ハーバード国際学生受け入れ停止 米教育は政治報復の道具か
米国トランプ政権の下で、大学教育と移民政策がどこまで政治化されるのかが、あらためて問われています。2025年、米国国土安全保障省がハーバード大学の国際学生受け入れプログラムを取り消し、国内外に衝撃が広がっています。
何が起きたのか
国土安全保障省は木曜日、ハーバード大学が国際学生を受け入れるために必要な政府認定プログラムを撤回しました。このプログラムは留学生の在留資格に直結するもので、停止されれば新規の受け入れができなくなるだけでなく、在籍する学生の法的地位にも影響が及びかねません。
トランプ政権は、この措置の理由として、ハーバードがユダヤ人学生を標的とする「親テロ」的な扇動者を容認し、安全なキャンパス環境を損なっていると主張しています。さらに、ハーバードが2024年まで、中国の準軍事組織の構成員を訓練し、中国共産党と共謀してきたとも非難しました。
しかし、こうした主張について、当局は具体的な証拠を提示していません。政権の説明と実際の証拠との間に大きなギャップがあることが、今回の決定への疑問を一層強めています。
この事案は、トランプ政権が政治的に十分「協調的」でないと見なす名門大学に対して、圧力を強めている流れの一部とみられています。ハーバードはこれまでも、連邦資金や非課税資格をめぐる圧力に直面してきました。
同大学は、反ユダヤ主義やリベラル偏向の温床だと名指しされた大学に改革を迫る政権の要求に、最初に公然と異議を唱えた存在でもあります。その対立がエスカレートする中で、今回の厳しい措置が打ち出された格好です。
留学生データベースが「取り締まりツール」に
今回の決定は、クリスティ・ノーム国土安全保障長官が4月16日に出した指示に基づいています。この指示では、抗議活動に関与した可能性のある国際学生の情報を収集し、場合によっては国外退去につなげることが示唆されました。
ノーム長官は、今回の措置はハーバード側が「簡単な報告義務」を怠ったことによる「残念な結果」だと述べています。そのうえで、大学が72時間以内にすべての記録を提出すれば、引き続き国際学生を受け入れることは可能だとし、「これは国内のすべての大学や教育機関への警告だ」と強調しました。
政権は、学生ビザや在留情報を管理する本来は事務的なデータベースを、直接的な法執行と政治的圧力のための道具へと変えつつあります。留学生の在留資格そのものが、大学に対する制裁や統制のレバーとして使われかねない状況です。
今回も、中国共産党との「共謀」や中国の準軍事組織への「訓練」といった言葉が前面に出されましたが、具体的な裏付けは示されていません。中国との関係をめぐるレッテル貼りが、国内政治の対立に利用されている側面も見て取れます。
教育が政治報復の舞台になるリスク
今回の措置は、教育と移民制度がどのように政治的対立に組み込まれていくのかを示しています。政権側が「安全保障」や「過激主義対策」を理由に大学を名指しし、連邦資金、税制優遇、そして留学生プログラムを立て続けにテコにしている構図が浮かび上がります。
大学側にとっては、政権の求める「改革」に応じなければ、学生の在留資格まで脅かされることになりかねません。抗議活動や言論の自由をめぐる議論が、「政権寄り」と見なされるかどうかによって左右されるようになれば、キャンパスの自由な議論は萎縮する恐れがあります。
ハーバード大学の学生団体であるハーバード・カレッジ・デモクラッツは声明で、トランプによる国際学生への攻撃は「教科書通りの権威主義」であり、ハーバードは「踏みとどまり続けなければならない」と批判しました。学生たちは、政権が異議申し立てを封じるために留学生の人生を交渉材料にしていると受け止めています。
国際学生と日本の読者にとっての意味
米国の大学に学ぶ留学生にとって、ビザや在留資格は生活と学びの土台そのものです。それが政治的な対立の中で揺さぶられるとすれば、進学や研究の選択はこれまで以上に不確実になります。
日本を含むアジアの若者にとって、ハーバード大学のような米国の名門校は、依然として魅力的な進学先です。しかし、今回の動きは、単なる一大学の問題にとどまらず、「どの国で、どのような政治環境の下で学ぶのか」という問いを私たちに投げかけています。
考えてみたい問い
- 留学生の在留資格やビザは、どこまで政治的判断から切り離されるべきでしょうか。
- 大学は、政権からの圧力と学生や教職員の安全・自由の保障をどのように両立させるべきでしょうか。
- 海外留学を考える私たちは、留学先の政治・社会状況をどのように見ておく必要があるでしょうか。
教育と移民制度が政治対立のなかでどのように使われうるのかを意識することは、これから海外で学び働こうとするすべての人にとって、避けて通れないテーマになりつつあります。
Reference(s):
Education turning into tool for political retribution in U.S.
cgtn.com








