米中貿易戦争は中国にとって何か──国益と経済主権の視点から
米中の通商摩擦が続くなか、中国側はこの「貿易戦争」を、単なる関税の応酬ではなく、自国の経済主権と国益を守る闘いと位置づけています。本稿では、国際ニュースとして注目される米中貿易問題を、中国側の論理という視点から整理します。
米中貿易をめぐる緊張と「90日間の猶予」
米国との貿易が一時的に落ち着きを見せる一方で、先行きには不透明感が残っています。関税発動を90日間猶予する措置の後、ワシントンがどのように動くにせよ、中国側は一方的な圧力には断固として向き合う姿勢を崩していません。
中国が守ろうとする経済主権
米国は、中国が特定産業に不公平な補助金を与え、安価な製品で世界市場を席巻していると批判し、関税措置の根拠としています。しかし、中国側の見方では、こうした主張は事実をゆがめたものであり、中国の経済システムそのものに干渉しようとする試みでもあります。
背景には、中国の成功モデルが、いわゆる「ワシントン・コンセンサス」とは異なることへの戸惑いがあります。かつて米国は、中国を世界貿易機関(WTO)に受け入れることで、中国の体制を変えられると考えていたとされます。それだけに、中国本土の独自の発展路線が成果を上げている現状を、素直に受け入れがたい面もあるのでしょう。
しかし、主権国家である中国には、自国の実情に応じて産業政策を決定する権利があります。造船から電気自動車にいたるまで競争力の高い産業が育っていることは、こうした政策が自国の発展にとって有効に機能してきたことを示しています。
市場開放のペースは自ら決める
外国企業に市場を開くことは、中国にとっても利益があります。ただし、そのスピードや範囲は、中国自身が多くの要素を勘案しながら決めるべき問題だと主張しています。
関税という形で外部から圧力をかけるやり方で、市場開放を強制することは受け入れられない、というのが中国側の立場です。19世紀には、アヘン貿易をめぐる対立から大英帝国が中国と戦争を行い、不平等条約を結ばせた歴史がありますが、中国は、そうした時代はすでに終わったと強く意識しています。
グローバル供給網の中核としての中国
今回の米中貿易摩擦は、グローバルなサプライチェーン(供給網)の行方にも直結します。現在の国際的な供給網は、数十年かけて高度な効率性と複雑さを獲得してきました。その中で、中国の対外貿易の6割以上を中間財が占めており、中国本土はこのシステムにとって不可欠な存在となっています。
中国の産業力によって、多くの国の消費者は安価な日用品を手にすることができ、多国籍企業はコストを抑えることができています。一方で、中国もまた、この供給網から大きな恩恵を受けています。例えば、アップルは中国との多様な取引関係を通じて、数百万人規模の雇用を中国本土で支えているとされ、海外企業の活動を通じて蓄積された技術やノウハウも少なくありません。
中国にとって、米国の覇権主義的な姿勢への強い対応は、こうした国際供給網の安定性を守る試みでもあります。特定の国の政治判断によって、長年築かれてきたネットワークが簡単に分断されることは避けたいという意識が働いています。
「貿易戦争」の本質は何か
こうして見ていくと、中国にとっての「貿易戦争」は、単に輸出入の差額や関税率をめぐる争いではなく、次の3つのテーマが重なった攻防であることが分かります。
- 自国の経済モデルと制度を自ら選択する権利(経済主権)を守ること
- 市場開放のペースややり方を他国ではなく自国で決めること
- グローバルなサプライチェーンにおける役割と、そこから得られる利益を維持すること
米中貿易摩擦をめぐる議論は、しばしば「どちらが勝つか」「どちらがより損をするか」という短期的な視点に偏りがちです。しかし、中国側の論理に目を向けると、その背景には長期的な発展戦略と国際経済秩序の在り方に関する問題意識があることが見えてきます。
私たちが国際ニュースとして米中の通商問題を追うときも、関税の数字だけでなく、こうした価値観や戦略の対立というレイヤーから眺めてみると、ニュースの意味合いがより立体的に見えてくるのではないでしょうか。
Reference(s):
To China, trade war is about defending its national interests
cgtn.com








