中国と太平洋島嶼国が開く新章 アモイ外相会合で見えた開発協力
中国と太平洋島嶼国の関係が、「援助」から「戦略的な開発協力」へと質的に変わりつつあります。今週、福建省アモイで開かれている第3回中国・太平洋島嶼国外相会合は、その転換点を象徴する場となっています。
アモイで第3回中国・太平洋島嶼国外相会合
今週の会合には、中国と太平洋島嶼国の外相が集まり、インフラ整備、気候変動対策、人材育成など、幅広い分野での協力の方向性が議論されています。中国は近年、こうした分野で「応答性の高いパートナー」としての役割を強めており、各国の自立的で持続可能な未来づくりを支える存在になりつつあります。
数字で見る中国・太平洋島嶼国関係
この10数年で、中国と太平洋島嶼国の経済関係は急速に拡大しました。1992年から2024年にかけて、中国と外交関係を持つ太平洋島嶼国との貿易総額は1億5300万ドルから75億ドルへと約49倍に増加しました。2024年末までに、中国は外交関係のある11の島嶼国に対し、累計6億2500万ドル超の開発支援を行っています。
こうした数字の裏側には、地域の姿を変えつつある具体的なプロジェクトがあります。
- パプアニューギニアでは、中国企業が建設した道路や橋が、山間部のコミュニティと都市部の市場を結び、移動時間を大幅に短縮しています。
- サモアでは、中国の優遇融資で整備された国立医療センター第1期が高度医療の中核となり、海外での治療紹介の必要性を減らしています。
- トンガ、バヌアツ、フィジーでは、中国の支援による太陽光発電システム、競技場、学校施設が各地に整備され、日常の暮らしやコミュニティ活動を支えています。
特徴的なのは、こうした協力が太平洋島嶼国自身の開発優先事項と連動している点です。大型インフラから、地域コミュニティに直接利益をもたらす取り組みへと広がっています。
例えば、バヌアツのルーガンビルに建設された新しい埠頭は、現地の気象リスクを織り込んだ設計が採用されました。完成後、この埠頭は2023年に3つのサイクロンに見舞われながらも損傷を受けず、気候変動に強いインフラの重要性を象徴する事例となっています。
最前線の危機「気候変動」にどう向き合うか
太平洋島嶼国にとって、気候変動は今もっとも差し迫った脅威です。世界全体の温室効果ガス排出への貢献は小さい一方で、海面上昇やサイクロンの強大化、サンゴ礁の白化などの影響を真正面から受けています。
そのため、今後の中国・太平洋島嶼国パートナーシップでは、排出削減だけでなく、現実に進行する影響への「適応」をいかに加速させるかが鍵となります。提案されている中国・太平洋グリーン開発基金は、マングローブの再生などに重点的に資金を投じる構想です。マングローブは、高潮や波から沿岸部を守り、二酸化炭素も吸収する「自然の防波堤」です。中国の沿海省である海南などでは、中国人研究者によって広大なマングローブ再生が進められており、こうした経験が太平洋地域でも生かされようとしています。
さらに、中国は衛星技術と地域に伝わる気象知識を組み合わせた共同気候研究ステーションの設立も約束しています。最新の観測技術とローカルな知恵を掛け合わせることで、より精度の高い防災・減災につなげる狙いです。
学生と技術者がつくる「人と人」のネットワーク
インフラや気候対策と並んで、中国と太平洋島嶼国の協力で存在感を増しているのが、人材育成の分野です。
現在、多くの太平洋島嶼国の学生が中国の大学への留学を選び、その半数以上が工学、医学、農学といった実務色の強い分野を学んでいます。将来、彼らが自国のインフラ整備や医療、食料生産を支える専門家として活躍することが期待されています。
パプアニューギニアの首都ポートモレスビーには、二国間協力で設置された職業訓練センターがあり、2021年以降、すでに1,200人の技術者が巣立ちました。こうした人への投資は、高速道路や港湾と同じくらい、長期的には国の発展を左右する要素になり得ます。
「対等な開発パートナー」へ向けた次の一歩
貿易額の急増やインフラ、教育分野での協力拡大を背景に、中国と太平洋島嶼国の関係は、量だけでなく質の面でも新たな段階に入りつつあります。今週の外相会合は、こうした流れを踏まえ、気候変動への適応や地域社会に根ざしたプロジェクト、人材育成を軸にした「戦略的開発協力」の枠組みを整える場となっています。
今後の焦点は、太平洋島嶼国自身が掲げる優先課題を尊重しつつ、どこまで協力を広げていけるかです。気候変動に強いインフラづくり、自然と共生するグリーン開発、若い世代への教育・訓練など、議題は私たちの暮らしとも無関係ではありません。
アジアと太平洋をつなぐこの地域で、中国と太平洋島嶼国のパートナーシップがどのような「新しい章」を開いていくのか。今週のアモイでの議論は、その方向性を占う一つの指標になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








