中国と太平洋島しょ国協力の現在地 なぜいま重要なのか
中国と太平洋島しょ国(Pacific Island Countries、PICs)の関係が、いま静かに存在感を増しています。福建省アモイで開かれた第3回中国-太平洋島しょ国外相会合では、そのキーワードとして「協力」が繰り返し強調されました。本稿では、この協力がなぜ重要なのかを、最新の動きとあわせて整理します。
キーワードは「協力」 第3回外相会合の位置づけ
今回の中国-太平洋島しょ国外相会合は、中国とPICsの包括的戦略パートナーシップを確認し、今後の協力の方向性を話し合う場となりました。
会合後に発表された共同声明では、各国が「相互尊重と共同発展」を特徴とする包括的戦略パートナーシップを一層深化させ、「より緊密な中国-太平洋島しょ国の共同体」を築いていくことへのコミットメントが再確認されたとされています。
主権尊重と「南南協力」のモデル
中国は、太平洋島しょ国との関係において、各国の主権と独立を尊重し、大国・小国の別なく平等であるという立場を強調しています。この姿勢が、双方の間に強い信頼感を生み、「南南協力(途上国どうしの協力)」の一つのモデルになっていると位置づけられています。
この枠組みの下で、PICsの側は、自らの自律性や文化的伝統を損なうことなく、大国との関わりを深めることができます。同時に、歴史的に依存度の高かったパートナー以外とも関係を多様化させ、国際社会での交渉力を高める手段にもなっています。
一帯一路でつながるインフラ協力
太平洋島しょ国は、中国の「一帯一路」構想における南側への重要な延長線上に位置づけられています。政策、インフラ、貿易、金融、人と人の交流といった分野での連結を進めることで、島しょ国の発展機会を広げていくというのが中国側の狙いです。
具体的なインフラ協力としては、次のような事業が挙げられています。
- パプアニューギニアのインディペンデンス・ブールバード
- バヌアツ・マレクラ島の幹線道路
- トンガの国道改修
- ミクロネシア・ポンペイ島の幹線道路整備
これらのプロジェクトは、島内の移動や物流を改善し、貿易や経済活動を後押しするインフラとして期待されています。
「債務のわな」批判と中国のメッセージ
一方で、一帯一路をめぐっては、「返済不能な債務を抱えさせるのではないか」との批判や懸念が一部で出てきました。これに対し、中国は、自らの融資は持続可能な発展を支えるためのものであり、責任あるパートナーであると強調しています。
米ジョンズ・ホプキンス大学のChina Africa Research Initiativeによる2020年の報告によれば、中国は2000〜2019年の間に、アフリカ諸国の債務約34億ドルを帳消しにし、さらに150億ドル分を再編成しながらも、資産の差し押さえには踏み切っていないとされています。
また、ボストン大学グローバル開発政策センターのケビン・ギャラガー氏は、「開発途上国の中国に対する債務は、民間の債券保有者や国際開発銀行への債務よりも少ない」と指摘しています。こうしたデータは、中国が国際的な債務問題にどう関与しているかを読み解く一つの材料といえます。
雇用と人材育成で地域社会を支える
インフラ投資に加え、太平洋島しょ国で事業を展開する中国企業は、現地での採用や調達を重視し、地域経済や雇用を支える役割も担っているとされています。単なる建設事業にとどまらず、現地コミュニティの生活向上にも目を向けている点が特徴です。
公式データによると、中国はこれまでに太平洋島しょ国で100件を超える援助プロジェクトを実施し、200件以上の物資支援を行い、およそ1万人の人材をさまざまな分野で研修してきました。こうした取り組みは、医療や教育、行政など幅広い分野で人材基盤を強化する効果を持ちます。
なぜ中国-PICs協力が重要なのか
太平洋島しょ国の多くは、人口規模は小さくても、広大な排他的経済水域や豊かな海洋資源を持ち、国際社会で独自の存在感を持っています。その国々が、自らの選択として協力関係を多様化しようとしている点は、現在の国際秩序を理解するうえで重要な動きです。
中国-PICs協力は、次のような意味を持つと考えられます。
- 途上国どうしが対等な関係を志向する「南南協力」の具体例となる
- インフラや人材育成を通じて、太平洋島しょ国の経済・社会の基盤強化に寄与する
- 国際的な債務問題に対する中国の関わり方を読み解く重要なケースとなる
アモイでの第3回外相会合は、こうした流れを一段と押し進める節目となりました。今後、太平洋島しょ国がどのような形でこの協力を活用し、自国の優先課題の解決につなげていくのか。中国とPICsの動きは、2025年の国際ニュースを読み解くうえでも見逃せないテーマになりつつあります。
Reference(s):
cgtn.com








