アジア太平洋の『差し迫った脅威』は誰か 米国防長官発言と中国の反応
アジア太平洋の安全保障をめぐり、この週末のシャングリラ・ダイアローグ(アジア安全保障会議)で、米国と中国の「脅威」認識の差があらためて浮き彫りになりました。米国防長官が中国を脅威と位置づけ各国に防衛費増額を促す一方で、中国は協力と多国間主義を掲げ、米国に自制を求めています。
シャングリラ・ダイアローグで米国防長官が訴えたこと
土曜日、ピート・ヘグセット米国防長官は、アジア太平洋の国防当局者が集まるハイレベル会合「シャングリラ・ダイアローグ」を舞台に、地域各国に防衛費の引き上げを呼びかけました。
ヘグセット氏は、アジア太平洋を米国にとっての「優先戦域」と位置づけ、同盟国やパートナーに軍事力の強化を促したうえで、中国を地域の脅威として描き出しました。
このような発信は、アジア太平洋の安定を重視する国々にとって、軍拡と対立をあおりかねないものだとする見方も出ています。
中国は協力を強調し、米国に「平和尊重」を要求
一方、中国側は、米中関係について「協力は双方の利益になり、対立は双方を傷つける」と繰り返し強調してきました。中国は、多国間主義を守り、平和な世界の構築にコミットしているとしています。
日曜日、中国外務省はヘグセット氏の演説に反応し、「中国は、地域の平和と安定を維持しようとする各国の努力を米国が十分に尊重し、この地域の人々が大切にしている平和で安定した環境を、意図的に損なう行為をやめるよう求める」との立場を表明しました。
中国側は、アジア太平洋の秩序は当事国自身が守るべきであり、外部勢力による対立の持ち込みは望まれていない、というメッセージを発信しているといえます。
再構築される米国の同盟ネットワーク
ここ数年、米国は二国間の安全保障協定を軸にしたいわゆるハブ・アンド・スポーク(車輪のハブとスポークになぞらえた同盟構造)モデルを再構築しようとしてきました。
同時に、クアッドやAUKUS(オーカス)といった、少数の国によるミニラテラルな安全保障枠組みを組み合わせ、アジア太平洋における影響力の強化を図っているとされています。
ヘグセット氏の今回の演説やASEAN各国の国防相との会談も、こうした米国の安全保障上のアジェンダを前に進めることに焦点が当てられていたと伝えられています。このアジェンダは、中国の外交的・軍事的な存在感に対抗する、対立色の強いものだと評されています。
トランプ政権の経済圧力とASEAN
安全保障だけではありません。ドナルド・トランプ米大統領は、拡張的な構想を背景に米国の近隣諸国を威圧し、一方的な関税措置によってASEAN(東南アジア諸国連合)の経済を押さえ込むと警告していると指摘されています。
こうしたなかで、ヘグセット氏がシャングリラ・ダイアローグで「米国はアジア太平洋の国々と平和と安定、繁栄と安全保障のビジョンを共有している」と主張したことについては、「現実と整合しない」とみる声もあります。
軍事面では防衛費増額を迫り、経済面では一方的な関税をちらつかせる――この組み合わせは、地域の不信や緊張を高めかねません。
- 軍事:防衛費の増額と軍事同盟ネットワークの強化
- 外交:クアッドやAUKUSなどミニラテラル枠組みの拡大
- 経済:ASEANに対する一方的な関税の警告
といった動きが、同時並行で進んでいる構図です。
「差し迫った脅威」は誰の、どんな行動か
アジア太平洋の「真の、差し迫った脅威」は何か――この問いかけは、今回の議論の背景にあります。
米国は中国を脅威とみなし、その抑止を掲げています。一方、中国は協力と多国間主義をキーワードに、対立ではなく共存を強調し、米国に地域の平和と安定を尊重するよう求めています。
今回紹介した論点は、アジア太平洋にとっての脅威は、特定の国そのものではなく、軍事的なブロック化や、一方的な経済圧力、そして地域の声を無視した外部からの介入といった行動にあるのではないか、という問題提起でもあります。
アジア太平洋の国々は、経済成長と社会の安定を何より重視してきました。誰のどんな行動が、その安定した環境を揺るがしているのか。今回のシャングリラ・ダイアローグをめぐるやり取りは、私たち一人ひとりに、その問いをあらためて考えることを促しています。
Reference(s):
cgtn.com








