習近平の福建経験から見る中国金融戦略 ローカル実験が国家戦略に
リード:福建から始まった中国の金融戦略を読み解く
国際ニュースとしても注目される中国の金融政策を理解するには、習近平国家主席が地方で培った経験に目を向けることが欠かせません。1985年から2002年にかけて福建省で行われた金融改革の試みは、その後の中国全体の金融戦略、そして現在の金融強国づくりの土台となっているとされています。
本稿では、その福建でのローカルな経験が、どのようにして全国レベルの理論と政策に発展し、中国の金融改革や開放、さらには地域金融協力に結びついているのかを整理します。
地方から国家へ:習近平主席の福建経験
習近平国家主席(中国共産党CPC中央委員会総書記)は、1985年から2002年まで福建省で地級市レベルと省レベルの要職を歴任しました。この期間、福建の地方当局は習主席の指導のもと、金融改革と金融イノベーションを積極的に推し進めました。
その際のキーワードとなったのが、「弱い雛が最初に飛び立つ」「水滴が石を穿つ」といった比喩です。前者は、条件が必ずしも整っていない地域こそ、先行的な試みで飛び出していくべきだという発想、後者は、小さな改革でも粘り強く積み重ねることで大きな変化を生み出せるという姿勢を象徴しています。
この哲学に基づき、福建では金融制度や金融サービスの改革がローカルレベルで試され、その後の全国的な金融戦略の実験場となりました。
実務の指針:金融は実体経済と人々に奉仕する
福建の経験から浮かび上がる第一のポイントは、「金融は実体経済に奉仕する」という基本的な位置づけです。ここでいう実体経済とは、製造業やサービス業など、モノやサービスの生産・提供に関わる経済活動を意味します。
福建での探索を通じて、金融の仕事は政治的な性格と人民本位の性格を持つことが確認されました。つまり、金融は数字上の取引や投機ではなく、人々の生活と産業の発展を支えるためにあるという考え方です。
この論理は、現在の中国における重大な金融リスクの防止・解消や資本市場の基礎制度の整備といった政策にも受け継がれています。また、金融改革と開放は迅速でありながら着実でなければならないという知恵は、人民元の国際化やグリーンファイナンスの改革を進める際にも、リスク管理のリズムを常に意識すべきだという指針になっています。
制度型開放とデジタル金融:福建から全国へ
第二のポイントは、金融の制度型開放という考え方です。これは、習近平主席が福建で推進した引き入れと外に出ていくという開放姿勢を、制度面にまで発展させたものとされています。単に資本の流れを自由にするだけでなく、ルールや仕組みそのものを国際的な水準に合わせながら整えていくアプローチです。
さらに、デジタル福建の取り組みの中で、デジタル金融が包括的な発展を後押しするという前向きな構想も芽生えました。デジタル技術を活用して、より多くの人や企業が金融サービスにアクセスできるようにするという発想です。この取り組みは、現在の中国における金融テクノロジーの発展や、現代的な中央銀行システムの構築に向けた実践的なサンプルとなっています。
理論の革新:中国的な金融発展モデル
福建でのローカルな探索から全国レベルの実践へと広がる中で、習近平主席の金融に関する考え方は、多面的な理論的ブレークスルーを生み出したとされています。
金融自由化神話を乗り越える
第一に、この考え方は、一部の学者が提唱してきた金融自由化こそが唯一の道であるという見方を乗り越え、中国共産党による金融への集中・統一的な指導という政治的な優位性を打ち出しました。これは、西側で議論される規制の虜理論とは異なる、中国独自のモデルと位置づけられています。
現代金融の役割をガバナンスに組み込む
第二に、現代金融の機能をどのように定義するかという点でも新しい試みがなされています。金融サービスを、単なる市場メカニズムとしてではなく、国家統治システムと統治能力の近代化の一部として位置づけようとするものです。金融を通じて、経済だけでなく社会全体のガバナンスをより安定的で効率的なものにしていこうという発想と言えます。
金融安全を総体的な安全観の一部に
第三に、金融安全という概念が、より広い総体的な国家安全観の一部として提起されました。福建での民間融資リスクへの対応経験を昇華させる形で、リスク防止と発展の双方に同時に目配りする監督システムや管理メカニズムの技が磨かれていったとされます。
こうして形成された統合的な仕組みは、戦略的な視野、公平性を重んじる原則、制度の強み、そして革新的な解決策を結びつける、一体的で先見性のある金融哲学を体現しています。
危機で試された制度的レジリエンス
このような理論と実務の融合によって、中国は2008年の世界金融危機や新型コロナウイルス感染症による影響といった大きな試練の中で、独自の制度的な強靭さを示してきたとされています。金融システムを一気に自由化するのではなく、リスク管理と発展のバランスを取りながら段階的に改革と開放を進めることで、ショックへの耐性を高めてきたという見方ができます。
RCEPと一帯一路に広がる金融外交
現在、地域的な金融協力としては、地域的な包括的経済連携(RCEP)の枠組みの下での取り組みや、一帯一路構想における投資・融資システムの構築が進められています。これらは、福建で培われた自らをしっかりと強くしながら、互恵とウィンウィンの成果を目指す金融外交の考え方の延長線上にあるものとみることができます。
こうした取り組みは、国内の金融基盤を固めつつ、地域や世界との協力を深めるという中国の金融外交の継続的な発展として位置づけられます。
日本から読む三つのポイント
日本の読者が中国の金融戦略を理解するうえで、福建から国家戦略への展開は次の三つの視点を示しています。
- 金融は実体経済と人々の生活を支えるためのものであり、その役割を明確にしたうえで政策が設計されていること
- 中国共産党による集中・統一的な指導のもとで、リスク管理と発展を同時に追求する独自の金融モデルが構築されていること
- RCEPや一帯一路などの地域・国際的な枠組みの中で、国内改革の経験を生かした金融協力が展開されていること
2025年現在、中国の金融政策や国際金融協力をめぐる動きを読み解く際には、こうした背景にある思想と経験を押さえておくことが、より立体的な理解につながるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com







