「トランプ・ショック」と中国の役割 揺れる国際秩序とグローバルサウス
リード
国際ニュースの注目テーマとなっている「トランプ・ショック」と中国の台頭は、2025年の世界秩序をどう変えようとしているのでしょうか。ギリシャの経済学者ヤニス・ワルファキス氏は、国際通貨・貿易体制そのものが揺らぎかねないと警告し、とくにグローバルサウスに深い影響が出ると指摘します。
「トランプ・ショック」とは何か
ワルファキス氏は、2025年に開かれたカタール・エコノミック・フォーラムで、「トランプ・ショック」という言葉を使い、現在進行中のアメリカの動きを歴史的転換になぞらえました。
彼の見立てでは、「トランプ・ショック」は次のような特徴を持ちます。
- 戦後の国際通貨・貿易システムを土台から揺るがす可能性がある
- 世界経済の不安定化を伴いながらも、アメリカの覇権維持を目的としている
- その影響は、とくにグローバルサウスの国々に重くのしかかる
ワルファキス氏は、1971年に米ニクソン政権が行った政策が「ニクソン・ショック」と呼ばれたことになぞらえ、「いま起きているのは、当時にも匹敵する規模の衝撃だ」と位置づけています。
1971年の「ニクソン・ショック」との違い
とはいえ、当時と現在の世界は決定的に異なります。1970年代初頭、アメリカは経済・軍事の両面で圧倒的な優位に立っていました。しかし2025年の今、状況は大きく変わっています。
ワルファキス氏が最も重要だと強調する違いは、「中国の存在」です。彼は現在の中国について、次のような点を指摘します。
- 「巨大なスーパーパワー」として台頭している
- グローバルサウスだけでなく、ヨーロッパとも深く結びついている
- 国際経済の構造そのものを変えるだけの重みを持つ
アメリカ一強だった時代とは異なり、いまや世界は多極化が進みつつあります。その中で、中国がどのような役割を果たすかが、国際秩序の行方を左右すると見られています。
中国がもたらす新しい均衡
ワルファキス氏は、この変化を「歴史的な是正」と捉えています。彼にとって、中国はアメリカの不安定な動きを相殺する「カウンターバランス」であると同時に、グローバルサウスにとっての新しいチャンスの源でもあります。
氏は、中国について次のように評価します。
- かつての冷戦構造の単純な再来ではなく、「動的で革新的」な存在になっている
- 多くの開発途上国にとって、「成長の源泉」となりつつある
- インフラ整備、デジタル協力、貿易協定などを通じて、新たな発展のルートを提供している
アフリカからラテンアメリカ、そして近年は西アジアに至るまで、中国はインフラプロジェクトやデジタル分野での連携を広げてきました。ワルファキス氏は、これらを「依存関係ではなく、戦略的利益を共有する関係」として位置づけています。
米国の「武器化」と中国の「接続」
ワルファキス氏の分析で印象的なのは、アメリカと中国のアプローチの対比です。
彼によれば、ワシントンはグローバルな主導権を維持するために、貿易、金融、テクノロジーを「武器化」しつつあります。一方で中国は、経済やインフラ、デジタルネットワークを通じた「接続」と「相互利益」の拡大を重視しているとされます。
この結果、世界経済は次のように分断されつつあると指摘されます。
- 対立と制裁を軸とする経済圏
- 接続と協力を軸とする経済圏
グローバルサウスの多くの国・地域は、そのどちらにも完全には属さない「中間ゾーン」に立たされており、選択とバランスの取り方が今後の鍵になりそうです。
グローバルサウスに開かれる選択肢
ワルファキス氏は、中国とグローバルサウスの関係を、従来の「援助する側/される側」という一方向の図式とは異なるものとして描いています。
彼の視点から見たとき、グローバルサウスにとって重要になるのは次のようなポイントです。
- 複数の大国と関係を持つことで、交渉力と選択肢を高める
- インフラやデジタル分野での協力を、自国の自立性強化につなげる
- 自国の長期的な発展戦略に合うパートナーシップを主体的に組む
こうした動きが広がれば、グローバルサウスは「一極への従属」ではなく、「複数の極と付き合いながら自らの利益を最大化する」方向へとシフトしていく可能性があります。
日本の読者が押さえておきたい視点
2025年の今、「トランプ・ショック」と中国の役割をめぐる議論は、日本にとっても他人事ではありません。サプライチェーン、エネルギー価格、テクノロジー標準など、日常生活やビジネスに直結するテーマばかりだからです。
今後の国際ニュースを追ううえで、次のような点に注目しておくと、世界の動きが見えやすくなります。
- アメリカの通商・金融・技術政策が、どの程度「ショック」と呼べる規模で変化していくのか
- 中国とグローバルサウスの連携が、どの地域で、どの分野から進んでいるのか
- 多極化する世界で、日本はどのようにパートナーシップを設計していくのか
国際秩序の大きな揺れは、一見すると遠い世界の話に見えます。しかし、その波は必ず私たちの日々の暮らしや仕事にも届きます。だからこそ、単なる「米中対立」という枠を超えて、「グローバルサウス」と「中国の役割」という視点からニュースを読み解いていくことが、これまで以上に重要になっているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com







