秩序を読み解く上での重要な手がかりとなりそうです。
Reference(s):
Economic desperation behind Trump's Gulf trip, not conflict resolution
cgtn.com








