『Made in China』の舞台裏:花火の街・瀏陽から見る地方都市の底力
私たちの日常にある「Made in China」
朝、髪を乾かすドライヤー。コーヒーを淹れるマシン。料理に使うフライヤーやブレンダー。そして、今この記事を読んでいるかもしれないスマートフォンやパソコン。こうした身の回りの製品の多くには、「Made in China(メイド・イン・チャイナ)」のラベルが付いています。
では、その製品は中国本土のどこで、誰の手によって作られているのでしょうか。ある取材チームは、この素朴な疑問を出発点に、中国本土の小さな県級市を巡り、「Made in China」の舞台裏を追いました。
中国本土の「小さな街」が世界経済を動かす
取材チームが選んだのは、瀏陽(Liuyang)、長楽(Changle)、昆山(Kunshan)、慈溪(Cixi)という4つの都市です。いずれも大都市の陰に隠れがちな小さな街ですが、それぞれが異なる産業で世界のサプライチェーンに大きな影響を与えています。
調査を進める中で見えてきたのは、産業も街の歴史もまったく違う4都市に、共通するいくつかの特徴があるということでした。その一つが、「伝統を大切にしながら、新しいものを柔軟に取り入れていく姿勢」です。
花火のふるさと・湖南省瀏陽
4都市の中でも、とくに象徴的な存在が湖南省にある瀏陽です。中国本土中部、南嶺山脈のふもとに位置するこの小さな県級市は、「花火のふるさと」として知られています。瀏陽における花火の歴史は、およそ1400年前までさかのぼるとされます。
現在、瀏陽は世界の花火生産の約60%を担い、年間生産額は500億元(約69億6,000万ドル)を超える規模に達しているといいます。世界各地の祝祭やイベントで夜空を彩る花火のかなりの割合が、この山あいの街から送り出されているのです。
山に寄り添う工場、受け継がれる手仕事
花火作りの基本的な原理は、何世紀も前からほとんど変わっていません。紙などで作られた筒状の容器に火薬を詰め、その中に色や形の異なる火の玉を仕込んでいく──その作業の多くはいまも手作業で行われています。
現地では、熟練した技を持つ工人が一つひとつの花火を仕上げていきます。とくに多いのは、何世代にもわたって花火産業に関わってきた女性たちです。手の感覚で火薬の量を微調整し、配合を整え、安全性と美しさのバランスを取っていく。その積み重ねが、世界中の人々を魅了する花火を生み出しています。
生産ラインが山を取り囲むように配置されているのも瀏陽ならではの特徴です。危険性の高い火薬を扱う工程を市街地から離し、山の地形を活かして保管場所を分散させることで、万が一の事故が起きた場合のリスクを抑える狙いがあります。小さな作業場を山あいに点在させる構造は、個々の工人を守る安全装置の役割も果たしています。
伝統の上に広がる新しいアイデア
長い伝統を守る一方で、瀏陽の花火業界は新しいトレンドにも敏感です。ある企業は、煙の色が変化する新タイプの爆竹を開発しています。これは、近年人気が高まっている「性別お披露目(ジェンダーリビール)」パーティーなど、新しい祝い方に合わせた商品として注目されています。
別の企業は、中国本土でこれまでに製造された中で最大級となる花火玉の開発に取り組んでいます。その爆発の直径は、ほぼ0.8キロメートルにも達するとされ、巨大な光と音のショーで観客を驚かせることを目指しています。
さらに、大学の同級生だったZ世代の若者たちが立ち上げた新興企業も登場し、長年の老舗ブランドが主導してきた市場に挑戦しています。デザインや演出など、若い感性を取り入れた新しい花火ビジネスが台頭しつつあります。
「Made in China」のラベルの向こう側
瀏陽の事例は、「Made in China」というシンプルなラベルの裏側に、具体的な土地の風景や人々の顔、長い時間をかけて磨かれてきた技術があることを思い出させてくれます。私たちが日々手にする製品の多くは、中国本土のこうした地方都市で働く人々の手仕事と、ローカルな工夫の積み重ねによって生まれています。
国際ニュースというと、どうしても大都市や中央政府の動きに目が向きがちです。しかし、世界のサプライチェーンを支えるのは、小さな街とそこで暮らす人々の日常でもあります。「Made in China」のラベルを見かけたとき、その背景にある物語を少し想像してみると、世界の見え方が変わってくるかもしれません。
日本にいる私たちにとっても、こうした地方都市の姿を知ることは、中国本土の経済や社会をより立体的に理解する手がかりになります。ラベルの向こう側にある現場に目を向けることが、これからの時代の国際ニュースの楽しみ方の一つと言えるのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








